よくばり夫婦―貪欲の代償―
「おまいさん、さっき稲荷神社の前を通ったら、お狐さんが何でも願い事をかなえてくれるお札を一枚くれたよ!」
「おー、それはよかった。じゃ、早速うちを新築にしてもらおう」
「えー、あたいは子供が欲しいなー」
「お前、もう歳なんだから、子供ができても育てるのは無理だろう」
「そうねえ、じゃ、せめて犬の赤ちゃんが欲しいなぁ。今飼っているハナに子供ができるといいなぁー」
「でも、うちを新しくするのが優先だろう」
「えー、でもお札をもらったのはあたいだよ」
「うちの新築と犬の赤ちゃんのどちらかって言えば..」
「いいことを思いついたよ」
「なに?」
「まあ、見ていてご覧なさい」
「え、なに?お札に向かって何をお願いするんだ?」
「お札さん、二つになりなさい」
「おっ、札が二つになったな」
「じゃ、それぞれにお願いをしましょう」
「家が新築になーれ」
「ハナに子供がでーきろ」
「おお、家が一旦消えて素晴らしい壁がどんどんできている」
「あ、ハナのおなかがどんどん大きくなっている」
そうして、できた新築の家には立派な壁があったが、屋根はできなかった。
ハナが生んだ子犬には立派な足と胴体があったが...