相性が悪い敵
四方八方、どこかしこから戦いの音が聞こえている。
この戦乱の中でユウとオッド、カノンとズーリンの4人は、お互いの死角をカバーしつつ手近な魔物に傷を与えていた。
(致命傷でなくてもいい。手傷でも与えれば、あとは魔物同士が潰しあってくれる。)
春風の一行の作戦は、「とにかく村への魔物侵入を減らすこと」だ。
だから壁を越えそうな魔物は足の腱を、飛行型の魔物は羽を狙って、村へ侵入する手段を奪っていく。
あとはトドメや深追いをせず、魔物同士でやり合って貰うようにする。そうすることで、より多くの魔物を安全に相手どれるのだ。
万一、死角が生まれてもローランドがやぐらの上からすぐ対処し、大物や複数の敵はローラが魔法で狙い撃つ。
即席で考えた戦い方にしては上手くハマり、戦いが始まってここまでの1時間ほど、春風の一行は無傷で戦いをしのぎ続けていた。
そう、ここまでは。
「おいおい嘘だろ・・・!」
オッドが魔物の群れの一点を見てそう呟き、他のメンバーも戦いながら目線の先を追う。
そこに居たのは5メートル以上あるだろう、ずんぐりとした人型の岩だった。
「ストーンゴーレム!ローランドの弓とローラの火魔法では相性が悪すぎるわ!」
「おらが引き受ける!こっちさ交代しろ!」
「ダメだ!よく見ろ!」
ズーリンが迎え撃とうとすると、オッドがそう言った。
もう一度ゴーレムがいる方向を見ると、ゴーレムの輪郭が少しブレている。
・・・いや違う、ブレているんじゃない。
3体のゴーレムが連なっているのだ。
「ズーリンひとりじゃアレは無理だ!全員で一体ずつ倒すぞ!ローラとローランド!少し頑張ってくれ!」
「「「「「おう!(はい!)」」」」」
本来地上班が請け負うはずだった魔物の処理をローラとローランドに任せ、地上班はまだ村から遠い位置にいるゴーレム対処へと動き出した。
進路上にいる魔物を蹴散らしながら、3体のゴーレムに近づく。あと数メートルまで近づいた時、オッドが全員に合図を出した。
「ふうううん!!!」
ズーリンが自身の膂力とスキルをフル活用し、先頭にいたゴーレムの片足を浮かせ仰向けにひっくり返す。
先頭にいたゴーレムは2番目にいたゴーレムの脇に倒れた。2番目のゴーレムは、力を入れてすぐに動きが取れないズーリンへと手を伸ばす。
「「はああああ!!」」
それをオッドとユウが横から足を攻撃することで、体勢を崩させて防ぐ。
倒れたゴーレム2体を上空から見た時、数字の7のような状態になっていることだろう。
3番目のゴーレムはというと、煙がのぼる背中をこちらに見せて後ろを向いている。
カノンが素早く背後に回り込んで爆弾を使い、後ろを振り向かせたのだ。
身動きがとれるようになったズーリンはそのゴーレムの背面に立ち、オッドとユウの2人はゴーレムを追い抜かしてカノンと合流し、その眼前に飛び出した。
カノンがもう一度爆弾を、今度はゴーレムの胸元に向かって投げる。爆発した直後に背後にいたズーリンがゴーレムの片足を前に押し出し、ユウとオッドで胸元へと蹴りを入れる。
前後からかかった力に、3体目のゴーレムもたまらず倒れる。倒れた先でちょうど1体目のゴーレムが起き上がろうとしており、お互いがぶつかりあって瓦解していく。
「よおおおおし!!あとは1体だけだ!」
オッドがそう言い、4人は横に倒れたゴーレムを見据える。
そのゴーレムも足元を2体の崩れたゴーレムによって埋められ、上手く立ち上がることが出来ていない。
「うおおおお!!!」
ゴーレムの破片の中でも比較的大きめのものをズーリンが持ち上げ、頭部であろう少し盛り上がった部分に投げつける。
カノン・オッド・ユウの3人も、それぞれが爆弾を投げて1箇所を重点的に攻撃した。
一瞬強い砂煙がたち、それが晴れると最後のゴーレムが崩れ落ち朽ちていくところだった。
「よし!!!なんとか上手くいったな!さっきの場所に戻るぞ!」
強敵であるゴーレムの討伐を喜びつつも、4人は先程までいた持ち場に戻り始める。
だが、ゴーレム討伐の代償は大きいものだった。
「悪いなズーリン、こんな状況じゃなきゃ一休みさせたいんだが。」
「はぁはぁ・・・大丈夫だべ・・・!」
ゴーレム討伐の1番の功労者であるズーリンは満身創痍で、息も絶え絶えで魔物と戦っている。
「さっきのゴーレムで火薬ももうない。次ストーンやロック系統の大型が来たら厳しいかもね・・・」
比較的負担が軽かったカノンからも、状況の悪化を知らされた。
「・・・一旦ズーリンは村の中で休んでくれ。カノンは村の中から追加の火薬を調達して、外には出ずにローラ達と同じ場所から攻撃を頼む。」
オッドが魔物を切り伏せながら2人に言う。
「ちょっと!あんたとユウの2人でしのごうって言うの?無茶よ!」
「大丈夫だ。ヤバくなったらお前にも降りて来てもらうし、ズーリンも回復したらこっちに来てもらう。どのみち最終的には籠城するんだし、しばらくはお前も中に居てくれってだけだよ。」
オッドのその言葉に、カノンもしぶしぶ納得した。村の近くに戻ってきて、カノンはズーリンと共に魔物を倒しつつ村の方へ離脱していく。
それをみていた門番が門を少しだけ開けて、2人を村の中に入れる。
「ヤバくなったらすぐ離脱しなさいよ!」
「「おう!」」
門が閉まる最中にカノンが大声で叫び、背中を合わせたオッドとユウの2人が応えた。




