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Bランク冒険者へのお願い

稽古を終えて、一同は食堂へ集まって夕食をとっていた。


「パルファの成長もビックリだが、ユウくんの強さにも驚いたよ」

「父上、見ていたのですね」

ジィファの言葉に対して、パルファは少し恥ずかしそうにしている。親に褒められるというのがむず痒いのだろう。


「ありがとうございます。でもアランさんのスキルには為す術なかったです」

「俺の【業火】は攻撃特化の炎系ユニークスキルだからな。ジィファの防御特化のスキルとは対極なんだ」

アランがそう教えてくれる。たしかにガードしてもダメージを負うのはかなり強力だ。


「お父様とユウさんの打ち合い、とても素晴らしかったです」

そう言うのは、今回の食事にて再会したアランの娘メリィだ。

メリィも部屋の窓から、稽古風景を見ていたらしい。


「ありがとうございますメリィさん。そういえば、メリィさんもユニークスキルを持っているのですか?」

ユウの問いかけに対してメリィが答える。

「えぇ、【羨望】というスキルを。他人の動きや技を真似するスキルなのですが・・・ゴホッゴホッ」

咳をしながら「これでは、ね」というメリィ。


「大丈夫か?無理するなよメリィ」

アランが気遣い背中をさする。少し落ち着いたのか咳は治まり、メリィはすっと立ち上がった。

「・・・ごめんなさい。先に休ませていただきます」


そう言ってメリィは、使用人に支えられながら部屋から出ていった。

「あの娘は生まれつき身体が弱くてな・・・こうして複数人で食卓を囲むっていうのも、あまり慣れていないんだ」

アランは寂しげにそう言った。


「そういえば、若い友達なんてユウが初めてなんじゃないかしら?」

パルファの発言にアランは頷く。

「そういえばそうだな。ユウ、よかったら今後もたまに遊びに来てやってくれないか?」

はい、とユウは即答する。繋がりがあることの幸せを、ユウはよく知っているからだ。


その後も冒険の話や王都の歴史を聞きながら、食事は進んでいった。


〜〜〜〜〜


次の日、ユウは久々に冒険者ギルドへやって来ていた。ランクアップしたBランク冒険者証が、今日出来上がるのだ。

パルファと一緒に取りに来ようかと考えたが、パルファは家の用事があって別日に取りに来るらしい。


(久々にクエストでも受けてみるか・・・)

勇者のパートナーとして活動をしていても、24時間拘束されているわけではない。

とくに今は式典までゆっくりしてよいと言われており、事件も夜間に起こっているため日中は自由時間だ。


そうしてユウは冒険者ギルドの中へ入る。するとそれまで話をしていた冒険者達が、ユウを見てサッと静かになった。

(あれ?俺何かしたかな?)


戸惑いつつもカウンターに向けて足を進める。するとヒソヒソと話し声が聞こえた。

「おぉすげえ・・・本物だ・・・!」

「【眼帯の悪魔殺し】、帰ってきたって聞いてたけど本当だったんだな」

「かっこいい。私もいつかあの人みたいに・・・」


どうやらユウが何かやらかしたわけではなく、羨望の眼差しを向けられているだけのようだった。

安心しつつ恥ずかしさも感じながら、ユウはカウンターにいる受付嬢へと話しかけた。

「すみません。冒険者証を取りに来たのですが」

「はい!ユウ様ですね、窺っております」


そうして受付嬢は奥へと下がる。それを見送りながらユウは、目線をそのままに半歩横へと身体をそらす。

「うぉっととと!お前後ろに目でも付いてんのか!?」

そこには驚きつつも再会による笑みを浮かべた、春風パーティーリーダーのオッドがいた。


「久しぶりだな。ユウ」

オッドはそう言って、前と同じようにガシガシと頭を撫でてくる。

「オッドさん久しぶりです。」


「もう、後ろから脅かそうとするだなんて子供じゃないんだからやめなさいよ。久しぶりねユウ」

続いてカノン達、他のメンバーもやってくる。

「久しぶりだねユウ。聞いたよ、Sランクダンジョン踏破なんて凄いじゃないか」

ローランドもユウの肩に手を置き、そう言葉をかけてきた。


「ありがとうございます。パルファも居てくれたおかげで、なんとか無事に帰ってこれました」

ユウのその謙虚な姿勢に、その場に居た一行も「相変わらずだな」と頬を緩ませる。


そうこうしているうちに受付嬢が戻ってきた。

「お待たせ致しました。こちらが新しい冒険者証でございます。古いものはお預かりしますね」

そう言って、ユウは新たな銀製の冒険者証を手に入れた。

ひんやりと冷たく、そして光を反射するその冒険者証に、一同は目を奪われる。


「おぉ、噂にはなってたが本当にBランクになったのか・・・俺達も負けてらんねえな」

「純銀製の冒険者証、とっても綺麗です」

冒険者証を見た者の反応はさまざまだ。そして冒険者証そのものでなく、別のことで思うところがあった者もいる。


「これでユウはAランクの依頼まで受注できるってことね・・・ねぇユウ、お願いがあるんだけど」

そう声をかけたのは、春風パーティの盗賊を務めるカノンだった。

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