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旅路が俺を嫌っている  作者: 葛来 奈都
初っ端から時間旅行
12/54

未来ぶち壊し大作戦 ②

「もういい! アッシュごと切れ!」

兵士の一人が荒々しく声をあげる。

切っ先を向けられるアッシュだが、無論、彼には抗う力もここから逃げる術もなかった。



「……それを俺が許すとでも?」

ゼファは眉間にしわを寄せ、高々と飛んだ。

慌てて上を見る兵士たちだが、ゼファの姿は太陽の光と重なり、逆光となった。



光に目が眩んだのか兵士たちは思わず動きを止める。

ゼファにとってはその一瞬の留まりで十分だった。

着地するタイミングを計って兵士の鉄仮面目がけて剣を振り降ろす。



しかし、兵士もやられてばかりではなかった。

咄嗟に剣を構え、ゼファの斬撃を防ぐ。

そしてゼファが地面に足をつけた隙を目がけて余った二人が同時に剣を振った。



「ゼファ!」

たまらずアッシュが声をあげる。

その声に反応するようにゼファは瞬時に転がってギリギリ剣の切っ先を避けた。

だが、体制が整う前にフリーになった兵士がゼファの背後から剣を振り下ろす。



兵士の攻撃をサイドステップでなんとか避け、再びゼファは兵士たちに突っ込んでいく。

けれども太刀筋は甘く、兵士たちにダメージを与えていない。

確かにゼファのスピードと跳躍力は並外れていた。その裏腹に腕力は劣っていた。

彼は素早い攻撃の手数で攻めるスタイルだ。

こんな重装備された相手だと彼の力では斬撃が届かない。



初めは攻撃に若干のためらいが混ざっていた兵士たちだが、ゼファの攻撃が本気なものだから彼らもどんどん容赦がなくなってきた。

一人が振るったらまた一人と振るわれる斬撃にゼファは懸命に避けていく。

この怒涛の攻撃にゼファも防御することで精いっぱいで一向に攻撃ができなかった。

「……こういう闘う訓練だけはちゃんとさせてたんだな、あの野郎」

動きのいい兵士たちを見てゼファは皮肉るが、彼の額には汗が光っていた。



――そんな彼を遠目から見ている青年が一人。



「うわー……」

塀の上で横ばいになりながら、シエナはゼファと兵士たちの闘いを眺めていた。

ここからではゼファたちの会話までは聞こえない。

しかし、彼のところでも兵士たちがゼファによそよそしかったことも伝わったし、手のひらを返したように全力でゼファを殺しにかかっているのも見てわかる。

そのおかげで完全にゼファが押されている。


押されているゼファをじっと見つめながらシエナは黙考する。

このままゼファがやられたら一部始終見ていたアッシュも口封じに殺されるだろう。

いや、アッシュは元々殺されるのだから、その予定が少し早まっただけだ。

ゼファが死んだら、アッシュもこのまま死ぬ。



このまま、死ぬ?


過った思考を咀嚼そしゃくする。

そして頭の隅にあったある文章を必死に思い出す。



『××と××様が死んだ。』

『アッシュとゼファ様が死んだ。』



脳裏に甦った一文にシエナは目を見開いた。



『ゼファ様は処刑されるアッシュの悪あがきによる巻き添えを食らって死んだと兵士たちは言っていたが、果たして本当なのだろうか。』



自分の中でどうしてこのように変換されたのかシエナ自身にもわからなかった。

けれども、一度沸いてしまった疑念はもう彼には拭えない。

滅びたアクバールで見た日記の真実が今、彼の目の前にある。



となれば、彼が取るべき行動は一つだけだ。

過去に抗い、運命を変える。

ひっくり返せるのは、もう自分しかいない、



深呼吸をし、ゆっくりと体を起こし上げる。

――まずは、手前の未来からぶっ壊す。

そう心に決めた、シエナは塀から飛び降りていた。

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