眼帯の悪魔殺し
「すみません。ハンバーグのセットを下さい」
「私はウサギ肉のサンドイッチとサラダを」
3日後、ユウとパルファはルーグのレストランでランチをしていた
あのあと回復したパルファとユウは、そのままダンジョンコアを破壊して夕過ぎに街へと帰った。
ガイをはじめとする衛兵たちはいつもより遅い帰還に心配したが、ダンジョンボスを倒してコアを破壊したと聞くと大いに盛り上がった。
そしてダンジョンについては秘匿されていたが、攻略を境に存在を公にされる。
新聞の見出しは「勇者パルファとユウ、国境沿いのダンジョンを攻略し国家間トラブルの抑止に成功!」というもの。
国家間トラブルの火種をひっそりと解決したという言い方をしたおかげで、ルーグの冒険者たちはダンジョンを隠されていたということに対し憤ることは無かった。
いや、むしろ・・・
「おいみろよ、アレが噂の・・・」
「あぁ、【白光の勇者様】とそのパートナー【眼帯の悪魔殺し】だ」
「まだ幼いのに強くて清らかで・・・素敵」
ひそひそと話す周りの人たちの声が耳に入るたび、ユウは恥ずかしさで爆発しそうになる。もともと孤独だった男は、注目されることに耐性が無さ過ぎるのだ。
「眼帯の悪魔殺しね・・・。あなたの力に劣らないかっこいい称号じゃない」
ふふふっと笑ってパルファは言うが、ユウはそうだねと素直に納得できない。
「もぉ~・・・ガイさん・・・」
ダンジョンから帰った後、ユウは預かっていた冒険を記録する魔道具をガイへと返した。
その映像を見たガイは予想を上回るほどの大興奮だった。少年のようにはしゃぎ、「凄いから見ろ!」と周囲にも映像を勧めだした。そしてそれは衛兵だけでなく家族、友人へと広がり・・・
その映像の噂はルーグの街を仕切る広報社へと伝わり、一気に市民の間でも公開されることとなった。定期的に、冒険者ギルドや大きな宿屋の壁に映像が映し出されるのだ。
そして今ルーグの街では、ユウとパルファのドキュメンタリー映像が一種の娯楽として人気を博している。
序盤からモンスタールームというスリル、一生のうちに関わらない人も多いだろうパンドラボックスの絶叫、パルファとユウの固い絆、進むごとに深まる謎、虚空に佇むダンジョンコア、恐るべき悪魔ハイドとのユウ目線での打ち合い・・・
そして暗視カメラのような映像は、突然色鮮やかで光輝く景色に変わる
ユウの目線でのハイドと輝く勇者の戦い、ユウが戦いを引き継ぎ魔道具が付いている首に迫る魔の手、それを紙一重で躱したユウがハイドにとどめを刺す。そして最後ユウは悪魔ハイドを哀れんで涙する。
(・・・無理やりガイさんに見せられたけど、実際映像作品として面白かった)
もちろん映像提供の前に、ガイからは相談を受けた。問答無用で断ろうとしたところ、「どうか一度!どうか一度観てください!」と映像を観せられた結果文句は引っ込んでしまった。
そして観終わった後「こんなに素晴らしいもの・・・後生じゃあぁぁ・・・」と涙ながらに説得をされて、公への公開に至ったわけだ。
それがきっかけで、ルーグでのパルファとユウの人気はうなぎのぼりに上昇している。とくに一定の名声を持っていたパルファと違い、無名からのデビューを果たしたユウの人気は凄まじいものだった。
先ほどから登場している仰々しい通り名も、映像を見た人々が勝手に呼び始めたのだ。
「なんだかんだ女性にモテて喜ぶと思っていたけど、そうでもないのね」
パルファが食後の紅茶を飲みながら、興味深そうにユウを見つめる。
「え?僕ってモテてるの?」
その発言に、パルファはジトっとした瞳でユウを見る。
「本気で言っているの?周りを見てみなさい」
そう言われて、ユウは周囲を見回す。
すると周囲の女性たちが、熱を込めた視線を自分に向けていることが分かった。
(さっき素敵とか言われてたの・・・僕の事だったのか・・・)
たしかに、あの映像のユウの立場がもし女性だった場合、自分もその女性に向けて憧れの視線を向けてしまうかもしれない。
そう考えていると、パルファが微笑みながら聞いてくる。
「それで、どう?悪い気はしないんじゃない?」
「う~ん、確かに悪い気はしない・・・けど、映像に映っていないところもあるからね。かっこよくないところも沢山あるから」
「あら、謙虚ね」
その言葉を受けて、ユウはニコッとしてパルファに言う。
「だからかっこよくないところを見てもパートナーとして選んでくれたパルファは、心から信頼してるよ」
そう言われたパルファは少し頬を赤らめて、ユウに聞こえない声でボソリとつぶやいた。
「・・・馬鹿ね。あなたは全部かっこいいわよ」




