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加入とプレゼント

・・・なるほど、嘘ではないみたいだ。ケールの強い意志を感じる。

自分のことを面白がっていたり、いいように使ったりしようとは考えていない事が分かった。


「分かりました。今日からよろしくお願いします。」

「まぁ分かるぜ。もちろん考える時間は・・・って、いいのか!?」

即決して貰えると思っていなかったのか、ケールは目に見えてビックリしていた。後ろの女子2人も、大小は違えど驚いている様子だ。


「はい。色々と至らない点があると思いますが、頑張ります。」

そう言って腰を折り頭を下げた。


「はっ、ははは!こちらこそよろしく頼む!よーし、こうなりゃ早速アノ依頼を受けてくるぜ!」

そう言ってケールはユウの両肩をバシバシ叩き、クエストカウンターに向かって行った。


「はぁ、まずはパーティーメンバー登録が先でしょうに。・・・でもユウくん、こんなに簡単に決めて本当によかったの?」


パルファがケールを遠目で見ながら尋ねてきた。


「はい。元々ソロでの活動はいつか限界が来ると思っていたので。」

「そう。ちなみにあの男のことだから、今日は記念に飲みに行こうとか言い出すと思うの。ユウくんはいける?」


パルファがケールをあの男と言った瞬間、少しミュアがこちらを睨んだ気がした。だがすぐにそれも無くなる。


「そうですね・・・少し行きたいところがあるので、夜だったら大丈夫です!お酒は飲めませんが・・・」

「なるほどね。じゃあそう伝えておくわね。用事を済ませたらまたここに来て。」


そう言って、パルファはケールがいるカウンターの方に歩いていった。ミュアもこちらを一瞥して、それについて行く。


さて、言われた通り用事を済ませてこよう。


〜〜〜〜〜


「すみません。第2騎士団のアルさんと約束をしているんですが・・・」

「はいはいお待ちを・・・って、ユウくんじゃないか。入っていいよ。」


ギルドの後、ユウは騎士団詰所に来ていた。昨日アルに、初クエストが終わったら話を聞かせて欲しいと言われていたのだ。

詰所の入口にある門にいた騎士が顔見知りだったので、顔パスでそのまま中に入れた。


そのまま中に進んでいくと、木々が立ち並び中央に噴水がある広場が見えた。

日差しが差し込み気持ちよさそうで、騎士がランニングしていたり、ベンチに座って読書していたりする。

少し立ち止まってそれを眺めていると、後ろからいきなり目隠しをされた。


「ふふふっ、だーれだ?」

「・・・アルさん以外だったら怖いなぁ」

そう言うと、柔らかく暖かい手の感触が目から無くなる。


振り返るといたずらっ子のような顔をしたアルがいた。

今まで見たことがある騎士の格好でなく、女性らしいふんわりとした服を着ている。

ギャップのある姿に見蕩れていると、それに気付いたアルが言う。


「今日は非番なんだ。どう?似合ってる?」

「はい!いつもはカッコいい雰囲気ですけど、今日は可愛らしさを感じます!」

アルはストレートに褒められると思ってなかったようで、色白の顔を真っ赤にして目を泳がせた。


「そそそういえば!クエストはどうだったの?まだ日が高いけど、もしかしてなにかあった?」

「いえ、無事に終わりました!聞いてくださいよ―――」


照れているアルがクエストの話を切り出し、それを皮切りにユウも多くのことを話し始めた。

クエストが無事に終わったこと、不思議な少女に出会ったこと、パーティーに勧誘されたこと、そして入ること。


「ふーん。その子にお花をプレゼントしたんだねぇ・・・」

全て話し終えて、今アルは少し拗ねたように唇を尖らせている。アルはそもそも美人なので、こうしたひと仕草がいちいち絵になる。


「えっと・・・それで、コレを渡したかったんです!」

そう言ってユウは、ここに来る途中買ったシュシュをアルに見せた。

黒地にアルの髪と同じ銀色のラインが入っており、シンプルだが可愛いデザインをしている。


「え!?これって・・・」

「その、初めてのクエストで稼いだお金で、アルさんにプレゼントを買おうって決めてて・・・。安物ですけど、もしよかったら受け取って欲しいです。」

そう言って、ユウは恥ずかしがりながらアルにシュシュを渡す。


(女性にプレゼントを渡すのってこんなに緊張するんだな・・・変換スキルで羞恥心を無くしたいと思うほどだ。)


そんな事を考えていると、シュシュを受け取ったアルは今まで見た事ないほどの笑顔をユウに向けた。


「ありがとう、すっごく嬉しい・・・!早速付けてみるね。」

そう言って、アルは長く綺麗な髪をシュシュでまとめる。


「どう?似合ってる?」

髪をあげたアルからは、騎士のような凛々しさと爽やかな女性らしさの両方を感じる。

双方の良いとこ取りをしたようで、正直かなりグッとくる。


「とっても似合ってます!よかった・・・」

「ありがとねユウくん。でも、せっかく初めてのクエストで稼いだお金だったのに大丈夫なの?お金が必要ならちゃんと言ってね?」


第三者が聞いていたら、ユウにヒモ疑惑をかけられるだろう。

しかしこれは、ユウが討伐した盗賊達にかけられていた懸賞金のほとんどを、アルに渡していたからだ。


最初アルは猛反対した。だが後見人としてユウに出すお金をそこから取って欲しい、自分は少しあれば十分だ、さらには使わないなら捨てるとまで言った後、ようやく受け取ってもらった。


今の言葉は「あのお金は使ってないから必要なら言ってね」ということだ。


「大丈夫です。パーティーに入って、今後はもっと安定してクエストも受けられると思いますし!」

「そう?分かった。でも無理はしない約束ね?」


そう言って小指を立ててくるアル。この世界にも指切りはあるんだなと思いながら、ユウは決して無理はしないと約束をした。


それからもう少し話をして、夕方になる頃ユウは冒険者ギルドに戻った。


「おおーい待ってたぜ!こっちだ!」

ギルドに入った瞬間、遠くのテーブルからケールが大きく手を降ってユウを呼ぶ。


(大切にしてくれる人がいるって、やっぱり幸せだな。)


向かいの酒場で歓迎会はスタートし、賑やかに夜は更けていった。

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