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第四十八話 アリス。


 眼が覚めると病室の天井だった。

 なんてことはなく、石の天井だった。どうやら地球に戻れたりはしてないらしい。

 ゴブリンに連れ去られたのか?


 そのまま手足を動かしてみるがどうやら拘束はされてないらしい。

 起き上がろうとすると身体に痛みが走る。そりゃそうか。あの高さから地面に落ちたんだしな。頭打って死ななかっただけ大の字だ。

 体を起こして辺りを見回すとどうやら洞窟のようだ。

 おでこには何故か濡れた布が乗せてあったし。本当にゴブリンの住処なのか? 誰もいないけど……。まぁ、どっちにせよ逃げるなら今だ。


 出口もすぐそこだし、見張りがいなければ直ぐに出られそうだな。立ち上がろうとした瞬間出口の方で足音が聞こえた。

 くそ……。タイミングの悪い。一体ならなんとか倒せるかもしれない。不意をついてなんとかここから逃げなければ。


 しかしそこから現れたのは1人の少女だった。いや幼女か? そんなことはどうでもいいんだ、どういう事だ? ゴブリンのメスはあんなに可愛いのか。

 淡いエメラルドグリーンの長髪に翠と蒼のオッドアイ。色白の細い四肢に控えめな胸。


 まるで妖精のような美しさを感じた。

 この世界のゴブリンは凄いなぁ。こんなのだったら異種間でも結婚したいかも。しかもオッドアイなんて初めて見たよ! 興奮するね!!

 ローゼとは違った可愛さがあるな。どっちも捨てがたいが……。

 自分の置かれている状況そっちのけで現れた幼女に見惚れてしまう。


「あ、やっと起きた」


 鈴の音のような澄んだ声だ。異世界はスペックが万全だなぁ……。

 幼女はそのままこちらに向かって歩いてきておでことおでこをくっつけだした。

 あの、流石に恥ずかしいんですが……? 顔が真っ赤になる。可愛い子に迫られるのはやっぱり照れちゃうよ。ゴブリンでもね?


「あれ? 熱上がってきた。まだ寝てないと?」


「だ、大丈夫だよ! これは別物だから!」


 不思議そうな顔をして首を傾げる幼女。それも様になってる。ローゼといい、この子といい可愛い子はどうしてなんか距離感というものがないんだろうか……?

 流石に幼女に欲情したりはしないけどさ。


「と言うかこれはどういう状況……?」


「ん? ゴブリンに襲われてて気を失ってたから連れてきた」


 あれ、どうやらこの子はゴブリンじゃないぽい?

 てか助けてくれたってあのゴブリンを殲滅して? 見かけによらず強いんだ。何はともあれ命の恩人だ。


「助けていただきありがとうございます。」


 丁寧に正座をして頭を下げる。

 これと土下座の違いがよく分からないけど何が違うんだろうね。旅館の女将みんな土下座してるよな。こんなこと言ったら怒られそうだけど異世界だから許して?


「たいしたことしてないよ」


 恩に着せないとか性格まで出来てる子だよ。是非うちの子にしたいね?


「それで名前はなんで仰るのでしょうか……?」


 いつまでも命の恩人に幼女幼女じゃ流石に失礼だし。


「名前……? なんだっけ?」


 不思議ちゃん要素までついてるのか?


「自分の名前だよ」


「ん〜? 忘れた」


「それじゃあなんて呼べばいかわからないよ……」


 このままだと幼女に命名されちゃうよ?


「じゃあ、決めていいよ?」


「え?」


「名前。好きに呼んで」


 そうきたか。それじゃあ幼女……。ってわけにはいかんよな。どうしようかなー?

