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鍛冶師


「ん?なんだ・・・」

ユウとパルファが戦士達のぶつかり合いを満喫してそろそろ出ようとしていた頃、コロシアム入口の方が少し騒がしかった。

見ると兵士達が慌ただしく行き交っている。誰かを探しているようだ。


「どうしたのですか?」

パルファがその場にいた兵士に聞くと、兵士は小さな声で告げた。

「実はコロシアム入口を強引に突破した傭兵の集団がいまして。先程包囲したのですが、観戦している方の装備を破壊されてしまったのですよ」


あぁちょうど出てきましたね。と言って兵士が指を指した方向を見て、ユウは目を見開いた。

そこには以前ここに立ち寄った時に、もめたあの傭兵達が居たからだ。

(まさか・・・壊されたのって・・・)


傭兵のあの太った男も視線に気づき、下卑た笑顔でこちらに話しかけてくる。

「よお悪魔殺し!久しぶりだなぁ!そのふざけた名前はいくら積んで買ったんだおい!」

手縄を巻かれて連行されている最中、その傭兵は兵士に抵抗してユウを挑発する。


「お前が大切にしてた剣よお、安モンの不良品だったみてえで、遊んでたらバキバキに壊れちまった!まぁあんなクソよりもっと良い剣買えっつう俺らの優しさだ!」

汚い笑い声を放ちながら喋るその男が言った言葉に、ユウの頭が真っ白になった。




バランさんの剣を、壊しただと?




理解した瞬間にユウは超速で駆け出し、連行されている最中の男の顔面を陥没する勢いで殴り飛ばしたのだった。



〜〜〜〜〜



「今回は我々に完全に落ち度があります。ただ、連行中の犯罪者に手を上げるというのは、公務執行妨害になりますので気をつけていただきたい」

今ユウは、ディガイアを守る兵士詰所にて少し偉い人に怒られていた。


ユウに殴られた男は、その場所のまま空中で3回転ほどして床へとべシャリと落ちた。

殴られた箇所は拳の形に跡がついており、確実に顔の骨が折れたと分かるほど歪んでいた。


意識は当たり前になく、辛うじてピクピクとだけ動くその傭兵を冷たい目で見下すユウ。

さらに追撃をしようとしたところを、ユウはパルファに止められたのだった。


それを見ていた仲間の傭兵たちは、ようやく虎の尾を踏んでしまったことに気づいたらしく、取り調べではつらつらと動機や反省を述べているらしい。


動機は復讐。以前ユウのせいでしばらく拘留され、見物人からもバカにされたことを根に持っていたらしい。

その後この街に帰って来るのを待っていたらしいが、そこへ噂が舞い込む。ユウと思しき少年が、強い悪魔を倒した、と。


もちろん信じていなかったものの、念の為ということもある。傭兵達はユウでなく、ユウが大切にしていた剣を狙うことにした。

そしてユウがこの街に帰ってきたのを確認し、コロシアムに入って武器を預けた瞬間、凶行に及んだらしい。


(自分で蒔いた種か・・・)

そう考えると、バランさんの剣を折ったのは、他ならぬユウ自身なのかもしれない。

ヒビが入った剣、そして3つに折られたもう一振の剣。目の前の机に置かれたそれを見て、ユウはあからさまに落ち込んだ。


それを反省ととったのか、説教をした中年の兵士はユウにとっておきの情報を教える。

「実はですね今この街にーーー」


〜〜〜〜〜


「ユウ!大丈夫だった?」

兵士詰所を出ると、外で待っていたパルファが駆け寄ってきた。

「手を出したことはいけないことだけど、それにしたって奴らの行いは卑劣極まりないわ。・・・本当は止めたくなかったくらい」


心配とフォローとカミングアウトをいっぺんにするパルファを見たら、少しおかしくなって笑みがこぼれる。

「元気そうでよかった・・・でも剣は、どうしましょうか」

ユウの顔を見て安心するパルファは、次に剣の事を気遣う。だからユウは、先ほど兵士から聞いた情報を伝えた。


「この街に今、かなり有名な鍛冶師の人が来ているんだ。その人の工房を紹介してもらったから、今から行こうと思う」

「有名な鍛冶師・・・なるほど。もしかしたらあの石も加工出来るかもしれないわね。」

そうしてパルファとユウは、その鍛冶師の工房がある方向へと歩き出した。


雑談を踏まえつつも、その鍛治職人についての話をするユウ。

「コロシアムの装備とかを定期的に作りに来る職人さんの一人らしいんだけど、沢山いる中でその人の作品は一際出来がいいんだって。」

「あぁ、その方の噂なら聞いたことがあるわ。コロシアム武器職人から、貴族御用達の鍛冶師に成り上がったっていう・・・」


パルファもどうやら知っているらしい。

「っと、ここだね」

話に聞き入りすぎて通り過ぎそうになったが、聞いていた場所に到着した。

たどり着いたのは、質素にひっそりと佇む木造の工房だった。


『ゲノムの工房』


下がっている看板には、シンプルにそれだけ書かれていた。

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