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第七十五話 果物……?


「何を買いに来たの?」


「果物」


「ならこっちだねっ!」


 まだ見ぬお菓子に心が躍っているのか声が少し弾んでいる。

 俺とアリスを置いて少し先を歩くローゼ。

 もう少しゆっくり歩いてくれないかなぁ。急いでもいいことなんてないよ?

 アリスを見習ってほしい。隣でちゃんと大人しくしてるのに……。

 隣のアリスをちらりと見るとそわそわと体を揺らして落ち着きがない。


「ってお前もかい」


「ん?」


「なんでもないよ」


 どうやらここでおかしいのは俺みたいだ。多数決が民主主義なのである。


「アリスはどんな果物が好きなの?」


「黄色くて長いやつ」


「甘くて細長いの?」


 バナナかな。


「そう」


「へぇー。ちゃんとあるんだ」


「こっちでは見ない」


「そうなの?」


「あったかいところに生えてる」


 あ、お店じゃなくて野生に生えてるのをもぎ取ってるのね……。アリスらしいというかなんというか。


「2人とものんびり話してないで早く〜。日が暮れちゃうよ!」


「くれるわけないだろ」


「ん。馬鹿」


「酷い……。私は早く食べたいの!」


「急いでもいいことなんてないよ」


「ユウタはのんびりしすぎでしょ」


 そりゃスローライフですもの。


「はいはい。急ぎますよっと。どこらへんにあるの?」


「そこ」


 ローゼが指したのは2つ先のお店。もう着くんじゃん。そんなに焦らなくても……。


「早く選んで戻ろうか」


 お店に並んだ果物を見て何味にしようかと考える。

 味付きなんて食べたことないから何が外れかわからないな。りんごとかは外れないかな?


「どれにするの?」


「みんな好きなの1つ選んでいいよ」


 とりあえずりんごと桃を買っておくか。ついでにジャムも作っておこう。ここパンしかないから飽きるんだよね。

 買うものを決め、他の2人を見てみらと何故か凄い悩んでいた。


「決めた?」


「1つだけと言われるとなかなか決められないよ」


「迷う」


「そんな深く考えなくてもいいよ……。自分が食べたいものを買いなよ」


「んー。ならこれ」


 そう言って梨を指差す。


「アリスは?」


「ん」


 アリスが指したのは隅っこに置かれた紫色の丸い物体。なにあれ。


「アリス。果物を選んで欲しいんだけど」


「?」


 どうやら意思の疎通ができてないみたいだね。それとも俺がおかしいのか? あれは果物なのか?


「本当にそれでいいの?」


「ん」


「了解。すいませんこれとこれと……これください」


 お金を払って果物たちを受け取って店を後にする。


「他に何か買うものをあったかな」


「串」


「アリスが食べたいだけでしょ」


「ん」


「そんな目で見るなよ……」


 デパートでお菓子を買ってもらえない子供のような絶望と哀愁に満ちた眼差しを向けてくる。

 串だけでそんな顔できるのか? そんなに食べたいのか。

 確かに最近食べてなかったし、ちょっと食べたいかも。


「いーじゃんユウタ。アリスちゃんはお肉食べないと死ぬんだよ?」


「聞いたことないよそんなこと。でもまぁ最近ご無沙汰だし買ってこうか。アリスこれで何本か買ってきて」


 そう言ってアリスに銀貨数枚を手渡す。

 受け取った瞬間、脱兎のごとく駆け出して行ってしまった。


「元気だな……」


「今日のアリスちゃん珍しいね」


「そうか? いつも元気有り余ってる気がするけど」


「あんな表情初めてみたよ人類で初」


「他の動物ではあるの?」


 確かに最近アリスは表情豊かだな。

 人間の心を思い出した獣に育てられた子みたいな? 怒られるから胸に仕舞っておこう。


「ないに決まってるじゃん」


 なにを当たり前なことを言ってるだと言わんばかりにバカにしてくる。ローゼに言われるとは凄いムカつくなぁ。

 仕返しにローゼの頰をつまんでくりくりとこねくり回す。

 隣から文句が聞こえるが聞こえないことにしよう。それにしてもやっぱり肌もすべすべだな。

 暫くローゼで遊んでいるとアリスが帰ってきた。なぜか手には大量の葉っぱ。


「おまたせ」


「おかえり」


「おかえりアリスちゃん〜助けてよ。ユウタ酷いんだよ!」


 くりくり地獄から抜け出すとアリスに飛びつき頬ずりを始める。

 それもやってること少し違うだけで同罪だと思う。


「邪魔」


 そんなローゼを一蹴してお釣りとお肉を手渡してくる。

 銅貨数枚と少し重めの葉っぱの包み。どんだけ買ったんだよ……。


「買いすぎじゃない?」


「お金くれた分」


「全部使えとは言ってないよ?」


「多くても困らない」


 まぁ余ったらとっとけばいいし、そもそもアリスが居てお肉が残ることなんてないだろうけどさ。


「それじゃ串でも食べながらゆったり帰って作っちゃいますか」


「楽しみ」


「私のこと無かったことにしないでよ!」


「あ、まだ居たんだ」


 ぞんざいに扱われたショックから抜け出したのか存在をアピールしてくる。


「そろそろ私でもさすがに泣くよ?」


「ごめんごめん。ほら串あげるから許して?」


「いつも食べ物で釣るなぁ!」


 そういう割には手が伸びてるけど?

 確かに最近みんなローゼの扱いがちょっと雑すぎるから今度少し労ってあげようかな。



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