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04『魔物の王』

 サギタの小屋を訪れた翌日。

 その早朝、少女は教会からひとり抜け出した。


 こんな時間に脱走しては、確実にばれてしまうだろう。

 ――大目玉、ではおそらく済むまい。軟禁は監禁にその束縛性を上げるだろう。

 だが構わなかった。

 たとえ最低限の自由と引き換えにしてでも、少年を助けられればいい。

 少女は、心からそう思っている。


 町外れまで走ると、シール――勇者はすでに待っているところだった。

 昨日と変わらない剣一本の簡素な格好。だが聖剣が纏う、濃く強い聖性の気配を感じれば、それが彼にとっての臨戦態勢なのだと知れる。

 まあ、戦う人間には、あまり見えないことは事実だったが。

 これで伝説を継ぐ聖剣の勇者だというのだから、まったくわからないものだと思う。


「――なんか、出会い頭にいきなり失礼なことを考えてない?」


 そう、勇者は出会い頭にいきなり失礼なことを言った。

 少女はすっと目を細めて答える。


「別に何も。そんな話どうでもいいから、早く行きましょう」

「……一応は聖女なんだから、もう少しお淑やかにしたらどうだい? 被っていた猫はどこへ捨てたんだ」


 すでに《一応》を躊躇いなくつける勇者。

 自分で言う分には構わないが、他人から言われると少女も腹が立つ。


「貴方こそ本当に勇者なの? 役に立たなかったら置いてくわよ」

「……本当にもう……」


 呆れたような勇者。返す言葉もないという風情だ。

 ――勝った。

 と少女は思った。その意を勇者は表情で悟ったらしく、溜息をひとつ大きく零す。


「……はあ。まあ気負いがないならいいさ。行こうか」

「ええ」

「でも聖女ちゃん」

「聖女ちゃん、って……」


 呆れる少女に、勇者は構わず続けた。


「最低限、取り決めだけはしておこう」

「取り決め……?」

「ああ。魔物との戦闘は避けられないからね、そのための取り決めだ」


 歩きながら勇者は語り出す。少女はその背を追った。

 歩幅の差から、本当なら勇者のほうが歩く速度は速いだろうに。

 余裕を持って並べるだけの速度を保つ辺り、慣れている感じで腹が立つ。


 ――そう。

 少女は、どうしてか勇者が苦手だった。


 奇妙な抵抗がある。まるで互いに磁石の同じ極同士であるかのような、言語化できない奇妙な隔たりだ。

 少年のことを考えなければ、きっと少女は勇者からの助力を断っていただろう。


「といっても別段、特別なことは必要ない。戦闘は基本的に僕がするから、君は僕の少し後ろをついて来てくれればいい」


 勇者はそう、軽い口調で言い切った。

 不遜、とは思わない。だが納得できず少女も言葉を返す。


「……馬鹿にしてるの? わたしだって戦える――」

「別に、馬鹿にはしていないさ。その辺りの魔術師より、聖女ちゃん、君のほうが強いだろう」

「だったら――」

「でも僕は、そんな聖女ちゃんよりさらに強い」

「…………」


 聖剣の勇者の言葉である以上、反論なんてできなかった。

 単独で一軍を、才ある者なら一国さえ落とすとまで称される歴代の勇者。

 その一角に名を連ねる男は、文字通りに《最強》の体現である。

 彼以上の騎士など、世界のどこを探したって存在するまい。


「――会ったばかりじゃ、連携も上手く取れないだろうからね。基本的に見ていてくれれば構わないよ」

「援護も要らないってこと?」

「するな、とまでは言わないけれどね。必要だと思ったら手を出してもいい。ただし絶対に、僕の背中からは出ないこと」

「そんなこと言って。もしあんたより強い魔物が出たらどうするの?」

「そのときは――」


 そこで勇者は言葉を切って、それから笑ってこう言った。


「――僕も君も、そこで死ぬしかないだろうね」



     ※



 狂笑が森をつんざき、生い茂る木々を震わせる。

 ――魔物とは装置だ。ただヒトを殺すためだけに存在する殺戮の装置システム

 魔物はヒトを襲う。魔物はヒトを喰う。魔物はヒトを害す。魔物はヒトを殺す。

 しかし、それ以外には何もしない。

 そこに感情はなく、意思はなく、意味もなければ価値も理由も何もない。

 ただそこにそうある(丶丶丶丶丶丶丶)というだけで、魔物はヒトを殺すのだ。

 地震や竜巻と変わらない。

 言うなれば、そういう天災なのだから。


 ――だが。

 そんな、世間で囁かれている言説を、そのとき少女は嘘だと断じた。

 絶対にそんなわけがない。

 魔物は、ヒトを殺す行為を愉悦として感じている。

 笑うようにあぎとを開き、狂うように濡れた牙を見せる魔物を目の当たりにして、少女はそう強く確信した。

 殺されるのだと、そう思った。


 その考えを両断したのは、暗闇の底を走る一陣の銀閃だった。

 邪悪な、黒い狼に似た魔物の身体を、聖剣の軌跡がなぞり抜ける。

 その一撃で、魔物は肉体を真っ二つに斬り裂かれ、魔力の粒子となって空気へと溶けた。

 呆気ない幕切れだった。


「――うん。想像してたより、数が少なくて何よりだ」


 聖剣を振るい、魔物を屠った勇者が、得物を鞘に納めて小さく零す。

