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軽い命

「昨晩マッシュが自分の商館に帰ると、1人の奴隷が酷く痛めつけられて倒れていた。駆け寄ったところを偶然訪れた商人仲間に見られ、暴力を振るったと勘違いされて逮捕された・・・ってことで合ってる?」

「はい、そのとおりです」

聞いた内容をユウが繰り返し、それに奴隷の少年--ハイロが答える。


「それで、その奴隷には見覚えなかったんだね?」

「はっ、はい!あんな奴見たこともありませんでした」

ベルベットの問いに、ハイロは勢いよく頷く。


「戻ったわ」

ちょうどそのタイミングで、外出をしていたパルファとシルバが戻ってきた。

「お疲れ様、どうだった?」

ユウの言葉に、パルファは悩ましげに答える。


「マッシュ殿の罪状は奴隷の違法売買。真っ当な労働用でなく、暴力を振るうための奴隷を売り買いした罪に問われているわ。このままいくと・・・」

チラっとハイロをみて、パルファはその先を言わなかった。

ハイロも察しているのか、顔が青くなっている。


「・・・旦那様は奴隷に対して手を上げたことはありませんし、手を上げるような者に販売したこともありません。なのにどうして・・・」

「商館に帰ると見知らぬ奴隷、偶然訪れたという商人の目撃者、何故か膨らんだ罪状・・・誰かに嵌められたね」

そう言ったベルベットに、その場の全員の視線が集まる。


「嵌められた・・・?旦那様が一体だれに・・・」

「さぁね。でもなんとなく、怪しいなって奴はいるよ」

それを聞いていたユウの脳裏にも、1人の男が浮かんでいた。


「「ワンド」」

ベルベットとユウは、同時にその名前を口にした。

「ワンド様が・・・ですがあの方は人格者だと評判で、商会長という地位もあります。それがなぜ・・・」


「それも分からない。もしかしたらそもそも違うかもしれないしね。でも、なんとなくだけど犯人はアイツだと思うよ」

「勘、ですか」

確信を得た目のベルベットにユウがそう言うと、ニヤリと口角を吊り上げた。


「刑執行は3日後だ。それまでに手を打つぞ」

シルバの言葉に全員が頷き、準備を開始する。

「あっ、あの!どうして皆さん、会って間もない旦那様のためにそこまでしてくれるのですか?」

ハイロの問いかけに答えたのはユウだった。


「人を助けたいって思うのに、理由なんていらないよ」


〜〜〜ワンドside〜〜〜


屋敷の中、牢屋に詰め込まれた奴隷たちを見てワンドは思う。

なんと汚らわしい、と。

ここまで落ちぶれても生にしがみつく卑しい心、美しくない身なり、無力さ。


どれをとっても、商品として見る気になれない。

ワンドが扱うのはスパイスや宝石だ。それらを需要に合わせ完璧に供給し、品質の高い品を揃え続けた商才によって、一代でこの商人の街の長へと成り上がった。

そんなワンドからしたら、こんな落ちこぼれたちが自分が仕入れる自慢の品よりも高く売れるだなんて信じがたいことだった。


そして何よりも腹立たしいのはマッシュだ。

自分の商会に属していながらこんな穢れた商品を扱うあの男。

だが商人は所詮稼いでなんぼ。ゆえにしっかりと儲けを出すならまだよかった。


あの男は慈善事業のような活動を行い、奴隷を扱っているとは到底思えない程度の儲けしか出していなかった。

後ろ指を指される奴隷商人でありながら、そのくせ利益はあげて商会を潤すこともしない。

だからワンドはあの男を切ったのだ。そして奴隷共に関しては少しの間我慢して、ワンド自らが適切なさばき方をしてやろうと。


マッシュの命とこいつらの生み出す利益を持ってして、自分にかけられた迷惑は水に流してやろう。

そんなことを考えながら愉悦にひたり、怯える奴隷たちを肴に酒を飲んでいた。


「ワンドの旦那、アイツは手筈通り始末しますぜ。その代わり・・・」

「ふん、分かっておる。元仲間1人の命分、報酬を上乗せしてやるわい」

話しかけたゴロツキのリーダーは、ワンドの返事に露骨に喜ぶ。

そうして近くに控えていた部下に指示を出した。


今からゴロツキたちは、自分たちの仲間を1人殺しにいくのだ。

それはわざとボコボコにされて、マッシュの商館に転がる役目を果たした男。

マッシュが逮捕されるどさくさに紛れて姿を眩ませたその男には、「重大な役目だから特別に報酬を多く払う。後で迎えにいく」と伝えて街中に潜伏させている。


その約束を破り、口封じとして死んでもらうのだ。

(見つかって尋問でもされたら厄介じゃし、裏切るかもしれんからのう)

これで手の届かないところでワンドの策謀を知る者は居なくなり、計画に欠陥は無くなる。


ゴロツキ共が出ていった部屋の中で、ワンドは酒と自分のプランニングに酔いしれていた。


〜〜〜〜〜


「こっちにいやがったぞ!」

「おい待てこのやろう!」

夜の街に、ドスの効いた男たちの怒鳴り声が響き渡る。

男たちは1人の男を大人数で追いかけていた。


「はっ、はっ、はっ・・・」

追いかけられている男は泣きそうな顔で、ただひたすらに街中を駆け回っている。

途中被っていたフードがめくれて、ボコボコに腫れ上がった顔が露わになった。


(どうして俺がこんな目に・・・)

追加の報酬が貰えると聞いてわざわざ汚れ役を買ってでたのに、今こうして約束を反故にされ追いかけ回される男は、自分の行動を悔いていた。


そんな男の後悔も虚しく、男のたどり着いた先は袋小路だった。

そこに追いつき、武器を抜いてジリジリと近づく追跡者たち。


今度はボコボコにされるどころで済まないのは、もう決まりきっている

周囲のゴロツキたちが自分に向かって走り出した瞬間、男ら生を諦めて目を閉じた。

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