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毒持つ淡水魚

作者: ぺんぎん
掲載日:2015/12/13

――淡水魚は毒を持っている。


僕の学校では有名な話だった。


誰が言い出したかなんて分からないけど、そんなことは関係ない。


とりあえず知っていれば、誰にも何も言われないし、笑われない。

それが事実かどうかなんて僕は知らないけど、多分皆知らないんじゃないか。


でも、それがいいんじゃないか、とも思う。


知っているけど、知らないからこそ、生まれる一体感がある。

奇妙な協調性があるからこそ、僕らは成り立っているんじゃないか。


――淡水魚は毒を持っている。


だから、この話はこうして受け継がれているんだと思った。


けど、彼女は言った。


「調べてみようじゃないか、その話」


彼女は外から来た人(転校生)だった。

彼女はこの話を聞くなり、調査しようと言い出した。


ホントかどうか確かめてみよう。彼女は協力してくれる人を捜し回った。


けど、皆彼女の話を断った。彼女は諦めなかった。


あらゆる手を使って、協力者を探し回った。

朝の日課とも言える朝会をジャックして、スピーカーを最大の音量にして大声で、


「調べてみようじゃないか、淡水魚」


 これには皆驚いて迷惑がった。先生ですら、彼女の行動に眉を顰めて、彼女を呼び出した。


「協調性を持って行動しなさい」


 彼女に説教をする先生の声を、偶然僕は耳にした。

それを覗けば、彼女が先生に言い返しているのが見えた。


「だって気になるじゃないですか、淡水魚」

「そんなこと、気にする必要ありません」

「何故ですか」

「和が乱れるからです」

「和が乱れる……。何故ですか?」

「何故って……」

「些細なことなのに、何故和が乱れるんですか? 教えてください」


彼女の質問は尽きることなく、先生達を苦しめた。


やがて、先生達は彼女のことについては匙を投げて放置するようになった。


理由は簡単。

自分達の手には負えないからだ。


彼女が何かしても、何かを言っても、誰も何も言わなくなった。


そのうち彼女も何も言わなくなった。そして、彼女はいなくなった。


親の都合だそうだ。

彼女の存在に頭を悩ましていたから。皆、心の底から安堵した。


彼女がいなくなったことに。


やがて、時は過ぎ、僕らは卒業式を迎えた。皆が涙する中で、僕はふと思い出す。


――淡水魚は毒を持っている。


あの話は結局、何だったのか?


ウソだったのか。それとも、ホントだったのか。


僕らは知らない。知らないまま、卒業した。



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