 呆気に取られていた少女は、そこでようやく元の冷静さを取り戻していた。


「つ、強いのね……」


 思わず感嘆したように少女は零す。

 認めるのは癪だったが、勇者の強さは少女の認識を超えていた。

 あるいは、魔物よりよほど化物ではないかと感じられる。


「まあ、この程度の相手ならワケないかな」


 誇るでもなく、勇者は淡々と口にする。


「この程度って……正直、私は今、死んだかとさえ思ったのに」

「初めて魔物を見た人間は、誰でもだいたいそうなるよ。……見たことないんだろ、魔物」

「まあ、そうだけど……」

「魔力で構成されているからね。その威圧を、根源から喚起される恐怖を下すには慣れが要る」


 その言葉だけでも、この勇者がどれだけの死線を潜り抜けてきたのかが知れた。

 ――本当に、本物の勇者なんだ。

 わかりきっていた事実を、少女は改めて、今度は実感を伴って認識した。


「ま、二戦目はたぶん大丈夫だよ。ようは気の持ちようだから」

「……もちろん。わたしだって戦える」

「それに越したことはないさ。――最強ゆうしゃが別に、絶対に勝つわけじゃない」


 そう、最後に付け加えるように零す。

 少女に告げたというよりは、思わず口をついて出たかのような言葉だった。

 そこに突っ込むのはなんとなく躊躇われた。別に興味も、まあないと言えばない。

 だから代わりに、少女は別のことを問う。


「その勇者が、どうしてこの町に来たの?」

「うん? ああ、昔の友人に会いに来ただけさ」

「友人って……サギタ?」


 首を傾げる少女に、勇者は楽しげな表情で頷いた。


「ああ。昔の同僚というか、戦友でね。あいつより弓が上手い奴を、俺は見たことがないよ」

「……そんなに凄いヒトだったんだ」


 少女は思わず目を丸くする。

 腕のいい狩人だとは聞いていた。弟子である少年から、その実力を何度も聞かされていた。

 だが、まさか勇者に一目置かれるほど名うての弓使いだとは知らなかった。


「弓兵サギタといえば、この国で最高の弓使いの名前だよ。もっともそれより、僕はお茶汲みの才能を買うけれどね」

「……サギタにも、ついて来てもらえばよかったかな」

「それは無理だ。サギタは森に入れない。いや、入れなくはないけどね、魔物は殺せない」

「どうして……?」

「そういう契約を自身に課してるのさ。でも魔物はお構いなく攻撃してくるからね」


 ――もっとも、それだけじゃないけど。

 意味深にそう語る勇者だったが、これ以上を語るつもりはないようだった。

 だから少女も、その先を深く追求はしない。

 代わりに問いを変更する。


「元から森に入るつもりだって、昨日言ってたけど」

「あー、覚えてたの、聖女ちゃん。参ったな……」

「その呼び方やめてってば。……それで、どうして魔の森に? 入る意味なんてないでしょう」

「ま、ちょっとした野暮用がね。別段、大したことじゃないから。気にしなくていいよ」


 この話題もまた、勇者は詳細に語るつもりがないらしい。

 何を訊いても秘密主義で、なんだか話が続かない。

 困ったところで、ふと後方から、何か大きな気配が近づいてくることに少女は気づいた。

 その少女よりも先に感知していたらしい勇者が、軽く肩を回して気負いなく呟く。


「さて――二体目が来る。後ろからだ、位置を変えよう」


 言うなり少女を庇うように後方へ回った。

 足を引っ張り続けるつもりはない。

 今度こそは戦おう、と少女も決意の言葉を作る。


「次は私も戦力になるから」

「さてね。それよりは、周囲を警戒してくれてたほうが助かる。囲まれると面倒だ」

「……でも」

「大丈夫だよ」


 見るものに安心感を与える笑顔で、勇者は少女に振り向いて告げた。


「――たぶん一撃で終わるからね、聖女ちゃん」


 自信や自負ではなく、単に事実を述べる勇者。

 彼に対し、少女はただ唇を尖らせて答えた。


「だから。その呼び方むかつくから、名前で呼びなさいっての」


 勇者は笑って、そして無視した。



     ※



 それから数度の戦闘の中で、少女の出番などまったくなかった。

 一度だけ、二体同時に魔物が現れたときに、攻撃用の魔法を放ったくらいだ。

 それも躱されてしまっていたが、前衛の勇者にとっては充分な隙だったのだろう。


「お陰で楽に斬れたよ」


 そう笑う勇者だったが、少女の牽制などなくても勝利しただろうことは確実である。


 そのままふたりは、奥へ奥へと歩みを進める。

 ――森の深部へ進めば進むほど、魔物は強くなっていく。

 そんな言葉を聞いたことがある少女だが、いずれにせよ勇者が一撃で倒していくのだ。正直、魔物の強さなんてちっとも理解できなかった。

 それだけ強いのなら、昨夜のうちから森に入ってもよかっただろうに。

 そう告げる少女に、けれど勇者は首を振った。


「魔物は、夜になると魔力を増すからね。戦うなら昼がいい」

「大して苦労してないじゃない」

「魔物を舐めちゃいけない。一撃で倒しているのは、一撃で決められなければこちらが反撃を受けて死ぬからだよ。別に楽なわけじゃない。驕る気持ちがあるのなら、それは捨てるべきだ」

