第八十八話 大漁。
プロの海女さんみたいな動きで海底へ落ちていったアリスを追ってもう一度海へ潜る。
テングサはアリスに任せて俺はワカメでも採ろうか。アリス1人でも回収しきれそうな勢いだし。
少し移動してワカメが群生している中に入って行く。波にゆらゆらとその巨体を揺らしながら魚達の住処となっている。
確かワカメって根元があればまた生えてくるよね? 違ったごめんね。
流石に太い茎の部分を水の中でちぎるのは骨が折れるので包丁を取り出してカットして回る。
だいぶ大きいので持ち運ぶのは無理なので仕舞おうと試してみる。するとすんなりワカメは収納されてしまった。
試しに生えたままのワカメで試してみるが上手くいかなかった。切り離せば死亡扱いなのか。
数枚採取して一度空気を求めて上へ上がる。
人間にもエラが欲しい。切実に。
「このペースだとコスパが悪いな。仕方ないけどさ」
ワカメ別にそんなに応用するようなものなんてない気もするし、そんなに多くなくてもいいかな。
それにしても……。
「アリスまだ潜ってるのか。あの小さい身体にどこに酸素を取り込んでるんだ?」
息を整えてワカメを採りに戻る。
後5本くらいあればいいかな。それが終われば次は昆布かアオサ……。後は岩のりも食べたいなぁ。
ワカメを採り終えてアリスの方に泳いで戻る。
アリスは未だに海の中を自由に動き回っている。淡いエメラルドグリーンの髪が神秘的な輝くオーラのように広がっている。
まるで海の妖精だな。もしくはマーメイド? 本人にはどうでも良さそうだけども。
そーいえばマーメイドは居るんだろうか? リザードマンはいるって聞いたけど……。
リザードマンはごめんだけどマーメイドはちょっとだけ会ってみたいね。夜に海から突き出した岩の上でハーブとか弾いているんだろうか?
超音波とか出して人間を攻撃してくる可能性もあるけど……。
アリスが上がってくる様子が見えないので先に外に出る。
「何分くらい潜ってんだアリス……。もう本当に人間か怪しくなってきたぞ」
実はモンスターでしたとかだったらめっちゃ面白いね! 笑い事じゃなくなるけど……。
そんなくだらないことを考えてると目の前から、ぬるりと頭から這い出できた。
出てくる時も凄い変な方法だな……。なんだか影に住んでる人が出てきたみたいな。
「おかえり」
「ん」
「どうだった?」
「大量。採り尽くした?」
「手にはなんも持ってないけど……?」
「持ちきれない。海の底にある」
そう言って下を指差す。
あぁ、なるほど。回収してきますか。
「持ってくるから待ってて」
「ん」
そう言い残してアリスの収穫品を回収に潜る。
海底には3つほど塊のテングサが山のように積まされていた。
これどこから採ってきたの? ここら辺にこんな量あったらここの海は真っ赤になってると思うんだけど。
この世界はアリスといるだけでイージーモードかもしれない。
だいたい家庭のお風呂の浴槽分の量はありそうだ。ここら辺の絶滅しなければいいけど……。
アリスの元に戻って聞いてみる。
「あの量どこから持ってきたの? おかしくない?」
「ここら辺のだけ」
「え? なのにあんなに採れたの?」
「ん」
そんなもんかなぁ? まぁ、多いに越したことはないからいいんだけどさ。
「それじゃ少し探しながら移動して別のところ行ってみよか」
次の海藻を求め、アリスと共に海を漂った。