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Sランクと観察する者

「シルバさん!大丈夫ですかー!?」

戦いを終えた2人に、パタパタと受付嬢が走って近づく。その後ろにはアルもいるようだ。


「おう、問題ない。・・・とカッコつけたいところだが、やっぱりそこそこ痛え。」

そう言ったシルバの口の端から少し血が垂れる。


「あっ、すみません!すぐお医者さんを呼ばないと!」

はっと我に返りユウは慌てるが、シルバが手で制する。

「あーあー、いいよ。治りは早い方なんだ。にしてもお前・・・」


「ユニークホルダーだろ?」

喋りながらシルバはユウに近づき、ユウにだけ聞こえる声で言った。


「えっ!なんで分かったんですか?」

「終盤いきなり動きがダンチになったからな。強化魔法を使ったわけでもないし、火事場系のスキルとも感じが違った。ってことは、だ。」


少し得意げにシルバはそう言い、アルの目をジッと見つめる。


「職業ってのはスキルで決まる。学術スキルを持ってたら商人や役所勤め、戦術スキルなら自警団や門番とかな。」


でも、と続ける。


「冒険者は唯一自由な職業だ。どんなスキルだろうが男女関係なく誰でもなれる。自分の行動に責任が持てる、心身が強い奴ならな。」


そう言ってシルバは背中を向けて入口の方に歩き出した。


「お前なら大丈夫だろう。ユウ、冒険者試験合格だ。」


ヒラヒラと手を振りながら、シルバは修練場から姿を消す。

その時ユウはというと、てっきり不合格かと思っていたためポカンと口を開けて呆けていた。


「すごいすごい!シルバさんの実技試験って、かなり辛口で受かった人ひとりもいないんですよ!ユウさん有望ですね!」

受付嬢がぴょんぴょんと跳ねながら賛辞を述べる。


「シルバ・・・まさかとは思っていたけど、“あの”シルバさんだったのね。」

アルはシルバが去って行った方向に視線を向けてそう呟く。


「アルさん、知っているんですか?」

「えぇ、シルバ殿は王都近辺を活動エリアとするSランク冒険者よ。決まった家を持たず王都周辺の森を転々として生活し、多くの人が憧れる貴族からの指名依頼などもよく断ることから“世捨て人のシルバ”と言われる人なの。」


『Sランク冒険者』

その単語を聞いた時に、ユウは感動に打ち震えた。

最高位の冒険者ランクを得た、世界に10人いないと言われている存在。

戦争を止めた、国を飢饉から救った、ドラゴンの群れを討伐したなど、様々な伝説を残す人たちの一人と、ユウはさっきまで相まみえていたのだ。


「今日はたまたま冒険者ギルドにいらっしゃって引き受けてくれたんですよ!たまにあるシルバさん担当の試験で受かった人はユウさんが初めてです!」

受付嬢はまだ興奮が冷めないようだ。ついにはユウの手を取ってブンブンと振り出した。それと一緒に受付嬢の豊満な胸が・・・


「・・・ゴホン!ユウくんもケガしているみたいだし、そろそろ戻りましょう?」

アルが咳払いと共に、興奮する受付嬢にストップをかけた。こころなしか少し怒っているように見える。騎士の喋り方も忘れているし。


「あ!その通りですね、すみません。では手当をして、冒険者登録を行いましょう!簡単な講習もあるので、今日全部終わらせてしまいましょうね!」

そうして受付嬢とユウとアルの3人は、ギルドの中に入っていった。



その一部始終を見ていた者に気付くこと無く。



(Sランクのシルバ。私に気づいてすぐにいなくなった。)

どこからともなく現れたのは透き通るような水色の髪をした少女だった。事の行く末を見守り、まずその少女が考えたのはSランク冒険者のシルバについて。


少女はある特殊なスキルを持っている。それによって存在はかなり希薄になっているのだが、シルバは少女の場所までは分からずとも見られているということを察知してのけた。そのことに少女は素直に驚いている。そして・・・


(あの少年。あれがきっと。)


そもそも少女がここに来た理由は、少女の仲間が今日この場に重要な存在が現れるという予言をしたからだ。そしてそれはきっと、あの少年の事を指しているのだろう。

幼いながらSランク冒険者にダメージを与える戦闘力。人の良さそうな雰囲気。戦闘中に感じた、おそらくスキルによる違和感。


(もう少し観察してみよう。私たちのために。)


人がいなくなった修練場は外から鍵をかけられている。

その密室空間から、少女は鍵を開けることなく姿を消した。

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