第六話 ローゼはお嬢様。
「うるさいなぁもう! 急にびっくりするじゃん。ほら行くよ」
俺の驚きを一喝して屋敷の門をくぐるローゼ。
びっくりしてるのはこっちだよ。なんで教えてくれないんだ。領主の話してたじゃんか!
事態を飲み込めないままローゼの後を追って門をくぐろうとすると。
「おい、待て」
門番に止められました。
いやわかってましたよ?だってもうローゼはだいぶ先にいるし。一人で通れるはずないよね。
「やっぱりダメですかね?」
「当たり前だろう。何故いけると思った?」
「怪しいものじゃないですよ?」
ええ、全然これっぽっちも。
「服装も持ってる物も変だし、屋敷の前で叫び出すしどこが怪しくないんだ?」
ごもっともです。
僕が貴方なら問答無用で衛兵行きですね。
「そこはあそこにいるお嬢様に聞いていただけたら……」
ついてきてないことに気がついたのか、こちらに戻ってきてるローゼを指差して答える。
「ちょっとー何してるの? 早くマヨネーズ作りましょうよ」
「いや、普通にローゼが一緒じゃないと通れないでしょ」
「あぁ、そっか……。ユウタただでさえ怪しいもんね。門番さんこの人私の知人だから通して大丈夫よ」
「は。ですが……」
「あとでなんか言われたら私が言ったって言っていいから」
「……かしこまりました」
「よしじゃあ行くわよ」
「あ、うん」
門番の人に会釈してローゼの後を追う。
可哀想に。ああは言ってもなにかあったら門番のせいになるだろうに。まぁ問題を起こさなければいいだけだし、あの人のためにも頑張ろう。
屋敷の扉を開けて中へ入る。するとすぐにメイドさんが駆け寄ってきた。
「おかえりなさいませ。ローゼ様」
「ただいま。今日の昼食なのだけれど一人分追加しても大丈夫かしら?」
「はい。可能でございますが」
「それじゃお願いしていいかしら。それとお父様達にも知人が一緒に食事を摂ると伝えてもらえる?」
「畏まりました。ご知人というのはあちらのお方で?」
「そうよ。それと……」
凄い。本当にアニメとかで見るような光景だ。メイドさんが屋敷に仕えてお世話してる。
そんな非日常の光景を話が終わるまで眺めて楽しむ。
やっぱりこういうのって異世界の醍醐味だよね? 某借金まみれの万能執事とか居たりするんだろうか。
「おまたせ。行こっか」
「お嬢様も色々大変そうだね」
「代わって欲しいよ」
なんて贅沢な悩みなんだ。
できるなら代わって欲しいこのハードルート。
「口調違うんだね。毎回変えるの面倒じゃないの?」
「これでも一応貴族だからそこら辺はちゃんと体裁があるのー。それともユウタはそういうプレイがお望みかしら?」
お嬢様口調で揶揄うローゼ。プレイってなんだプレイってそんな趣味はない。ないけどはちょっと異世界ぽくて憧れはする。
「遠慮しておくよ。なんか落ち着かないし」
「その方が助かる、本当面倒なんだよねー」
家の中だけど誰かに聞かれたら怒られないのかな。
まぁ形式的なもんなのかな? 深く考えるだけ無駄だし気にしない気にしない。
「ローゼ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」
「なに?」
そう。そんなことよりも重要なことが。
「さっきの話聞いた限りだと一緒にご飯食べるの? 領主様と食卓を囲んで?」
「うん。そうだけどなんか変だった?」
「俺一応身分もクソもない多分こっちで言ったら平民レベルなんだけど。普通におかしくない?」
ここにきてること自体がおかしいんだが。
それはまぁもう過ぎちゃったことだからいいとして、今回は回避したい。
「気にしなくていいでしょ」
そんな気楽に言われてもこっちとしては大問題だ。
「マナーとかなんも知らないよ?貴族ってなに食べるの。コース料理?」
絶対色々聞かれるだろうし。異世界とか説明したら変な空気になるのが目に見えてる。
だからできれば嫌なんだけどなぁ。
「普通に食べればいいじゃん。なんとかなるって。もう言っちゃったし」
少しはこっちのこと考えて欲しいな!!
「諦めなよ。ほらほら、着いたよ早く作らないとお昼の時間になっちゃうよ?」
こっちの事なんてなんも考えてないみたいだ。
ちょっとは気を使ってくれると嬉しいんだけど。