 日本ぽく花子とかとし子とか。ないな。んー、ナイチンゲール? アーサー? ジャンヌダルク? 女の子の名前って難しいな。

 見た目は外人ぽいからそれっぽいのにしたいな。

 よし決めたぞ。


「じゃあ今日から名前思い出すまで、君の名前はアリスね」


「アリス……」


「お気に召さなかったらいいよ」


「ううん。いい名前ね」


 良かった気に入ってくれたみたいだ。

 てかなんでゴブリンに襲われて気を失って起きたら幼女に名前つけてんだろう。わけがわからないよ。

 洞窟の中にお腹の音が響く。そういやお腹減ったな……。


「お腹減ってる? 2日も寝てたもんね」


 え? 2日も気を失ってたの!? そろそろ帰らないと畑が死んでしまう。俺の大切なニンニクと鷹の爪達が。

 その前になんか食べないと力が出ないから焦ってもしょうがないや。


「何食べる?」


 しゃがんで俺に目線を合わせて話しかけてくるアリス。

 何を食べるかはいいんだけどなんで服着てないの?露出が高いなぁ、最低限しか隠してないじゃないか。


「取り敢えずこれあげるから着てくれ」


 フード付きのパーカーを取り出してアリスに投げる。ちょっと大きいかも知れないけど無いよりはましだろう。


「わかった」


 よいしょよいしょ。と可愛い声を出しながらパーカーを被る。

 ファスナー式じゃ無いから着るのちょっと面倒だよね。静電気で髪の毛がぼさってなるし。



「やっぱり少し大きいかな?」


 都会にいる若い女の子みたいな感じになってしまった。あの短パンに裾の長いのを着て、下が履いてないみたく見えるやつ。伝わるかな?


「ん。ちょうどいい」


 ちょうどよくはないだろ……。でもかなり可愛いのは事実だ。ぶかぶかした服装って割と好きなんだよね。萌え袖とかも。

 俺の趣向なんてどうでもいいんだ。とりあえず帰るために腹ごしらえしないといけない。


「つってもそのまま食べるものが串くらいしかないな」


「こっち」


 アリスが腕を掴んで引っ張って外に出ようとする。

 凄い力だな。あの数のゴブリンを倒せるだけはある。俺が弱すぎるだけかもしれないが。


「外?」


「ん、ご飯」


 外には大量ののゴブリン死骸と大きい魚が1匹。


「流石にゴブリンは食べないかなぁ……?」


「硬いし不味いから?」


 そんなクソなのかよ!! モンスターの肉はちょっとまだ抵抗があるな。 オークの肉とかは食べられてるって聞くけど……。


「モンスターよりは動物とか魚のお肉がいいかな?」


「じゃこっち」


 魚を手にとって差し出してくる。

 いや渡されても……。アリスのでしょうこれ。


「なんか作って」


 命の恩人は料理を所望らしい。火口とかどこにあるの?


「火とかないの?」


「熾せばあるよ?」


「いつも何処で作ってるの?」


「生で食べてるから」


 あ、はい。原始的な生活をされているのですね。

 とりあえず火を熾さないと話にならんな。枝を拾うか。

 しゃがみこんでそこらへんの枝や葉を拾って焚き木をする。


「火ってどう熾してるの?」


「枝をくりくり」


 縄文時代の人間かよ……。流石に時間と労力を無駄にはしたくないので火のついた枝を取り出して突っ込む。こっちのが早い早い。


「どっから出したの?」


「アイテムボックス。便利だよ。なんでも基本的には仕舞える」


「生きてるものも仕舞えるの?」


「試したことないなー」


 すると、腕を広げて体を揺らす。


「ん。仕舞ってみて」


 流石にいきなり人間? で試すのは怖いんだけど……。

 でもアリスはもう準備万端で目をキラキラさせている。

 めっちゃ楽しみにしているけどできるかどうかわからないからね?てゆうか無理でしょ。

 モンスターボールじゃないんだから。


「まぁ、物は試しか……。出来ないと思うけど」


 条件を満たすためにアリスの肩に触れる。

 服越しでも柔らかいな。仕舞おうとするがやはり無理だった。


「まだ?」


「いや、無理だったよ」


「残念」


 腕を下ろして肩を落とす。

 そんなに入ってみたかったのか。怖くて俺なら無理だ。


「まぁ気を取り直してご飯にしよう」


「ん」


何作ろうかな?



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