第四話 異世界の必須品美女。
横に座っていたのは同い年くらいの女の子だった。
金髪を赤いリボンで高い位置に1つにまとめ、瞳は綺麗なエメラルド色をしており、華奢な脚をぶらぶらと揺らしている。
「通りすがりの暇な女の子ですよ」
そう嘯いて笑顔を見せる。
こっちにもポニーテールってあるんだな。と、そんなことを考えながら返事をする。
「めっちゃ怪しいじゃんそれ」
「確かにそうかもしれないけど君よりはマシじゃないかな?」
こちらの全身を舐めるように見回して反論してくる。
確かにこの街で一番怪しい人物ってのは自分でも言い切れる。
「そこには目を瞑ってもらえるとありがたいんだけど」
「変な服装だよね?どこから来たの?」
正直に言っても良いのだろうか?でもさっきの子供達みたいにてきとうに、嘘を言っても誤魔化せるような年齢じゃないよなぁ……。
「異世界から来たんだけど、今絶賛ピンチなんだ」
どうせ信じないだろうし、現実逃避の話し相手になって貰おう。
こんな可愛い子と話せる機会なんて滅多に無いだろうし。
「異世界? 聞いたことないや。ピンチ? 何に困ってるの?」
他の転移者とかは居ないのか? それともひっそりと暮らしているのか殺されてるか。
どちらにせよ会うのは厳しそうだけど。
「んー。遥か彼方って事にしておいてくれれば。簡単に言うと無一文で住むところも食べるものも無い」
現実逃避のはずが現実を再確認させられてる。
「そんなに若いのに大変だね。じゃあ何しに来たの?」
暢気な……。こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なのに。
「来たくて来たんじゃなくて気が付いたらここに居た」
「変なの。それでこれからどうするの?」
どうするのかはこれから決めないといけないんだよなぁ。寝たら戻れたりしないかな?
「まぁ、帰るのは諦めるとしてなんとか住む場所とか食べるもの探さないとね」
「無一文じゃん! さっき言ってたマヨレーズ? でも売ってみたら?」
「マヨネーズね。そもそも作る材料がないよ」
「そっか。食べる物からだもんね。でも水は飲み放題だから良かった」
体をひねり噴水の中に手を突っ込んで水を掬う。
冷たっ。と小さく悲鳴をあげ水を戻し、手を振って水を払う。その跳ねた水滴が顔に飛びかかる。
「ちょっと冷たいって。ていうかこの水飲めるの?」
飲める水だとしてもあんまり飲みたくはないんだけど……。
「さぁ? 水だし飲めるんじゃないかな」
この子ってもしかしてお嬢様とか? それか残念な人。小説でも可愛い人って残念な子な事が多かった気がしたな。
「喉乾いてないからまだ大丈夫かな」
このままだと本当に飲む事になりそうだからシャレにならない。
「じゃあマヨネーズ作るしかないね。私も食べてみたい」
「マヨネーズ食べ過ぎたら太っちゃうよ」
「女の子に向かって失礼だなぁ。じゃあさっき子供達あげてたやつちょーだい」
そういう意味で言ったわけじゃないんだけど。でもこの子は少し細いからもう少し食べた方がいいと思うけどなぁ。
「貴重な食料を怪しい人にあげるわけにはいかないよ」
飴1つでどうにかなるわけじゃないが少し意地悪をしてみた。
我ながらこんな窮地に立たされているのに割とてきとうだ。
「えー子供達にはあげてたじゃん」
「あの子達は色々教えてくれたから」
「なら私も教えるよ何でも聞いて?」
「じゃあスリーサイズは?」
見た感じ結構ありそうだけど。
セクハラする余裕まででてきてるし案外なんとかなるかもしれないな。
「スリーサイズってなに……? わかる事にしてよ」
聞いた事がないのか不思議そうに首を傾ける。
言語が全て伝わるわけじゃないのか。少し面倒くさい。なにが伝わって伝わらないのか調べないといけなさそう。
そんなのだいぶ後のことだけどね。身の安全が保障されてからだ。
「わからないならいいや。なら君の好きな男の子のタイプは?」
「一緒にいて飽きない人とか? こんなどうでもいい質問でいいの? 何のためにもならないでしょ……」
ふざけてると思われてるようだ。
だけど重要なことだと思う。可愛い女の子の好みは自分の安否よりも重要度が高い。
……だって割と好みだったからつい。