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第三章

『もう……本当にあなたは昔から変わらないわね』

「え?……」

『泣き虫で、おこりんぼで、おっちょこちょいで』

「ユ……ユキコなのか?」

『でも優しくて、暖かくて、格好良くて』

「本当にユキコが話してるのか?」

『うん……どうやら満月の光に不思議な力があるって言うのは本当だったみたいね、最後の最後でこうしてあなたとお話ができるなんて……』

「不思議な力が本当にあるんだったら俺を置いて行かないでくれ! ずっとずっと俺の傍に居てくれよ!」

『それは無理よ……だって、私は猫なんだもの……」


猫の寿命は人間に比べれば僅かなものだ……。

その運命を変える事など人間である俺にはどうやったって出来はしない。

だったら俺は、俺にしか出来ないことでユキコを安心させたやりたい。


「も、もう大丈夫だ、ユキコが居なくなっても俺は全然平気だから、だから安心して……」

『あなたって嘘が下手なのも小さい頃のままなのね、そんな涙でグチャグチャの顔で言われたって説得力なんて無いじゃない……ほら、涙を舐めてあげるからこっちに顔を近づけなさい、私はもう動けないんだから早く』


項垂れる俺にユキコは最後の言葉を掛けて来た。


『あ~あ、結局最後まであなたの恋人にはなれなかったな~……でも私はまだ諦めてないわよ、恋人は無理でも、今度はあなたの娘に生まれ変わって、ずっとずっと傍に居てやるんだから……だから覚悟しなさい』

「あは……ははは……」

『じゃあね……大好きなあなた』


……。

……。

……。


ユキコの小さな体は満月の光に照らされ、淡く光っているように見える……。

その幻想的な姿は、俺に生まれ変わりの話を信じさせるのに十分だった……。

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