表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゲームオーバー

作者: 風花

思い付いて一気に書き上げたので、色々辻褄が合わないですが、読み飛ばしてやって下さい^_^;

「いい加減に白状したらどうだ?」

「ほんと、往生際が悪いよね~」

「証拠は揃っています」

「……」


目の前には怒りをあらわに詰め寄るイケメンズ+αがいます。

可憐な美少女を背に庇う姿。

よくある光景ですね。

まるで、乙女ゲームのクライマックス。

詳しくいうと、悪役令嬢を断罪する逆ハーヒロインと攻略対象の姿によく似ている。


「はあ…」


ため息をひとつ。

仕方ないなぁ。

あるものを手に取り、イケメンズに見せた。


「ああっ!お前、いつの間に!?」


瞬きの間に、イケメンズの持っていた証拠とやらは、私の手に渡っていた。


「この教科書、破ったのが私と言うことでしたが」

「!そうだ。お前がマリアの教室から出てきたのは確認している」


汚され、表紙の破れかけた教科書を持つ私を睨む。

噛みつきそうなイケメンだ。


「はあ…。教室なんて、私以外にも出入りしてるでしょうに。私はマリアさんとやらと面識ないし、そもそも教科書だって」


ベキベキ…


「な!?」

「私がやったらこうなります」


団子状に固まった元教科書を軽く投げた。

バコッ


「ぐっ!!」


受け止めようとしたイケメンズの一人が吹っ飛んだ。


「………」

「私が、マリアさんの足を引っ掻けて転ばせたっていうけど」


ちょんっと、隣に生えていた木を蹴る。

バキッ

バサバサ、ザザザザーン

根元から折れた大樹に、イケメンズとマリアが青ざめる。


「ね?私がやったら軽く足が千切れてるし、運悪ければ死んでるって」

「………バケモノ」

「あら?何か言った?」


気温が下がる。

イケメンズの視線が泳ぐ。

何ですか、失礼な態度ですね。

生まれつき運動神経に恵まれていただけです。

マリアが前に出てきた。


「皆、騙されないで!あの人は、アーサー王子と仲が良い私を妬んでいるわ」


また、ワケわかんない事を言ってるわ。

チラリと視線をやると、思いっきり後退りされた。


「っ!…あなた、婚約者に夢中だって聞いたわ」

「ええ。婚約者を愛してるわ」

「それで私に嫉妬し『だから、なんで?』」

「なんでマリアさんに嫉妬するの?」

「だから、私が『ああ』」


マリアはテンプレさんなのね。


「貴女、誤解してるのね。私が、アーサーの婚約者だと思ってるんでしょ?」


そういうと、ビクビクしながら噛みついてきた。


「!…貴女が婚約者の筈だわ。だって貴女はグレンドール家の娘だもの!」

「確かに、私はグレンドール家の娘よ。でもアーサーと婚約なんてしてないわよ」

「な?」

「考えてみてよ。貴女だったら、ちょっとハグしただけで挽き肉になりそうな男と婚約する?」

「……」

「ディアナ。その言い方は酷くないか?」


イケメンズとマリアの後から、男が笑って会話に入ってきた。

金髪碧眼の優男だ。


「アーサー王子!?」

「殿下!」


イケメンズ+αのαことアーサー王子は、実はずっと背後にいたのだが、気付いていなかったらしい。

ちなみに、アーサーは私ディアナの幼馴染みの腹黒様である。

悪趣味にも、幼馴染みの危機を傍観していた。

流石、腹黒様。


「あら?私に抱き付かれて泡吹いて気絶した癖に」

「いつの話してるの。…言わせてもらうけど、君の親愛表現に笑顔で応えられるのは、彼くらいだよ」


彼っていうのが、私の婚約者よ。

いつも私を見守ってくれていて、今も…。

あ、来た来た。


「あれは」

「怪物王子…」


兵を率いて現れたのは、黒ずくめの男だった。


「ロード!」

「ディアナ。無事か?」

「ええ」


