表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大日本帝国異世界派遣軍  作者: 11月 ミツシ
1/2

♦1♦

 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 王国騎士団に所属する、ダリーは甲冑をガチャガチャ鳴らしながら入り組んだ渓谷を全速力で走っていた。

 渓谷に沿い、右へ左へ曲がる。下は日の光が届かず真っ暗闇でかすかに水が流れるような音のみ流れていた。


 追いつかれる!

 

 彼の脳内では、つい先ほどまで見た光景がフラッシュバックのように映っている。




 王国騎士団で先月入団したばかりだったダリー。生まれつき体が小さく、病弱だった彼はある時魔獣に村を襲われてしまった。

 一家は逃げ出そうと試みるも、失敗。

 魔獣は目の前で、愛する母と生まれたばかりだった妹を噛み殺した。そしていよいよ自分の番だ……。そう思った時だった。

 王国第2連隊に所属していた彼の父親が、自分を殺そうとしていた魔獣を間一髪のところで倒したのだ。

 父は走ってきたのか、息を切らし汗をたらし息子の手を取ると村の外へと連れ出し、父親はそのまま村へと戻り生きている人間を救出しにあたった。

 ダリーは村が一望できる丘の上で唖然としていたところを、騎士団に保護され、詰所へと連れていかれた。

 そこで彼は、自身が天涯孤独になったことを悟った。

 その後は、父方の家に厄介になりつつ、家族を守れなかった悔しさにより王国の兵士になることを決意する。

 だが彼はどうしても入隊することが出来なかった。

 なぜか?

 生まれつき体が小さく、病弱だったため、入隊どころか試験すら受けることが出来なかったのである。

 だが、その日、重い足取りで家に帰るとき、一人の青年が彼に声をかけた。

 彼は自身の騎士団に入団しないか? そう誘う。彼は見ていたのだ、体が小さく試験すら受けられない彼のことを……。そして自身の体験と酷似していることに気が付き声をかけた。

 そして彼は頷き、必死の努力が実を結び、騎士団でも争える力を持つ持ち主へと上り詰めたのだ。

 

 だが不幸は、初任務で突然起こった。

 初任務は簡単、村の近くに出没した魔獣を撃退すること。だが現地に行ってみたら現実とは違った。魔獣どころか魔人や魔族といったレジェンド級の敵がうようよいたのだ!

 初任務という不幸もあり、実戦経験が全くといったなかった騎士団の指揮能力は低下し、逃走する仲間もいれば、必死に抵抗し噛み殺される仲間もいる。

 剣が通用しないほどの硬さを持つ魔獣が、遂に彼の恩人でもあり騎士団へと誘ってくれた団長の男を噛み殺してしまった。

 司令官の失った部隊は敗走に敗走を重ね遂に戦線は崩壊した。

 

 逃げた、残っているもの全員は逃げ出した。

 だが、逃げ出している間に次々と仲間は殺されていく。

 ダリーは全速力で村から離れていく。

 不幸中の幸いだったのは、彼がこの辺りの土地を良く知っていたことだった。それを生かして進む。

 



 こうして今に至っている訳だ。


 「よし! このまま……」


 逃走成功かに見えたその時、彼は行く道を間違えてしまった。

 本来右に行かなければならない分かれ道を、焦っていたせいか左へと曲がってしまったのだ。

 

 ゴオオオォォォ! 

 

 魔獣の集団が彼を逃がすまいと、犬のように利く鼻を使い彼を追いかける。

 行く道を間違えてしまったことに気が付いた彼は、慌てて道を引き返そうとする。だが、気が付くのが遅かった。

 魔獣たちが分かれ道に来てしまっているためだ。

 右はさらに深い渓谷。この先は行き止まり。完全に袋のネズミ状態である。

 

 「ここまで……なのか!? 僕の人生はここまでなのか!?」


 彼はその場にヘタレこみ、目に一杯の涙を浮かべる。

 だが、魔獣は許してはくれまい。何故なら許そうという知能すら持ち合わせていないのだからな。


 「神よ! 僕をお助け下さい! 神よ! 光地の神よ! 僕を……お助け……」


 目をつむり手を合わせ、自身が進行する神に祈った。

 だが、魔獣たちはもう彼の目の前に来ていた。そして次の瞬間……


 パァンッ!


 彼を殺そうとしていた魔獣が、大きな音が鳴ったと同時に、倒れた。

 魔獣たちは一斉に音がした方を振り返る。もちろんダリーも振り向いた。

 そこにいたのは……


 「構えぇ! 撃て!」

 

 木と鉄の何かを持った5人の男たちの姿だった。

 

 パァン! パァン!


 男たちの持っている何かから煙が噴き出し、その瞬間、残りの魔獣たちが倒れ込んだのだ!

 彼は神に感謝した、神が自信を助けてくれたのだと……。

 そして、最後の一体が倒れたのと同時に、彼の意識は遠のいていった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