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幕間2-3

幾らなんでも、この結果は異常だ。端くれとはいえ、要も『プロ』である。この稼業を始めて一か月やそこらの素人に毛が生えたような存在ではない。情報を手に入れるための繋がりだって、いくつも持っている。

であるというのに、成果を出せなかったのだ。

とはいえ、調査が難航することは受けた時点である程度予想済みだった。その探すべき家族の名前も、それどころか苗字すら教えてもらえなかったのだから。

普段の要ならば断わるか、さもなくば考えさせてほしいと返答していただろう。が、この件ではそうした手段は採らなかった。いや、採れなかったというべきか。

梓は好き好んで要に情報を教えなかったのではない。教えることが出来なかったのだ。

書面によれば梓は幼い頃に実の両親の手から離されたのだという。それはそれは幼かった頃で、なぜそんな目に遭わなければならなかったのかという理由すらも知らなくて。

だから、捜して欲しいのだと、書面にはあった。いや、あったのはそれだけではない。涙の跡も、そこにはあった。文字のところどころが少し滲んだようになっていた。

何ひとつ手掛かりのない依頼。報酬も大したものではない。だが、要は受けた。この依頼を終えるまでは他の依頼は受けないという覚悟さえ抱いていた。

何故か。

梓の容姿も多少は関係しているだろう。涙の跡にも影響された。しかし、最も大きな理由は。

「……っ」

――事務所の中で、受話器を耳に当てながら立っている要のその目を、突如として何かが覆った。

まるで何物も通さない霧が辺りを包んだかのように梓の声も、雨の音も、雑然とした事務所も全てがが遠ざかって。

その代わりに目の前に現れたのは幻影。白黒で、無声で、画質の悪い、見るに堪えない映画だ。

少年が、本棚の前に立っている。要はその光景を、まるで映画の観客のように見ている。


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