第六十四話 しゃぶしゃぶ。
結局先日作ってなかった焼豚とメンマを仕込んでいるといつものコンビがやってきた。
「ユウター! 何作ってるの?」
「焼豚とメンマ」
「なんだっけそれ?」
「ラーメンのトッピング」
「ラーメン! 着々と進んでますねぇ」
なんだその言い方は。
「まだ先だけどね。キースさんもこんにちわ」
「こんにちわ。これ預かってきましたよ」
持っていた箱の中身はたこ焼きプレートだっ
た。
「重かったでしょう。わざわざすいません」
「いえ、ついでですからね」
「ついで?」
「ローゼ様のお守りの、です」
ローゼが聞いたら文句言いそうだなぁ。
「そーいやアリスちゃんは?」
「さぁ? 朝方から出掛けるって言ってどっかに行ったよ。多分森だろうけど」
「そんなてきとうでいいの?」
「いいも何もアリスの強さはローゼも知ってるでしょ」
「それはそうだけどね?」
「それにもともとアリスは森に住んでたんだから大丈夫だよ」
「そうなの!? あんな小さいのに」
「それについては永遠の謎。まぁ気にしたら負けだと思ってるから。異世界だし」
転生転移者の特権。『異世界だし?』で大抵のことは納得できますよ。
「それで、今日は何しにきたの」
「ご飯を作ってもらいに来たの!」
何を当たり前なことを。と当然のように言い切る。
なんか最近ローゼの図々しさが増してないか?
「今日は何持って来たの?」
「海老!!」
「海老あるんだ」
海老フライにでもしよかな? タルタルでも作ってさ。
だけどローゼが取り出した海老はボタンエビやブラックタイガーみたいな海老ではなく伊勢海老のような巨大な物だった。
「大きいでしょ!」
「どうしたのこれ。めっちゃ高そうだけど」
「お父様が近辺の領地の貴族に貰ったんだって言ってた」
「なんでそれをローゼが持ってるの?」
「たくさんあったから勝手に貰って来たよ?」
「何匹くらいあったの?」
そして何匹持って来たのか。
「3匹!」
「ここには?」
「もちろん3匹!」
全部だね。うん。わかってたけど……。
「いいんですか? キースさん。これ」
「良くはないですけど……仕方ないですよね」
あ、これキースさん食べたいから黙認してる奴だね。
ニズリさんがめっちゃ可哀想だ。
「怒られても知らないからね?」
「大丈夫だって。だからこれでなんか作ってよ」
「俺もそんなに暇じゃないんだけどね」
「まぁまぁ。私も手伝うからさ!」
「ローゼにできることなんてなんもないんだけど」
「酷い! なんかないの?」
「なんでもいいの?」
「うん」
それじゃ遠慮なく。アイテムボックスから大量のジャガイモを取り出して床に置く。
「え…?」
「これ全部これですりおろしておいて」
「これ全部……?」
「そう。あ、皮剥いてからね?」
おろし金と一緒にピーラーも置いておく。
ざっと5キロくらいかな。
「これ何に使うの……?」
「片栗粉って言うものを作る」
「大事なもの?」
「とてもとても」
「ならやります……。その代わり美味しいの作ってね」
何だかんだ頼まれたら断れないよねローゼ。
拒否できない女。都合が……。おっとこれ以上はやめてあげよう。
「ただま」
「ん? アリス早かったね」
アリスもご帰宅らしい。海老3匹じゃ全然足りないよねこれ。
「人多い。よかた」
何が良かったんだ? そんな疑問が浮かんだがすぐに納得する。
「獲りすぎた」
アリスから5匹の鳥にを渡される。
「朝から狩りにでかけてたのか?」
「鈍るから」
さいですか。ローゼが便利ガールならアリスは森ガールだな。
「ってもこれ処理からか……」
「俺がやりますよ。何すればいいですか?」
「あ、キースさん。それじゃあこれ全部羽をむしって欲しいんですけど……」
お湯を鍋に入れて鳥を入れてキースさんに渡す。
「こうやって取るんですか。初めて知りましたよ」
「お湯につけると簡単に毟り取れるんですよ。あと羽も別にとって置いてもらっていいですか?」
「わかりました」
人が多いと分担できるからありがたい。
「ん」
アリスが袖を引っ張る。
「どうした?」
「なにする?」
「あーじゃあローゼの手伝いしてあげてよ。なんか可哀想になってきたから」
「ん」
「アリスちゃん〜! ありがと!! 一緒に頑張ろ!」
アリスをローゼに預けて家に入りご飯の用意を始める。
「さて……。海老と鳥か……しゃぶしゃぶにしようか」
とりあえず出汁を引かないといけないんだが。和風はないのです。チキンと煮干しでいいかな?合うかはわからんけど。
鍋に昔アリスから貰った鳥を捌いた時にでた鳥ガラとネギ、香辛料をいれて出汁を炊く。
次にしゃぶしゃぶ用の野菜をカットしていく。ネギに葉物それに前に採ったキノコ……ってこれ分別してないやつだったな。危ない危ない。
アリスを呼んで分別してもらう。
「これこれこれ。他は死ぬ」
死ぬレベルの毒持ちですか?!
異世界転移した俺よりいいスキル持ってるなこいつら!
「危険だから川にでも捨てといてくれる?」
「ん」
「お願いね」
処理をアリスに任せて作業に戻る。
キノコもカットして野菜と一緒に並べておく。アリス絶対野菜食べないよなぁ。どうしたものかな。
伊勢海老擬きを処理して殻から身を外す。もちろん殻と味噌はこっそりといただいておく。いつか溜まったらアメリケーヌでも作ろう。
身を薄くスライスして軽く直火で炙って冷水に当てる。
「美味いなこの海老」
伊勢海老は食べたことないけど、高級な味がします。
別の鍋で煮干しで出汁をとっておく。
鶏ガラを取り出して濾し、煮干出汁と合わせて塩と酒、魚醤を加えてしゃぶしゃぶ用の地を作って鍋に移し替えて温めておく。
「あとはつけるやつか。塩とポン酢?」
ごまドレもあれば申し分ないんだけどゴマがないんだよね。
仕方ないトマトベースのさっぱりしたのでも作ってあげよう。
水とさっき作ったしゃぶしゃぶの地を合わせて、そこに細かくサイコロ状にカットしたトマトを入れて混ぜる最後にごま油を……。
ないんだった。お酢と小葱を小口切りにして加える。
「ここまでくるともう創作料理だよな……」
ポン酢も魚醤とレモンを絞って混ぜて輪切りのレモンをつけておく。
臭いからレモン多めでいこうか。
あとはキースさんが鳥をむしり終われば捌いて終わりなんだけど……。
すると丁度よくキースさんが鳥を持ってきてくれた。
「これくらいでいいですかね?」
見ると綺麗に隅々まで羽が抜かれていた。
キースさん意外に几帳面だったりして。
「ありがとうございます。疲れてなかったらローゼ達の手伝いしてあげてください」
「わかりました。手伝ってきますね」
キースさんにはいつも手伝って貰って申し訳ない。
手伝って貰ってるキースさんとアリスとついでにローゼの為に急いで完成させよう。
鳥を捌いて身と骨と内臓に分けて身以外は全部仕舞い込んで身を全部スライスとぶつ切りにする。
生姜とかがあればつみれとかも作りたかったのだけどない。
何々があったら〜ってのが多すぎる気がする。
具材を全部一纏めにお皿に載せて完成。
完成はしたがどこで食べようか。外の火口で温めながらでいいかな。