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救援依頼

「救援依頼?」

いつもどおり依頼を受けるためにギルドに集合した春風のメンバーは、パーティリーダーであるオッドから受注した依頼を聞いた。


今日受注した依頼の内容は、今ユウが口に出した『救援依頼』というもの。救援依頼とは、村や街になんらかの危機が迫っており、乗り切るための戦力をギルドに求める依頼だ。


「ああ。ここから東にあるユミシア村っつう小さな村の付近で、魔物が活発になっているらしい。その原因解明と村の警備で、冒険者ギルドに依頼が来たそうだ。」

オッドが腕組みをしながら話した。・・・小さな村と、活発な魔物か。


先の光景を思い出し、ユウの手にも少し力が入る。

「あたしはもちろん賛成よ。他人事とは思えないもの。」

「んだな。村の人も怖がっているだろうし、早く行くべ。」

カノンさんとズーリンさんは、当然だと言わんばかりに依頼を受けることを決意する。


「じゃあ、早く向かわないとですね!」

「あぁ。午前中で準備をして、今日のうちに出発しよう。」

ローラさんとローランドさんも、見ず知らずの村を救うことに前向きだ。


やっぱりこのパーティはいいな。

「村の皆さんを、守りに行きましょう。」

最後にユウがそう口に出すと、オッドは一瞬キョトンとした後に笑った。


オッドはおう。と言って、いつものようにユウの頭をガシガシと撫でる。

(次は全部守るんだ。村の人たちも、この人達も。)


村とパーティの両方を失ったユウは、今回の依頼に特に力を入れたのだった。


〜〜〜〜〜


「お、ようやく見えてきたな。」

先頭を歩くオッドの言葉に、パーティの全員が前方に目を向ける。昨日の午後イチで出発した春風の一行は、翌日の朝方に村が見えるところまでたどり着いた。


道中はなにも問題がなかったが、進むにつれて確かに魔物の数が増えていることを感じていた。

幸い遠目で見える村は魔物用の柵がしっかり組んであり、出入口付近を見回る人がいることからまだ深刻な被害は出ていないようだ。


村に辿りつき出入口にいた村人にギルドから雇われてきたと説明し、春風の一行は村の中へと案内された。


村長の家へと案内されている最中、幼い子供達が遊んでいたのを止めてキラキラとした目でこちらを見ている。

「ふっ・・・俺のことを憧れの眼差しで見てるな。」

「子供の感性は独特ですからね〜。」


オッドが少しポージングをしながら言い、それにローラがニコニコと悪気なく毒づく。

そうこうしている内に、一行は村の奥にあった村長宅へと到着した。


「村長!冒険者の方々がおいでなすった!」

ここまで案内をしてくれた村人がドアを叩きながら声をあげると、数秒後にゆっくりとドアが開く。中から出てきたのは背筋が伸びて凛々しさを残す老婆だった。


「あら、こんなに早く来て下さるなんて助かるわ。村長のフウです。どうぞ上がってくださいな。」

老婆は年不相応な爽やかに笑みで、春風の一行を招き入れた。


〜〜〜〜〜


一行は今椅子に座り、フウにお茶とお菓子を用意してもらっている。一応遠慮はしたのだが、いいからいいからと言われてご馳走になることにした。

(そういえばおばあちゃんってこんな感じだって、前世で聞いたことあるな。)


食べきれないご飯を用意したり、1度好きだと言ったお菓子を飽きるまで食べさせてくれたり。カムス村でもばあちゃん達はよくおやつをくれてたっけ。

村のことを思い出すと、より一層この村を助けたいという思いが強まる。


「さて、まずはもう一度お礼を言います。今回は依頼を受けていただいて、どうもありがとう。」

気づけばお茶もお茶菓子も用意されて、フウは一行の目の前に座りお礼の言葉を述べていた。


「なーに気にしなさんな。俺らは全員村の出だから、他人事とは思えなかったんだ。」

オッドの言葉をフウは嬉しそうに聞いている。


「素敵な村で育ったのね。どこの村かしら?」

「ここから王都を通り過ぎてさらに西にある、ユミシア村というところです。」

「ユミシア村・・・名前は聞いたことがあるけれど、そんなに遠くの村から王都へ出てきたのね。」

カノンが故郷の名前を出すと、フウは穏やかながらも驚いているようだ。


(田舎とは聞いていたけど、遠い村なんだな。)

この世界に来て1年も経っていないユウはもちろんユミシア村について何も知らない。話の流れから遠いところにあるんだなと考えていると、フウが自分を見つめていることに気づく。


「あなただけ年が離れているようだけれど、あなたもユミシア村から?」

「あ、僕はつい最近加入したんです。出身は・・・あの山の麓にあったカムス村というところです。」

過去形にするのは未だに少し抵抗がある。だがそれよりも、フウがユミシア村の時よりも驚いた顔をしている。


「あらあら!じゃあゼレやバランのこと知っているかしら?」

久しぶりに耳にした大切な2人の名前に、今度はユウが驚く番であった。

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