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勇者が聖女をモブから寝取るものの様子がおかしい話

作者: ど根性大根




「ごめんね、ロイ。私、勇者様のモノになったの」


 地球から召喚され、勇者となった俺にしな垂れかかりつつ、聖女クレアはそう宣言した。

 いわゆる寝取られ宣言だった。かつて恋仲だった相手に対して、クレアは無慈悲に別れを告げた。

 クレアの故郷に残してきた幼馴染であり恋人だったロイが、顔を絶望に染めて言う。


「う、嘘だろう……? どうしてだ、クレア。僕たちは愛し合っていたじゃないか」


「そうね。でも無理なの」


「なんで、なんでだ。結婚の約束だってしたじゃないか。信じていたのに」


「だって、ロイのは気持ちよくないんだもの。勇者様の方が気持ちいいから……」


 ロイ君の縋るような言葉は、しかしクレアの拒絶によって砕け散った。

 寝取っておいてなんだが、哀れに思えるほどロイ君は無残だった。なにせ男としての性能不足が理由だ。事実、ロイ君の絶望はより深まったようで、声も上げずに涙を流して、その場にへたり込んでしまった。

 可愛そうになぁ、なんて心の中で思いつつ、俺の本心は優越感でいっぱいだ。別の男から女を略奪する征服感は、正直たまらないものがあった。自然と笑いが零れてしまう。


「ははは。いやぁ、悪いなロイ君。クレアを初めて抱いた日から、彼女は俺にメロメロでね。彼女が言うには、キミのモノは全然気持ちよくなかったんだってさぁ」


 哀れみと嘲笑が籠った声を投げかける。

 ロイ君は頭を抱え込み、蹲ってしまった。あまりの絶望に現実を直視できないらしい。だが興が乗ってきた俺に同情心なんてものはなく、むしろ絶望する青年の姿は、さらに俺の悪意をくすぐった。

 そうだ。いいことを思いついた。


「なぁ、クレア」


「きゃん❤」


 クレアが甘い声を上げる。

 俺がクレアを抱き寄せ、その柔らかな身体に腕を這わせたのだ。

 そう。俺が思いついたこととは、ロイ君の眼前でクレアを辱めることだった。

 クレアの思わぬ声にロイ君が顔を上げる。その目に映るのはクレアの姿だ。

 まずは唖然とした表情を浮かべ、次いで懇願するような表情をするロイ君。

 彼の心の声が聞こえるようだった。やめてくれ。こんな光景は見たくない。そう思っているに違いなかった。だが目を瞑ることすら怖いのか、視線はクレアに向けたままだ。


「勇者様、ロイが見てるぅ」


「見せつけてやろうじゃないか」


「やぁん……❤」


 クレアの姿を見せつけて、ロイ君の心を粉々にする。

 ロイ君の性能不足を嗤いながら、クレアの身体を堪能する。

 実にそそるプレイである。せっかく寝取ったからにはしておきたいシチュエーションだった。


 そうしてしばらくクレアの身体を撫でていると、ロイ君の身体に反応があった。

 ズボンが膨れだしたのだ。

 俺は思わず笑った。なんとロイ君はクレアが他の男にいいようにされている姿を見て興奮しているらしいのだ。

 だが彼がどれだけ興奮しようが意味はない。なにせクレアから『気持ちよくない』と明言されるようなモノだ。そんなものを膨らませたところで何ができるというのか。

まさに負け犬にふさわしい姿だった。膨らみきった所で、鼻で笑ってやろうとさえ思った。


「はは、クレア見てごらん。彼は、自分の女が奪われているってのに興奮しているらしいよ。ほらズボンにテントを張らせて……張らせて……はら、せて?」


 けれど、俺の鼻から嘲笑は漏れなかった。

 どころか、一瞬でパニックに陥った。





 ……待て。

 待て待て待て!

 なんだそれは! 聞いてないぞ!





「あら、ロイったら興奮してるの……? 相変わらず、気持ち悪いわ。気持ち悪いくらい、『大きい』わね」





 絶句。

 それしかなかった。





 ロイ君のズボンははちきれんばかりだった。テントというより、もはや塔だった。

 負け犬なんてとんでもない。負けてるかもしれないけど犬じゃない。馬だった。馬並みだった。

 有体に言うとデカかった。





「…………クレア?」


「なぁに、勇者様」


「……その、彼のモノって、気持ちよくなかったんだよね?」


「ええ、気持ちよくなかったわ。本当に……本当に『痛かった』」




 そういう意味かよ。




「だって私の前腕くらいあるのよ? 信じられる? 内臓の位置が変わるかと危惧するサイズよ。おまけに量も濃さも桁違い。5回はベットを買い替えたわ。身体にも財布にも厳しいなんて夫として最低よ」


 俺は自分の中の優越感が急激に萎むのを感じた。

 ロイ君のロイ君はロイ君じゃなかった。ロイさんだった。


「それに比べて勇者様のは最高よ。ロイのに比べて長さも太さも半分以下だし、ロイみたいに10回戦もしなくていいから、気持ちいいまま終われるの」


 ロイさんは俺の倍以上の戦闘力らしかった。継戦能力に至っては二桁というタフガイだった。俺の自尊心がガリガリ削られる音がした。掘削機使われてるんじゃないかと思うくらい感情が落ち込んでいく。

 もはやロイさんの前で俺の聖剣を抜く勇気はなかった。ロイさんに比べれば聖剣(ヒノキの棒)だからだ。ロイさん(魔王)の威容に縮み上がったヒノキの棒は鞘の奥深くに引きこもって戦意喪失していた。俺は地球人だが火星人でもあった。