隣国の王族である彼は、少年とは思えぬ長身に、鍛え上げられた鋼のような肉体を持っていた。

その威風堂々たる姿は、温室育ちの少年少女には受け入れがたいようで、影で怪物王子と呼ばれている。

怖じ気づく周囲を尻目に、私は彼に飛び付いた。

数時間ぶりの感触にホッと体の力が抜ける。

らしくもなく少し緊張していたらしい。

元々、国王が王太子の資質を試すためアーサーを学園の理事に据えたのが始まりだった。

私達は、アーサーに頼まれ、学園運営の手伝いをしていた。

そして、今朝、私の元に差出人不明の手紙が届いたのだ。

最近悪意溢れる視線にされされていた私は、直ぐロードに相談し、学園執行部の横暴な行為が目に余り粛清のタイミングを思案していたアーサーが加わった。

ロードは優しい瞳で私を見つめ頭を撫で、そして抱き上げ肩に座らせてくれた。

じっと見つめ会う。

二人の世界を作っていたら、少女の叫び声が響いた。


「そんな、おかしいわ!学園にあなた以外のグレンドールの人間はいなかったし、ディアナはアーサー王子の婚約者の筈よ!」


忘れていた…。

さっさと引導を渡して、茶番を終らさなきゃ。


「…誰が誰の婚約者だと言った?」

「ひっ!?」


あ、まずいわ。

怒ってる。

ロードに睨まれ、マリアが金縛りにあったように動かなくなった。

続いて、ロードの眼光がアーサーを貫く。


「アーサー…。お前、ディアナに手を出したのか?」


殺気の籠った視線をものともせず、アーサーは呆れたというように溜め息ついた。


「ロード。君まで彼女の戯言を真に受けるのやめてくれよ。私は婚約者一筋だよ」


君と同じでね。

と、王子様スマイルを浮かべるアーサー。

ロードはじっとアーサーの目を見つめた後、頷いた。

殺気から解放されマリアが座り込む。

私はロードの肩から飛び下りると、マリアの前にしゃがみ込んだ。


「貴女が信じられなくても現実は現実よ。そもそも、アーサーは王太子よ。その婚約者が、有象無象が集まる学園になんか来る筈ないわ」

「な!?」

「まあ、そうだね。現に役員連中は色香に惑わされてたしな」

「アーサー王子!?…わ、私は惑わしてなど」

「そ、そうです。私達は別に」

「あ~、別に貴女達の関係は問題じゃないから」

「ああ。まあ、確かに女一人に複数でっていうのはどうかと思うけど、今まで決まった相手のいなかった君達だ、周囲も温かい目で見ていてくれるよ。ただ、愛する女性の為とはいえ、職務放棄と越権行為は見過ごせないな。元々この学園設立は、平民を貴族と同位の教育を施し国力を上げる事が狙いだったけど、こうなると、運営方法を改めないといけない。現行では、クーデターを引き起こす危険性もある」


そういう意味では、今回のマリアとイケメンズは学園運営における問題を浮き彫りにしてくれた。

私達、運営に携わる側からしたら、感謝感謝だ。


「殿下、クーデターなど誤解です!」

「そうです。私は、あなたをお慕いして」


アーサーがため息をついた。


「マリア、君は初めて会った時から私に好意をよせてくれたね」

「王子…」

「そんな君に聞きたい。数多の女性を侍らせた男に、唯一だと愛を囁かれてどう思う?君はその男の愛を信じるかい?」

「…」

「私は、虫酸が走ったよ」


瞳をキラキラさせてアーサーを見ていたマリアの顔が固まった。

想像した事がなかったのかしら?

どういうつもりで、逆ハーレムを築きながらアーサーに迫ってたのか分からないけど、男を侍らせてる時点で、そんな女、まともな男は相手にしないわ。


「さて、学園を混乱させた罪は、償ってもらうよ?

…大丈夫。君達を引き裂くような無粋な罰は下さないから。そうだね、学園追放と監視がつくくらいの軽いものだろうから、安心して」


麗しの王太子殿下は、ニッコリ笑って引導を渡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