第二十三話 新生活!住居へ。
「ユウタさん。もう準備が出来ますので支度が終わりましたら馬車に来てください」
買い物を終えてローゼと屋敷に戻るとユナさんが馬車の前に立っていた。
メイドさんが色々馬車に積み込んで大変そうだね。
「わかりました。ありがとうございます」
馬車使うような距離なのか?
思ったより遠いのかも知れないぞ。
「お待ちしてます」
「あ、ユナさんもしかして結構遠いんですか?」
「いえ、荷物が多いので馬車を使いますが街から歩いて20分くらいのところですよ」
良かった。もし遠かったら買い物に来るのも難しくなるからね。
「そういうことでしたか。わかりました。それじゃあ準備してきますね」
買ってきたものをメイドさんに渡して部屋に戻る。
準備といっても荷物は全部しまってあるからこのまま行けるんだけど一旦戻らないと不自然だからね。
「暇な時遊びにいくね〜」
当たり前のようついてきてるけど、ローゼっていつも暇してるんじゃないの?
「結構遠いよ。ローゼにそんな体力あるの」
「馬車使うわけにはいかないかなー。歩くのはちょっとめんどくさいな」
流石に無理じゃないか? てゆうか1人じゃ街とは違って止められるんじゃないだろうか。
街に行くと言って出れば分からないかも知れないけど……。
「ちゃんと誰かに言ってからきなよ」
「もう。子供じゃないんだから」
俺からしたら十分子供だけどね。俺も子供だが。
「はいはい。じゃあ行くよ」
馬車に乗るのなんて初めてだから楽しみだ。お尻が痛くなるって聞くけどどうなのかな。
ユナさんのところに戻ると何故か馬車はなかった。
あれ? 馬車は?
「お待たせしました」
「では行きましょうか」
え、歩き?
「えーと馬車は?」
「荷物でいっぱいになったので先に行きました」
さいですか。もう一台用意しろとか言えないし仕方なく歩くか。
森の中を歩いて行くのかと思ってたけど普通にひらけた道が出来ていた。舗装されてるわけじゃないけど草木を掻き分けて進むよりは数段と歩きやすい。
聞くと馬車を通すためについでに木々を切り開いてくれたっぽい。
何から何まですいません。
「切った木は薪として使ってくださいね。もう見えてきますよ」
家の右側は森に囲まれて左は少し平地になっていて奥には川が流れている。
「おお! 凄いですね!こんなにいい環境とは思いませんでした」
想像してたよりも過ごしやすそうな場所だな。
川も石場でそんなに深くなくて丁度いい大きさだし。
これからここで楽しい異世界ライフを送ると考えると感動だね。
「家の中もご覧になってください。一応普通の家庭にあるものは用意したので確認お願いしますね」
家に入って直ぐに台所のようなところがあり、その右側に一段高くなって一部屋?という造りだ。これで真ん中に囲炉裏でもあったら昔の日本の家みたいだな。
家具は机と椅子が1つずつ。ベッドにクローゼットのみ。
質素だけどテレビとかパソコンとかの電子機器がなくなればこんなもんなのか。
洗濯機はないか………もしかして板で洗うの?
そんな考えを見透かしたのかユナさんは補足する。
「切った木は家の裏に積んであります。洗濯する桶と板もそこにおいてあります」
やっぱり? お婆ちゃんは川に洗濯へ。ってまさか自分でやることになるとは。
でもどうやって干すんだろうハンガーとかあるのかな……紐を通して干せばいっか。
「わかりました。お家もかなりしっかりしてるんですね。普通の屋根があるだけの小屋だと思ってましたけど」
「捕った獲物を処理したり寝泊まりしますからね。最低限の設備はあるんですよ」
なるほど。こっちとしてもありがたい。
「それでは特に問題が無ければ私は失礼しますね。荷物も全部部屋においてますので。鍬とスコップはこちらに置きますね。古い物なのでそのままお使いください」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
馬車に乗って帰るユナさんを見送ってから家に入って荷物の整理を始める。
誰もいないことを確認してからアイテムボックスから本棚を取り出し、持っている本を全部取り出して本棚にしまう。
机に教科書やノート、筆記用具を置いたり。クローゼットに服をしまったり。
食料は結構あるな。保存が効くものばっかりだけどしばらくはもちそうだ。
中を終わらせて外に出て辺りを見回す。
「いいところだなぁ。自然に囲まれて時間を気にせずに暮せるなんて、ネットと時間社会のあっちじゃ考えられないな」
自然の空気を深呼吸してたっぷり吸い込んで伸びる。
さてと、畑の位置でも決めますか。
道から川まで通路を確保して右側に家。左側に畑とか作りたい。川よりのが水とか楽かな?
落ちていた枝で地面に後をつけていく。これくらいの大きさでいいか。横3メートル縦1メートルくらい? これ耕すのは結構骨が折れるな。
「とりあえず鍬で掘り起こすか……」
肉体労働あんまり好きじゃないんだけど仕方ない。鍬を持って先ほど引いた線の内側を耕していく。
初めて使うからどうも使いづらいな。振り下ろして刺さったら引けばいいのか。
地面が固くてなかなかうまくいかないし中腰になるから腰もしんどい。
少し水を撒こう。川から洗濯用の桶に水を汲んできて地面を濡らす。すると先程よりは鍬が入ってやりやすくなる。
「これ何時間かかるんだろう……」
作業を始めてから数時間後漸く範囲内を耕せた。
異世界に来てなんで農作業なんてしてんだろう……。
ファンタジー要素0でしょ。異世界っぽい感じのイベントは起きないものか。
この世界って正直異世界感ないんだよね。
異世界ってより昔のヨーロッパにタイムリープしたって感じがするし。
やっぱり魔法が無いのが痛い。魔王も居ないぽい?
空飛ぶレンコンとか泳ぐトマトとか居ないの?
そんなこと考えても仕方がないか。
「暗くなったら作業しづらいし。電気がないとこういう時に不便だな」
今日はもう終わりにして疲れたから夜ご飯を食べてゆっくり休んで明日から本気だそう。