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第八十話 ニズリさんへ。


「アリスまたパン食べてるの?」


「ん」


「ジャムばっかり食べてたら太るよ?」


「太らない体質」


「健康に悪いでしょーが」


 先日作ったジャムが大変気に入ったようで毎日パンを食べている。

 煮干しにジャムつけて食べさせそうかな。


「出かける時に無くなっても知らないからね」


「いつ行くの?」


「来週くらいかなぁ」


「何回寝たら?」


 アリスの曜日感覚は睡眠回数なのか……。


「あと3回くらいかな」


 正直もういつでもいいんだけど、今日は行くところがあるからね。

 パンを貪っているアリスは置いておいて街へ行くとしよう。


「それじゃアリス。留守番頼んだよ」


「どこいくの?」


「ローゼの屋敷。ってもローゼに用はないからローゼのお父さんに会いに行くんだけどね」


「ん」


 それを聞いて興味が消えたのかまたパンに勤しみはじめた。

 あそこにはアリスの天敵マリーちゃんもいるし知らない人に会いにわざわざいかないだろうとは思ってた。




 門番さんに挨拶を済ませ、屋敷に入ってユナさんか執事長のおじいちゃんを探す。

 こう用事がある時に限って会いたい人に会えないもんだよね。

 そしてそういう時に限ってローゼとかマリーちゃんとかにエンカウントするんだよ。この法則に名前をつけてほしい。


「あれ?」


 そんなことを言っていると廊下の角にローゼとマリーちゃんの姿が見えた。

 何をしているんだろうか?

 バレると面倒なのでそのまま退散しようと思ったけどなんか様子がおかしい。

 気になって近づいてみるが2人はこちらに気づかずにこそこそと進んでいく。


「なんだ?」


 まるで何かの後を尾けてるような……?


「何してんの?」


「えっ?」


「あ、お兄ちゃん!」


「おはようマリーちゃん。それでこれはなにして……」


 話している途中でローゼに口を抑えられて引っ張られる。舐めてやろうか。


「ちょ! 静かに!」


「?」


「ばれちゃうでしょ」


 そう言って目線を先に送る。それを追ってみるとそこにはユナさんがいた。

 お目当てのユナさんが見つかりました。ありがとう2人とも。

 ずっと抑えられているローゼの手を中から舐める。


「きゃっ!? なにすんのユウタ! えっち……」


 えっち要素なんてない。いつまでも抑えてるのが悪いのだ。

 舐められた手を見つめてクンクンと匂いを嗅ぎ出す。


「いやそれは流石に気持ち悪いからやめて……」


 舐めといてなんだけど流石に匂いを嗅がれるのはちょっと……。


「これがユウタの匂い……。マリーちゃんも嗅ぐ?」


 マリーちゃんにも手を伸ばして匂いを嗅がせようとしている。

 その手をはたき落としてデコピンを食らわせる。


「今日のユウタは暴力的だ……」


「子供に悪い教育をするのが悪いのです」


「なんの話かわからないけどお兄ちゃんもお姉ちゃんもユナさん行っちゃうよ?」


 みるとユナさんが次の角を曲がろうとしている。

 いけないこんなローゼなんかに構ってないで目的を達成しなければ。


「じゃあね2人とも。ユナさんー!」


「あっ、せっかく……」


 声に気付いたのかこちらを振り返り歩いてくるユナさん。


「ローゼ達は何してたの?」


「尾行ごっこ」


「帰れ」


 くだらなさすぎる……。異世界の遊びはレベルが低い。

 2人を置いてユナさんの方へ向かう。


「どうしました?」


「ちょっとニズリさんに用があるんですけど、予定って付きますかね?」


「今なら部屋に居ると思いますが……」


「行っても大丈夫なんですか?」


 仕事していたら終わるのを待つしかないけどね。


「大丈夫ですよ。行ってみてください」


「ありがとうございます。行ってみますね。あとユナさん」


「はい?」


「ローゼとマリーちゃんに尾行されてますよ」


 それだけ付け加えて、一礼し先ほどユナさんが曲がろうとしていた角を曲がってニズリさんの元へ向かう。

 これであの2人はこってりとユナさんに絞られるだろう。

 ニズリさんの部屋の扉をノックする。

 するとすぐに声が返ってきたので扉を開けて中へ入る。


「失礼します」


「あれ? ユウタさんじゃないですか」


「こんにちは。前に言ってた奴もって来ましたよ」


「ドレッシングのですから?」


「そうです」


 魚醤と鰹節についでにたこ焼きと2つのレシピを机に並べる。


「これがこっちで作った奴ですか?」


「はい。簡単に作れますよ。一応これがレシピです。たこ焼きの方はみんなに公開してもらっていいですかね」


「私からですか?」


「その方が知名度があるかと。それにニズリさんが出せば領主のから出たものってなりますし、街の文化にもなりやすいでしょう」


「なるほど……。そんなところにまで気を遣って貰ってすいません」


「いえ、自分の為ですから。他の2つはレシピ作り方わからなかったらルネさんかローゼにでも聞いてみてください。それでもダメなら呼んでもらえればまた来ますので」


「わかりました」


「それを伝えに来ただけです。今日は失礼しますね」


 軽く頭を下げて部屋を後にする。

 後は勝手に広めてくれるはずだ。他力本願万歳。


「夕飯の買い物して帰ろう」


 夜は何にしようかな。普通にお肉炒めるだけでいいか。

 アリスは肉なら文句は言わないし。



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