「……そんなことは、ないけど」

「ならいい。ただ覚えておいてくれ――楽に済んで理由は三つある。ひとつは魔物が総じて弱いこと。ふたつは数が少ないこと。要するに運だ」


 そこで勇者は、考え込むように片手を口許へやった。

 難しい表情を見せて、俯くように顔を伏せる。


「――そう。おかしいよな……この規模の森なら、もう少し魔物が強く、多くてもいいはずだ。なんでこんなに……」

「……よくわからないけれど、いいことなんじゃないの?」

「普通ならそうだ。でも引っかかる……僕は基本的に運が悪い。こう運がいいのは、何かの裏返しのような気がしてならないよ」

「何それ」


 勇者の口から『運が悪い』などという台詞が聞けるとは思わず、思わず少女は吹き出した。

 さすがの勇者も、少しむっとしたように眉根を寄せる。


「……別に笑うことはないだろう」

「ごめんなさい。でも、そうね――きっとアエルが倒したのよ」

「森に入ったという彼がかい?」

「アエルは強いもの。きっと先に入ったアエルが、魔物の数を減らしたんだと思う」

「……そうか」

「アエルは弓の名手よ。どんな的でも百発百中なんだから。サギタは私のほうが才能がある、なんて言うけど、本当はそんなことないもの」

「だと……いいんだけどね」


 勇者は、納得していない表情で呟いた。



     ※



 そしてふたりは、森の最奥に辿り着く。

 ――そこには、一本の真っ白な樹が生えていた。血のように赤い果実を実らせた、それは魔力を帯びた樹だ。

 勇者が、さすがに驚いたように目を見開いた。


「……驚いた。この森には魔樹があったのか」

「魔樹……?」

「ああ。僕も見るのは初めてだ。なるほど、魔物が少ないわけだよ」


 真っ白な樹の幹に、勇者はそっと手を触れて呟く。


「この樹が、森の魔力を吸い上げてるんだ。魔物は魔力から生まれるからね。樹の養分として吸われている分、魔物が少なくなるのも頷ける」

「ちょっと。ひとりで納得してないで、説明してよ!」

「――あ、ああ、すまない。だが君も聞いたことくらいはあるだろう?」


 ちょっと狼狽えて勇者が言う。


「果実が生っているのが見えるね。――赤い、血のような果実が」

「そうね。なんだか、少し気味が悪いけど……じゃあ、これが」

「そう、魔法の果実だ。強い魔力が籠もっている」

「魔力……魔法の果実だったの?」

「ああ。単純に魔法の媒介としても優秀だが、何より齧ったときにもたらされる魔力の量が凄まじい。一説には、食べると不老不死になると言われているが――」


 そのとき、幹の近くに落ちていたものを見つけて、少女は咄嗟に声を上げた。


「あ、あれを見て!」

「――何?」


 少女は勇者の反応を待たず、見つけたもののところへ駆けて行った。

 ――幹から少し離れたところ。

 そこに、一本の小刀ナイフが落ちていたのだ。

 見覚えのある小刀だった。少女が、その持ち主を間違うことはない。


「間違いない。これ……アエルのだ」


 やはりこの場所までアエルは訪れていたのだ。

 森の魔物にも負けることなく、少女のためにこの森まで。

 少年の痕跡を見つけ、弾かれたように喜色を浮かべる少女だったが、そこではたと気づく。


 ――なぜ、この場所にアエルの小刀ナイフが落ちているのだろうか。


 よもやこの魔窟で、武器ナイフを捨てる理由などないはずだ。

 まだこの近くにいるのだろうか。小刀を置いて、休憩でもしているのだろうか。

 不吉な想像を振り払うため、少女は甘く救いのある想像だけを思う。

 最悪の想像なんてしたくなかった。そんなはずは絶対にないのだから。

 ――アエルは必ず生きている。

 少女は強く思い込む。それは言い換えれば、視界を塞ぐ行為にほかならなかった。

 だから、気がつかなかったのだ。


 ――自らへ向かって襲い来る、大きな黒い影の存在に。


「危ないっ!」


 そんな言葉が耳を貫くと同時、少女は咄嗟に突き飛ばされていた。

 軽い身体は、少女の意思に反して容易く飛ぶ。そのまま地面へと倒れこみ、咄嗟に少女は怒りから叫ぶ。


