第七十三話 旅のこと。
「アリスって海みたことあるの?」
前に買った魚で鰹節を作りながら暇そうなアリスに話しかける。
「しょっぱいから嫌い」
「海はしょっぱいものでしょうに」
「でも食材がたくさん」
「魚以外ってなんか食べたりするの?」
「クラーケン?」
「ん?」
クラーケン? どっかで聞いたことある。なんだっけ?
「おおきいヌメヌメした黒いの吐くやつ。昔は苦労した……」
「あ、イカか。イカもちゃんといるんだね」
「あれも食べられるけどあんまりおいしくはない……」
イカなのに? 大きすぎるとやっぱ不味いのかな。地球でもスルメにされたくらいだし。
「どのくらいおおきいの?」
「前に狩ったやつはユウタが10人分くらい」
「デカすぎないすか」
「3日は持った」
「魔物なの? それともそういう動物的な」
「一応魔物?」
なぜに疑問系なの。
「是非とも欲しいな……」
「美味しくなるの?」
「やってみないとわからないけどおいしいと思うよ」
最悪全部スルメにするし。
「大漁に狩ろう」
「密漁じゃん。そんなにたくさんいるの?」
「沖にいけば無限に……」
「でかいのに沢山いるとかどんだけ迷惑なんだよ……」
「冒険者もギルドも海の中だと無理」
「魔法でも使えない限り厳しいのか。それだと船とかも大変そうだけど」
「息しなきゃいいだけ」
そんな離れ業、普通できないからね。アリスはどんどん人間離れしていくね。
とりあえず取り放題なのはわかったので自分の分を確保したらスルメ産業を推進してみよう。
流石にニズリさんの管轄じゃないよね……。
商人を装ってあの貴族に持ちかけてみるか?
海藻系も養殖もして欲しいんだが、やり方が一切わからないよね。ヒモになんか沢山付いてて引っ張りあげてる動画しか見たことない。
「アリス。他にはなんかある?」
「ん……」
「特にないのか」
雲丹に鮑に栄螺に螺貝。海の幸達は食べられていないのか。貴族だけの嗜みかそもそも存在してないか……。
「あとはトカゲ?」
「トカゲは陸の生き物だよ。アリス」
「二足歩行」
……。俺の知識が正しければそれはリザードマンでは? 断じてトカゲではない。いやトカゲなんだけど……。
「喋る……?」
「ん」
「モンスター扱いなの? それともエルフ見たいに種族扱いされてるとか」
「海の底で生活してるから」
「から?」
「人間と絡みない」
なるほど。少し異世界ぽくなってきてる……。そのうち陸対海みたいな戦争か起こったりとかないよなぁ。
「絡みがないのにアリスなんて知ってるの?」
「潜った」
もう何も言うまい。アリスは現代人ではないのだ。地球の基準は捨てよう……。
ローゼが付いて来る前に出発したいけどいつ頃出発しようか。
「初めての旅だから準備しっかりしないと」
「食べ物」
「まぁ全部アイテムボックスだからいいんだけどね。なんか気をつけることかあるのかな」
「たまに魔物?」
「傭兵雇うべき?」
「ん」
ない胸を張って自分を主張してくる。
アリスがいれば十分だって?
「アリスが全部倒してくれるの?」
「ん」
「じゃあその時よろしくね」
アリスなら余裕そうだ。
といっても自転車で行くつもりから逃げられるんじゃないかな。油断は禁物だけどさ。
むしろ魔物なんかよりばれないように考えるのがめんどくさい。夜走ればいいか?
「とりあえず1週間くらいのプチ旅行だね」
行く前に色々とやること済ましておかないと。
とりあえずローゼに畑の面倒を頼むのと、ニズリさんに魚醤と鰹節の話をして……。後はたこ焼きのレシピと機材の公開だ。
帰ってきたらラーメンやりながら子供達を集めてお菓子会をしようか。
「空腹」
「あ、ごめんごめん。お昼何食べる?」
「さっぱりしたの」
さっぱりかー。さっぱりしたやつってパンに合わないよね?
なんちゃって酢豚とかナスの煮浸しとか。
煮浸しいいな。酢豚も捨てがたいが……。
「肉と野菜どっちがいい?」
「肉」
聞くだけ無駄だったね。即答された。
てきとうに鳥をお酢と出汁を使って作ってあげるか。
目を輝かせて待つアリスの横目にお昼ご飯を作り始めることにした。





