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勇者のパートナー

『魔王』と『勇者』


以前、この世界には争いが絶えなかった。

長く激しい争いは負の力を増幅させる。世界中に充満した負の力は形を作り、『魔王』という生き物へと形を変える。


初めて『魔王』が誕生したのは遠く昔、今ある老樹が種ですらなかった時代。

世界は『魔王』を共通の敵として団結した。そうして、ある男が『魔王』の討伐に成功し、『勇者』の称号を得る。


初代勇者の名はノワール・ネグザリウス。

この男は後に2つの国を作り、世界平和と人々の安寧を願った。


だが人間は愚かである。教訓を活かさず誇りを捨て、いまだに争いを繰り返し続けている。

祖先を同じとする、その2つの国でさえも・・・



〜〜〜〜〜



皆を集めて話をしたあと、病室には春風の一行だけが残っていた。


「ユウ、今後はどうする?」

オッドが抽象的な質問をしてきた。これは冒険者の継続や生活の仕方についてではなく、おそらく・・・


==========

名前:ユウ

種族:人間

強度:A

【ユニークスキル】

変換 Lv1

==========


戦いが終わって確認したステータスは、強度がついにAとなっていた。

強度Aといえば、上級冒険者の中でもさらにひと握りの存在だ。指名依頼も多くくるし、国に仕官することも容易だろう。だが問題なのは・・・


「パーティのこと・・・ですよね。」

「あぁ、強度がAとくればもっと良い依頼にありつける。貴族の護衛だとかな。」


そう。今の実力があれば、ユウはさらに良い依頼を受けられるのだ。

もし春風のパーティでなかったら、強度Aの冒険者がパーティ内にいる状況を逃す者はいないだろう。

おこぼれとして、自分たちも美味しい依頼にありつけるからだ。


だが春風のメンバーは、ユウが少しでもアルへの恩返しをしたいという事情を知っている。そしてそもそも、自分たちが足枷になってしまうと考えているのだ。


もちろん、誰1人としてユウの脱退を望む者などいない。だが、全員ユウが将来的にパーティを抜けることを知っているため、この機会なのか?と聞きたいのだ。


ユウが考え言い淀んでいると、失礼します、と病室にさらなる来客があった。

1人は見知った元パーティメンバー、今回先行隊として駆けつけてくれたパルファだ。


もう1人は初めてみる黒髪の男性だ。静かで荘厳とした雰囲気を出し、両の目はこの部屋の中よりもさらに遠くを見すえていると思うほど真っ直ぐ。


ユウと春風の一行がその男性の存在感に釘付けになっていると、男性はユウの側まできて口を開いた。

「初めまして。私はジィファ、勇者をしている。娘のパルファがお世話になっています。」

朗らかな顔をさらに優しくし、ジィファはユウに挨拶をする。


(この人がシルバと共にスタンピードの大部分を壊滅させた勇者・・・!)

シルバに並ぶ実力者がいきなり自分の病室を訪ねてきたことに少し驚いたが、自己紹介の返事を返さないといけない。


「初めまして、冒険者のユウです。今回はありがとうございました。」

ユウを皮切りに、春風のメンバーもお礼や自己紹介をする。パルファも返し全員の挨拶が済んで、ジィファがまた口を開いた。


「さて、突然押し掛けてすまなかったね。今回ユウくんにお願いがあって来たんだ。」

「お願い・・・ですか?」


「あぁ。私の娘パルファと、パーティを組んでくれないだろうか。」

聞き返したユウに対して、ジィファはしっかりと目を見てそう言った。


「えっと・・・それってどういう・・・」

1度は解散したパーティの元メンバー同士だ。それに原因が原因でもある。何故自分がパルファと?と考えていると、パルファが前に進み出た。


「私から説明するわ。私の家系は代々勇者を継いでいるの。父はまだ現役だけれど、そのうち戦えなくなる年齢になるわ。」

パルファは少し伏し目にしつつ話を続ける。


「争いが続くこの世の中、魔王はいつ誕生するか分からない。だから勇者という存在は絶えさせてはいけない。父が戦えなくなったとき、次代の勇者は私なの。」

「なるほど・・・。でも、それとパーティを組むことがどう繋がるのですか?」


ユウの質問にパルファが少し顔を赤らめて黙ってしまう。すると今度はジィファが話し始める。

「勇者は民を守れる勇者へとなるために、お互いを高め合えるパートナーとなるべき相手を探すんだ。そのパートナーに、パルファはユウくんを希望したんだよ。」


ジィファが言い終わると同時に、パルファの顔は見たことないくらい真っ赤に染った。

聞いていたオッドが口笛を吹き、ローラとカノンもヒソヒソと話をしている。


「パーティを解散した理由は聞いていた。本当に間違いないかどうか、僕自身キミをこの目で見定めたかったんだ。今回先行隊として来た理由はもちろん民のためだけど、その目的もあったのさ。」

「そうなんですね・・・それで・・・どうでした?」


ユウが合否について聞くと、ジィファはフッと笑った。

「先程言った通り、ぜひお願いしたいと思ったよ。実力は問題ない。なにより素晴らしいのは、キミの心の清廉さと強さだ。キミこそが勇者に相応しい!」


正確には勇者のパートナーに相応しいなのだろう。だが現役の勇者から、そんな言葉を貰えて素直に嬉しかった。


「・・・以前パーティにいた時から、ユウの強さを尊敬していたわ。あの事件があった時も、実は意識が戻る前にすぐユウの病室に行ったの。」

パルファがもじもじとしつつ、自分を選んでくれた理由や想いを話す。


だが自分は春風のメンバーだ。先程もちょうどその話をしていたのだ。

どうしようかと考えていると、オッドがユウに近寄り頭に手を置いた。


「・・・まだ知らないことも沢山あるガキだが、仲間思いでお人好しの良い奴だ。知っているとは思うが、よろしく頼む。」


そう言ってオッドはパルファに頭を下げた。ズーリンやローランドも頭を下げ、カノンとローラはパルファを取り囲みなにやらキャアキャアと話をしだした。


「えっ!オッドさんなにを」

「ったく!早速勇者から選ばれやがって!うらうらうら!」

そう言ってユウの頭をガシガシと乱暴に撫でるオッド。


「・・・お前は色んな景色を見て、色んな人と触れ合うべきだ。俺らももう少しランクを上げて、お前に見劣りしないパーティになって待ってるからな。」

そのまま穏やかな顔をして、オッドはそう言った。


その言葉を受けて、込み上げる感情や涙を抑えてユウはパルファとジィファに顔を向けた。


「よろしく、お願いします。」

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