「何するの――」

「そこから動くな、下がってろ!」


 だが少女の怒声は、それ以上の大きさを持つ勇者の声にかき消された。

 自分を突き飛ばした下手人である勇者の、けれど今までとは完全に違う様子から、少女は逆らう言葉を失った。

 ――見てしまったのだ。

 勇者の剣が、いつの間にか現れた巨大な魔物の一撃を防いでいるところを。


「ま、魔物……!?」


 どこから現れたのだろう。その気配に、少女はまるで気づかなかった。

 ――醜い魔物だった。

 四肢を持ち、二足歩行する巨体。それだけならば熊か何かと思うところだが、魔物の肉体は、もはや生物を模したなどととうてい信じられないほど醜悪に歪んでいる。

 まるで焼かれたかのように爛れた肌、ところどころが泡立つように盛り上がった歪な肉。ときおり肉体が内側から爆ぜるように崩れては、その矢先から新しい肉で埋められていく。


「ル――ノ……ッ!」


 魔物が醜悪な叫びを上げた。言語としてさえ成立しない、ただただ意味不明の叫び。

 生と死――。

 命に定められた絶対の循環を、冒涜するような魔物だ。

 びちゃびちゃと汚い粘性の唾液が、裂けた口角から漏れている。盛り上がった肉の中に窪んだ眼窩からは、血の涙が滂沱の如く流れていた。金属みたいな光沢の骨が肉を突き破って外側から見えており、ぶちゅぶちゅと不快な音を立てながら崩壊と再生を繰り返している。


 ――気持ち悪い。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。


 少女は根源的な怖気に硬直する。

 初めに見た魔物など、これと比べれば子ども騙しだ。

 それは、見るものの生理的嫌悪感を、ぎざぎざの卸し金で逆撫でするような概念だった。

 決して目にしてはならない、そういう類いのモノだった。

 そう、モノだ。これは単なる物体に過ぎない。


 これが生物であるなどと、認めていいはずがない――。


 勇者が、掲げていた剣を振るう。

 ヒトの域を超える膂力が、聖剣の加護を受けて魔物の巨体を押し返した。


「シ、シールっ!」


 思わず少女は、勇者の名を呼んだ。

 この不快という概念を魔物の形に押し込めたかのような存在でも、勇者にかかれば倒せるだろう。

 そんな期待を込めた声だ。


「――逃げろっ!」


 だがそんな淡い期待は、切羽詰った勇者の声で掻き消される。


「ど、どうして――」

「駄目だ! こいつだけは駄目だ――君を守りながらは戦えない! こいつはこの森の王だ!」

「森の王……」


 少女は頷けない。目の前のソレ(丶丶)が、王などと威厳のある呼び名に相応しくは思えないからだ。

 ――森の王。

 すなわち、この魔の森を統べる魔物たちの頂点。

 最強の勇者にさえ伍する、あらゆる魔物の中で最強位に連なる存在。

 ――魔王。

 それが、目の前の魔物だというのだろうか。


「ン――、ル――ッ!」


 森の王は、まるで何かを求めるように、悲痛で醜い声を上げ続けていた。

 勇者は少女を振り返らず、王を見据えたままに叫ぶ。


「走れ! ひとりで森を抜けろ!! 君の実力なら、逃げに徹すればほかの魔物じゃ手出しできない!」

「そ、そんなこと急に言われても――」

「心配なら果実をひとつもいで行け、それくらいの隙は作る! 魔法の媒介にすれば、普段より速く走れるだろう! ただし齧るなよ、その使い方は違うからな!!」

「…………っ」

「何してる、早く行け――ッ!」


 言葉と同時、襲い来た魔物の巨体を勇者は蹴り返す。

 まるで魔物と少女の距離を開け、彼女を庇うかのように。

 その姿を見て取って、少女は咄嗟に踵を返す。

 今の少女がこの場にいたところで、勇者の足を引っ張ってしまうだけだ。


 だから、少女は走った。

 踵を返して、白い魔樹のほうへと向かう。


 その背後からは、けたたましい闘争の音が聞こえていた――。

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