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悲しむ人

「やっと帰ってこれた・・・!」

スタンピードから半月ぶりに、ユウと春風の一行、パルファは王都へと帰還した。

ユウの回復を待っていた結果、ここまで日数が経ってしまったのだ。


村を出る時、ユウは初めて会話をした村人達からもお礼を述べられた。村の皆がユウのところにわざわざきて、しっかりとお礼をしていくのだ。


もちろん見知った子供たちや、集会場にいた村の代表たちもいた。そして最後はフウだった。

「向こうでゼレとバランに怒られちゃうわね。」


ユウを抱きしめながらフウは続ける。

「休みたくなったら、いつでもこの村に帰ってきなさいね。カムス村とまではいかないけど、あなたの心の拠り所になれたらと思うわ。」

「はい・・・!ありがとう、ございます・・・!」

そうして一行は、村を後にしたのだった。


ジィファと騎士団は、王への報告のために先行して帰っている。シルバは世捨て人という2つ名に恥じることなく、いつの間にかいなくなり王都へも帰っていない。


とりあえず依頼を完了しようと、一行は冒険者ギルドへと来たのだった。

そして扉を開けるやいなや、ユウに向かって何かが飛んできた。


何者かの攻撃かと身構えたが、右目が捉えたのは泣きながら後のことを考えていない動きで直進してくる、受付嬢のリリアだった。


避けることもできないと思い受け止める。リリアがユウに抱きつきながら、わんわんと泣いていた。

「ユ"ウ"ざぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁん!」


・・・おそらくスタンピードが噂になり、自分の腕のことも話題になっていたんだろう。

あともう1人はどうなるか・・・。そんなことを考えつつ、ユウはリリアに笑って応えた。


「ただいま戻りました、リリアさん。」


〜〜〜〜〜


「本当に・・・ご苦労じゃったのう。」

ユウと春風の一行、パルファはギルドの応接室に通され、ギルド長のソディスに労われていた。そして何故か目を真っ赤にしたリリアも、ユウの左側にピッタリとくっ付いて座っている。


それをみて、ソディスが笑いながら言う。

「ほっほっほ、すまんのう。あの依頼はリリアが発行したものでな。スタンピードじゃったのは調査するまで分からんかったし誰の責任でもないと言うたんじゃが、納得せんでのう。」


「ユウの身の回りの世話は今後自分が全てすると言って聞かんのじゃ。じゃから良かったら貰ってやってくれんかのう。」

ソディスがそう言うと、右隣にいたパルファが飲み物のグラスを落として割った。


ソディスは楽しそうに魔法でそれを片付ける。

この爺さん、さてはわざと・・・


「えーっと、依頼について再確認したいんだが、報酬は明日になるってのはどういうことだ?」

オッドが訪ねると、ソディスは「そうじゃそうじゃ」と思い出したかのように話し始めた。


「うむ。スタンピードは国の管轄、さらに死者数をゼロに抑えたことで、王自らがヌシらに褒美をとらせたいと言っておる。王都の門からすでにヌシらの帰還が伝わっており、明日に式を執り行いたいと連絡があったのじゃ。」

髭を撫でながら、ソディスはそう告げた。


「王との謁見か・・・やべえな服とか分かんねえぞ・・・」

「ほっほ、安心せい。いつも通りの格好で、礼儀作法も何も気にせんでよいとのことじゃ。」

ソディスの言葉に全員が胸を撫で下ろす。


「まぁそんなわけじゃ。明日正午、ギルドに迎えの馬車が来るそうでな。そのときまた集合してくれんかの。」


そうしてソディスとの話は終わった。その後は外までついてこようとするリリアをなんとか説得して引き剥がし、一行は明日また集合しようと解散することとなった。

パルファは次期勇者ということで、王族や貴族に混ざって式に参加するらしい。


ユウは誰よりも悲しんでいるだろう、また誰よりも謝らなければいけないだろう相手の元へと向かった。



〜〜〜〜〜


「すみません。第2騎士団のア」

「ユウくん!!あぁ、よくぞ帰ってきてくれた!」


ユウが言い終わる前に、詰所の入口にいた騎士はユウの両肩に手を乗せて言った。

「応援に行けなかった騎士から、かなり声をかけられると思う。別件が重なっていて第2騎士団全員は行けなかったからね・・・。本当に、生きていてくれてありがとう。」


その後も、お目当ての人物にたどり着くまでユウはさまざまな騎士から声をかけられた。

そしてついに目当ての人物が視認できた時、ユウの胸は強く締め付けられる。


そこにいたのは綺麗な銀色の髪をシュシュで束ねた女性だ。

泣きすぎたであろうことが分かる目の充血と腫れ。何も食べられていないのか、顔も少しやつれている気がする。

その女性―――アルの目から1滴の雫がこぼれた時、ユウは駆け出していた。

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