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ひとときの休息

「そんな、危機感を・・・!」

「ははは・・・まぁ、仕方ないよね」

室内の魔物を片付けた後、パルファが気絶している間のことをユウは正直に説明した。

パルファは責任感を感じ思い詰めた表情をしていたので、ユウは続けて言った。


「あの状況では、使わないと2人とも助からなかったよ。パルファだって、もしパンドラボックスのスキルがパルファにも及ぶものだったら、僕を庇って死んでしまっていたら、僕も自分を責めたと思う」

そういってパルファの頬に指を優しく突き立てるユウ。


「2人が2人とも最善の行動を取れたからこそ、こうして命が助かったんだ。それに比べたら安いもんさ」

ユウがそういって微笑むと、パルファもまだ少し曇りはあるものの微笑み返した。


「あれ?そういえばパルファ、今更だけど僕の顔とか見えるの?」

「えぇ見えるわ。この暗闇、ライトの魔法がキャンセルされたり、何かおかしいと思ったらスキルだったのよ。」

そのままパルファは床を見下ろし、おそらくこの下の何かのねと言った。


2人は戦いの後、祭壇の方に下階へ降りる階段があるのを発見した。十字架に縛られた男が描かれたステンドグラスのふもとに、長く続く階段があったのだ。

一階層でこれならば、その下ではどんな試練がまちかまえているのだろうか・・・


「・・・ふぅ、とりあえず今日は一旦帰る?」

「そうね、さすがにこのまま潜るのは少し無茶だわ」

そう交わして、2人は入口の方に向けて歩き出した。固く閉ざされた扉をどうしようかと考えていると、扉は来た時に反して勝手に開いた。


「無事一階層クリア・・・ってことかしらね」

「そうみたいだ。正直安心したよ、実はいっぱいいっぱいで・・・」

そう言って2人は教会の外に出て、この空間に入ってきた時の漆黒の穴に飛び込んだ。


〜〜〜〜〜


ダンジョン一階層突破から3日後。


「ふっ!はっ!」

シュッと剣を振り抜く音が、朝からある宿屋の中庭に響いている。


自己治癒力が強化されているといえど、そこそこの傷を負っていたユウは、念を見て休養を申し出た。

一晩寝れば普通に動けはするだろうが、戦うとなるとベストコンディションには程遠いのだ。だからこうして今はダンジョンへは行かず、日課の素振りだけで我慢をしている。


その間パルファは、現地の冒険者ギルドにおいてソロでクエストを受けていた。

もちろんパルファも、無理しない程度の軽い依頼しか受けていない。


「ユウおはよう、行ってくるわね。」

素振りをしているユウに声をかけて、パルファは今日もギルドへ向かう。

「気をつけてね!あ、あと」

「明日は行ける。でしょう?」


ユウが言わんとしたことをパルファに被せて言われて、お互いにフフっと笑う。そうしてパルファの背中を見送ったユウは、再度剣を振り続けた。


〜〜〜〜〜


素振りを終えたユウは朝食の後、衛兵詰所へと来ていた。ダンジョンに行く前から、ガイに是非中の様子を事細かに口頭で教えてくれと言われていたのだ。


「あの、すみません。ガ」

「おお!勇者のユウ様ではありませんか!ガイ兵長ですね!どうぞお通りください!」

正確には「勇者の(パートナー)ユウ」なのだが、もはやこの扱いは初日から何度言っても直らないため諦める。


中を進んでいくと中庭にて訓練をする衛兵たち、その指揮を執るガイの姿が見えた。

ガイも自分にすぐ気づいて、兵たちに訓練継続の指示を出しこちらに向かってくる。


「おぉ、ユウ殿!怪我はもうよろしいのかな?」

遠目で見た訓練の姿とは打って変わった柔らかい物腰で、ガイがユウへ尋ねる。

「ご心配をおかけしました・・・。もう大丈夫です!明日からまたダンジョン攻略に挑みます」


「なるほど・・・では、もしや今日は・・・?」

少ない言葉とキラキラとした瞳でユウの返事を待つガイに、ユウは笑いながらコクリと頷いた。

「おぉ!では、兵たちに昼休憩をさせてきます!お待ちくだされ!」


そう言ってガイは、上機嫌を隠すことなく訓練兵たちへ昼休憩を伝えに行く。


ダンジョンから帰還してすぐ、ユウ達の怪我は衛兵たちに知れ渡った。

そして街へ帰った次の日、ガイはユウへのお見舞いの際に、勇者とそのパートナーをここまで苦しめたダンジョンについて、是非話を聞かせて欲しいと言ってきたのだ。


幼い子供が英雄に冒険譚をせがむようなその瞳に、ユウも怪我が治ったらすぐにでもと快諾をした。

バタバタとこちらに戻ってくるこの無邪気な老人に、今日はダンジョンの話をするために訪れたのだ。


〜〜〜〜〜


「なっ、なんと!入った先が洋館で、扉を開くといきなりモンスタールームとは・・・!」

「はい。真っ暗闇の中に入ったら、最低でもCランクの魔物がうじゃうじゃと湧いて出てきました」

大まかな概要を伝えただけでも、ガイは驚愕をしていた。やはりあのダンジョンは、一風どころじゃない変わり種らしい。


ただ驚くだけでなく、ぶつぶつと「そういった想定の訓練も・・・」など呟いているのは、さすが国境前線を守る衛兵の長というところだろう。


「して、パルファ殿の魔法をキャンセルしたという暗闇を作り出した魔物の正体は、何だったのでしょうな・・・」

「それが分からなくて・・・。一階層の魔物は殲滅したので、下層のボスモンスターがダンジョン全体に暗闇の魔法を施しているのかもしれません。」


ユウの意見に、ガイは唸って考え込んでいた。

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