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第百九話 お肉。


「アリスちょっと手伝ってー」


「ん?」


「これ川で洗ってきて欲しいんだけど」


 ボウルに山ほど積まれたひじきの束をアリスに差し出す。


「またー?」


「前のはテングサだよ。これはひじき」


「やることは同じ」


 単純な作業をお願いしてるんだからそりゃ似たことになるのは仕方がないと思う。


「今回は干さなくていいよ」


「ん」


 その間に火を熾し、汲んできた海水を布で濾過してゴミを取り除く。


 イカを堪能した後、みんなで海で欲しいものをたくさん回収してベルドナード領に帰ってきた。

 4人も居ると集めるのが捗ったから最初からローゼも連れてくるべきだったかも。


「次機会があったら一緒に旅行してあげるかな。流石に可哀想だし」


 鍋に海水を入れてひたすら火にかける。2日くらいはかかりそうかも。


「終わった」


「ありがとう。これも煮ちゃおうか」


 鉄の鍋にアリスが洗ってくれたひじきを突っ込んで水で煮る。


「お腹減った」


「ん、そろそろご飯の時間だもんね。何食べようかなぁ」


 魚介続きだったからお肉が食べたい。アリスもお肉ならなんでもいいだろうし、今日はお肉だな。


「お肉でいいよね?」


「ん!」


 とはいえ、火を使ってるから買い物にもいけない。こういう時にあそこからお肉を持ったローゼが歩いてきたり……しないんだよなぁ。

 まぁ仕方がないか。ストック使えばいいだけだし。買い物もしておかないと……。


「アリス暇ならてきとうに歩いて枝でも拾っといてくれない? これ結構燃やさないといけないんだ」


「んー」


 間延びた声で手を軽くあげながら森の中にのろのろと歩いていった。

 最近アリスを使いすぎてだけど嫌な顔せずなんでもしてくれるな。アリスの嫌な顔とか野菜食べるときぐらいしか見たことないけどさ。


「何作ろうかなぁ……。アリスが喜びそうなもの」


 お肉たっぷりで野菜も入ってるものか……。まぁ、簡単に作ればいっか。

 鳥を棒状にカットして塩胡椒を軽くして片栗粉をまぶして揚げ焼きにする。ネギを細長く白髪ねぎよりも少し太めにカットして水に晒しておく。


 魚醤とレモン汁、鰹出汁に砂糖を混ぜ合わせて揚げ焼きに使った油を少し垂らす。水気を取ったネギと鳥をボウルで混ぜ合わせてタレを満遍なくかけて、最後に胡椒をふりかければ完成。


「にんにくと生姜が欲しくなるな中華系は。あとはごま油か」


 あっちにいた頃はごま油なんてあんまり好きじゃなかったんだけど今じゃ料理にたくさんぶっこむ人の気持ちがわかるかもしれない。


「ラーメン終わらせたらアリスを連れて森に色々探しに行ってもいいかもなぁ」


 タレに使った鰹出汁の余りにワカメと溶き卵を流し入れててきとうな汁物も作る。


「アリスそろそろ帰ってくるかな?」


 庭の海水達の薪を追加しながら、ひじきに水を足したりしてアリスの戻りを待つ。

 後、実は唐辛子がいい感じに成長してきて、このまま順調にいけば収穫できそうなのだ。今後ニズリさんに頼むか畑を自分で少し大きくするか迷っている。


「ん」


 そんな考え事をしているうちにアリスが戻ってきた。


「おつかれ。凄い量拾ってきたね」


「たくさん落ちてる」


「ありがとう。多分これで足りそう」


「なにしてるの?」


「これは塩を取ってるんだよ」


「買えばいいのに」


「こっちの方が旨味が多いんだよ。ミネラルが多分」


 本当に美味しいのかはわからんが、天日してる塩よりは深そうな塩になりそうだし。

 変わらなかったとしても色々とお金かかってくるから少しでも節約になるだろう。


「出来てるから食べよっか」


「ん」


「手、洗ってきてね」


 アリスが川に手洗いに行ってる間に盛り付ける。お肉を少し多めに入れてあげよう。


「ん」


「早いな。ちゃんと洗った?」


「ばちり」


「じゃ食べよっか」


「いただきます」


 いただきます。……うん、油淋鶏をイメージして作ってみたけどだいぶかけ離れてるものになってしまった。これはこれで美味しいからいいんだけど。

 ネギのシャキシャキとした食感に辛さとレモンの酸味で食べやすい。夏にいいかもしれない。


「ネギ多い……」


「アリスのはお肉多めだよ」


「肉の量と増減とネギの量は関係ない!」


「まぁまぁ、これネギと食べた方が美味しいよ?」


 細かく切ってソースに混ぜた方が良かったかな。

 何故か好き嫌いする子供に野菜を食べさせる親の気持ちになれる。異世界は凄いね。


「美味し」


 あれだけネギに不満だったのにお肉と一緒に食べ始めてる……。アリスは食べ始めるまでが嫌なだけか。食わず嫌いともちょっと違うけどそんな感じかな。


「でしょ? 野菜も美味しいんだよ」


「あくまでも肉の引き立て役」


「単体だと食べないと」


「ん」


「子供みたいなことを……」


「でもこれは美味しい」


「今日はよく喋るね」


「ユウタが話しかけてくるから」


 話しかければ喋る子だっけ? 「ん」のイメージが強いんだが……。


「まぁそれほど美味しいってことにしておくよ」


「ん」


 ほらまた言った。


「食べ終わったら街に買い物行こうか」


「いい」


「って言うと思ってた。じゃあ言ってくるから火だけ見ておいてくれる?」


 消えるだけならいいんだけど万が一、火事になったら大変だからね。ホームレスになっちゃう。


「わかた」


 お土産に串でも買ってあげよう。久々に食べたいし海鮮の串もいいけど肉の串がやっぱり美味しいんだよね。若いからかな。

 炭も作って炭火で焼肉もしたい。帰ってきたばっかりなのにやることたくさんだな。



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