幕間3-2
周囲のどこを見ても、あるのは似たような外見の建物ばかり。梓が子供のころから変わってなさそうな建物ばかりだ。
これではどれがどれだか、分る筈が――。
「……」
要は、足を止めた。
急に目の前に、空き地が表れたからだ。
草も茫茫、伸び放題。よく目を凝らせば、雨に驚いて飛ぶ虫の姿さえ見える程だ。そこの周囲に建っているのが、やはりよく似通った家々であることが、その空き地の違和感をより一層強めていた。
懐からメモを取り出し、書いてある地名を看板と照らし合わせる。寸分違わず、同じだった。
つまり、ここが。
一歩踏み込むと、足元で何かが折れる感触があった。見ると、緑色の細い棒状のものが砕けていた。
「こいつは……」
しゃがみ、摘まみ上げて、しげしげと眺める。大して考える必要もなく、正体は分った。
線香だ。だが何故、ここに。
要は立ち上がって辺りを見回すが、見えるのは草ばかり。
再び線香に視線を移す。 雨のせいか、それとも年月を経ていたのか、線香は湿気ってだいぶ柔らかくなっていた。燃え残りのようで、片方の端が黒ずんで焦げている。
ここに何故、線香の燃え残りが。一体、ここで何があったのか。
この、住宅地のど真ん中にある、野原で――。
と、その時。
「あら、どなた?」
背後からの声に振り向くと、そこには老婆が立っていた。
顔には訝しげな表情。灰色の風景に溶け込んでしまいそうな黒い傘に黒い服で、それ故か、手に持った花の白い色が、目に刺さるほど鮮やかに見える。
要はその花の名前を知っていた。菊だ。
黒い服に黒い傘に菊とは、まるで。
――葬式か?
突然で申し訳ないのですが、これからしばらく不定期更新とさせていただきます。
とはいえ、少なくとも週に一回は更新する予定ですので、どうか変わらぬご愛顧を、よろしくお願いいたします