「ね、勇者様。続きしましょう?」


 クレアがねだるように言ったが、すでに俺はひどく冷静だった。

 ここにきて全ての大前提が覆されたのだ。途中まで面白かったのに結末で台無しになったラノベを読んでる気分だった。


 俺がクレアを寝取れたのは、俺のエクスカリバーがレベル1だからだった。衝撃の事実である。確かに思い返してみれば『気持ちいい』とは言われたものの、『大きい』とか『太い』とかは一度も言われたことがなかった。

 でも分かるか、そんなもん。普通は自分のが大きいと自信を持つだろう。

 確かにロイさんは大きすぎる。クレアの痛いという言い分は正しいのだろう。だが小さいけど気持ちいいよとか言われて納得する男がいるものか。いやいない。


 俺の気持ちは最悪に近かった。

 今の俺は、滑稽としか言いようがない。

 井の中の蛙が大海で溺れ死にかけていた。


「…………」


「勇者様?」


 考えをめぐらす。

 どうすればピエロにならずに、この場をやり過ごせるか。

 答えは一つだった。


 大海に沈む前に陸へと上がり、井戸にダッシュで戻るしかない。




「……ロイ君」




「……え?」


「勇者様?」




「お前は、これでいいのかッッ!?」




 俺は『逃げる』を選択した。

 大魔王からは逃げられないとか知ったことじゃない。こんな所にいられるか! 俺は家に帰る!


「恋人を奪われ、男としての尊厳を踏みにじられて、それでいいのか!? 自分の女を奪われたなら、奪い返すくらいの気概を見せるべきではないのか!? 悔しくはないのか!? それでも男か!?」


「え、ちょ、勇者様なにいって……」


 クレアが困惑しているが無視。


「男ならば立ち上がれ! 男ならば! 奪われたならば! 勝てるか勝てないかではなく、抗わなければならない時があるはずだ! それが今ではないのか!?」


「……クレアを寝取った貴方が、それを言うのですか……?」


「言うとも。自分でも矛盾していると思うがな。俺は勇者であり戦士だ。女を欲するのは戦士のさがであるがゆえに、愛した女は奪ってでも手に入れる! だが! だからこそ! 俺は戦士として、今のお前に文句があるッ!!」


 たぶん人生で一番気迫を込めて声を出している。

 自分でも何言ってるのか分からないし、口調がおかしい気がするが勢いでごまかすことにした。


「男ならば立ち上がってみせろ! 今もクレアを愛しているのなら、その証明を見せてみろ! その女は俺のモノだと、奪い返しに来るがいい!! それでこそ、男というものだろうがッ!!」


「……なぜ、貴方は……。貴方もクレアを愛しているのでは?」


「無論、愛している。だが、愛することと幸せを願うことは別なのだ。未だに魔王軍との戦いは続いている。むしろ激化していると言って間違いない。そんな血で血を洗う戦争に、愛する女を連れていく奴は、それこそ男ではない。俺はクレアに幸せになってほしい。ならば業腹ではあるが! お前に! クレアを! 奪い返させてやる!!」


 腹から声出した。大丈夫だろうか俺。もしかしなくても滅茶苦茶言ってない?


「え? え?」


 案の定クレア混乱してるし。

 急展開に急展開をかさねて着地点を見失ったラノベ読んでる気分だ。

 俺さっきからラノベばっかり読んでんな。


「……分かりました。奪います。奪いますとも! 奪ってやるッ!! クレアぁッ!!」


「え、きゃあっ!? ちょっ、ロイ!? 勇者様!?」


 そして俺の言葉に納得?したロイさんが、クレアに襲い掛かった。

 マジか。上手くいったぞオイ。もしかしたら勇者として民衆を動かすための扇動スキルとか発動していたのかもしれない。

 ロイさんは草むらから奇襲攻撃かましてくるモンスターもかくやといった様相だ。ロイさんのロイさんも戦闘態勢。攻撃ターゲットがクレアに変更されたことを確信して、俺は一歩下がった。


「ではな、クレア。達者に暮らせ。幸せにな」


 そんなセリフを残して、俺は歩き出した。



「ま、まって、ロイ! 本当に無理だから! 裂けるから! 助けて勇者様ぁッ!」


「クレア! クレア! もう僕は止まらないぞッ! 寝取り返してやるッ!」


「まって、タイム! いったん落ち着こう!? 死んじゃうから! 死んだら元も子もないいいいぃぃぃぃいいいいっだああああぁぁ――ッ!?!?」



 後ろでズッコンバッコンすごい音がしてるが、聞こえないふりをする。

 まあ、ある意味これでよかったのかもしれない。少なくともロイさんに恨まれて復讐とかは無さそうな雰囲気だし。

 やっぱり寝取りとかニッチな趣向に走るもんじゃないなと再認識。

 俺は勇者なのだから、エルフとかドワーフとかのテンプレハーレムでいいのだ。



 そう結論して、俺は旅を再開した。





【勇者】

その後、普通にエルフとかドワーフとかのハーレム作った。

最近のなろう勇者は悪役とか邪魔者役が流行ってるけど、昔のテンプレハーレム主人公な勇者も好きだった。


【ロイさん】

ナイスちんちん!


【クレア】

このあと滅茶苦茶子宝に恵まれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] だからと言って人型ゴミが人の女寝取った事実は変わらんぞ馬鹿が
[良い点] ノクターンでもっと詳しく
[一言] 「戦士として文句言う」とか最高すぎるわwwww
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