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旅路が俺を嫌っている  作者: 葛来 奈都
初っ端から時間旅行

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未来ぶち壊し大作戦 ①

ゼファの横から足音の他にカチャカチャと金属がぶつかる音がした。



音のするほうへ顔を向けると、鉄の鎧と鉄仮面をかぶった兵士が彼らのもとまで歩いていた。

数は三人。全員が重装備で、すでに剣の柄に手がかかっている。

 


ゼファは近づく兵士たちから逃げることなく、ただじっと彼らを睨みつけた。

やがて兵士たちもゼファたちの前で立ち止まる。



「……おやめください、ゼファ様」

先頭に立つ兵士が低い声でゼファに言う。

「自分が今、何をしているのかおわかりなのですか?」



兵士たちはゼファに悟らせるように剣の柄をギュッと握る。

今にも剣を抜きそうであったが、兵士も、そしてゼファも落ち着いていた。



「お前らこそ、誰に剣を向けようとしてるんだ?」

ゼファは目を鋭くさせ、兵士たちを威嚇する。

けれども、その威嚇は兵士たちには無効で、誰も退くことなかった。



「ゼファ様がアッシュを逃がそうとしていることは我々も国王も存じておりました。しかし、罪人を逃すということは決して見過ごせないこと」



「国王様からも『抵抗するなら手段は選ばなくて良い』とおっしゃっておりました。ですが、我々もできれば手荒なことは避けたい。だから、どうかお引き取り願います」



そう言いながらも、兵士たちは腰に差していた剣を抜いた。

彼らの言う『手段を選ばない』というのはこういうことなのだ。



「結局、やる気満々って訳か」

ゼファは鼻で笑いながら、半目で兵士たちを見る。

そして彼らに応えるようにゼファも腰に差した剣に手を伸ばす。

 


いがみ合う彼らの様子にアッシュは目を剥く。

もう兵士たちがゼファに切りかかるのも時間の問題だ。



「馬鹿野郎……早く逃げろよ……」

しかし、ゼファは眉間にしわを寄せたままアッシュのほうに振り向いただけで、何も言わなかった。



だが、彼と付き合いの長いアッシュは気づいていた。

彼にとっては同じなのだ。

友を護って死ぬことも。

友を見殺しにして生きることも。

どちらに転んでも、『死』同然なのだ。

だからこそ、ここで退く選択肢はゼファにはない。



「止められるものなら止めてみろ。俺を殺してでもな」

にやりと笑いながら、ゼファはゆっくりと剣を抜いた。



「ゼファ様……」

兵士の一人はゼファの名を呼ぶ。

兵士たちは彼が死にゆく重罪人のためにここまでやることが信じられないのだろう。

そんな中でも剣を抜いたということが彼の答えだ。



「……後悔はしませんね」

念を押すように訊くと、ゼファはほくそ笑んだだけだった。

つまり、そういうことである。



「構えろ!」

先頭の兵士の声を合図に、他二人の兵士たちは剣を両手に持ち替えた。

しかし、彼らが臨戦態勢に入る前に、ゼファは腰を低くして大地を蹴った。



いきなり距離を詰めるゼファの行動力とスピードに兵士たちは息を呑んだ。

そしてそのままゼファは彼らに突っ込みながら剣を薙ぎ払う。



目にも止まらない速さに兵士たちは全員指一本動かすことができなかった。

だが、金属音が響いただけで兵士たちにダメージはない。

ゼファの剣は鉄の鎧に当たっただけで、兵士たちに傷をつけることはできなかった。

スピードに特化してしまったがゆえに当たりが悪かったのである。



「チッ」と舌打ちをしながらゼファは足を止めて振り返る。

「怯むな! 行け!」

荒げる声と共に一番ゼファに近い兵士が剣を振りかぶった。

だが、ゼファは軽々とその剣を避け、地面を蹴って飛び上がる。



その跳躍力に兵士たちは度肝を抜いた。

高く飛びあがったゼファはそのまま兵士の肩に足を置き、さらに跳躍してアッシュを磔にしている木材まで飛んだのだ。



「相変わらずでたらめな脚力だな……」

呆れたようにため息をつきながら自分の上にいるゼファを見上げるアッシュだが、その表情はホッとしていた。



それでも、彼が不利なことは変わりない。

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