運命の分かれ道、そして悪夢
~~~パルファside~~~
第一印象は不思議な少年だった。
心根はまっすぐなのに対し、戦い方ははっきり言ってぐちゃぐちゃだ。騎士のような剣術を使うと思えば、膂力に任せた体術も駆使する。先ほどなんて野性的な反応で、みるみるうちにウサギ型の魔物を6匹も捕まえてしまった。
傑物なのは間違いないけど、どうやって育てばこんなに・・・そう、歪むの?
でも過去の話を聞いてその理由も分かった。
剣術を教わった騎士、暴力で全てを奪った盗賊、魔物の群れと戦い続けた野性の生活。純粋無垢な少年をベースにそれらの経験すべてが合わさって、この歪な戦士は完成したのだ。
・・・まぁ、素性に関しては私も色々とあるけどね。
とりあえず、ユウは人間性に何も問題はない。実力もあるし、今後上手くやっていけたらいいわね。
さて、そろそろあのミュアの甘えも落ち着いたかしら?ユウに声をかけて、野営場所に戻る。
・・・ウサギ肉、思ってた通り美味しいじゃない。
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野営を終えた次の日の昼頃、希望の炎一行はお目当ての洞窟前にたどり着いていた。
「やっと着いたな・・・さて、まだ昼だがどうする?」
「とりあえず野営の陣を組んでおきましょう。中で何があるか分からないわ。万が一引き返したときにすぐ休めるよう、ここをベースにして洞窟攻略は明日からにすべきよ。」
ケールに判断を仰がれ、パルファがそう答える。
「・・・私はそんな必要ないと思うけどね。何度も野営するのもごめんだし、さっさと行っちゃいましょうよ。」
安定優先のパルファの案に対して、ミュアは反対に即断性の高い意見をだす。
「パルファは安定志向過ぎるわ。私たちの実力ならこんな洞窟余裕よ。さっさと深淵石を手に入れて、もっと早く帰れるようにしましょう。」
「いえ、ここをベースにすべきよ。よく考えてミュア。どちらにしても1日で帰れる距離でないのだから、ここに準備をしておいて損は無いのよ。もし洞窟が噂以上に深かった場合、中で野営できる場所を探すのは困難なのだから。」
どちらかというとパルファの意見の方が正しく感じた。確かにここに野営の準備をしておいて、早く戻ってこられたらこられたで、ここで野営をすればよいのだ。
なんとなくだがミュアは・・・パルファの案に乗るのを嫌がっているように感じる。
パルファの案にケールが賛同するのが嫌で、パルファが正しいと分かっていても意固地になっているような印象だ。
「・・・ケールはどうなの?パルファは私たちの力に不安があるみたいだけど。」
「ちょっと!そんなことを言っているんじゃないでしょう?」
ミュアは攻め方を変えて、ケールを巻き込むみたいだ。
「私たちの力ならさっさと攻略できるし、最短記録なんて出したらそれこそパーティーに拍が付くわよ?」
「うーん・・・そうだな!とりあえず行ってみて、かかりそうだなと感じたら戻ってくるか!」
ミュアの魅力的な言い回しにケールが折れて、一行は最速攻略を目指すこととなった。
ユウはパルファに賛同する意を見せたが、やはりパーティーリーダーの意向がどうしても尊重される。
ちょっとした遺恨を残しながら、希望の炎は洞窟の中に足を踏み入れたのだった。
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この洞窟は短い。1時間もあれば往復できてしまうだろう。
居住するにはちょうどよいサイズで、洞窟にはここ数日滞在している存在がいた。
あと少ししたら、それはここから出ていこうとしていた。
もし希望の炎一行が野営の準備をしていたら、会うことが無かったかもしれない。
―――希望の炎にとって最悪の時間は、もう少しで訪れる。




