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探偵と猫と少女と疑惑 7-2

闇の向こう。ぼんやりと、見慣れた建物が要の目に映った。事務所だ。

やっと着いた、と要は小さく息をついた。

朝、出発してから今、帰ってくるまでに半日以上の時間が経っている。ソファが、布団が、何もかもが恋しかった。

だから要は、一刻も早く眠ろうと、事務所へと続く階段を上って――。

四段目に足をかけた、その瞬間だった。

すうっ、と。その足元を、何かが通り抜けた。小さくて、しなやかな何かが。

「うわっ⁉」

思わず、声が出ていた。

その小さいものを踏むまいと反射的に、要は足を引いていた。


そう。階段の四段目に、片足をかけていた状態で、だ。

置き所を失った片足。その片足に懸けられていた体重も、当然身の置き所を失う。

ぐらり、と体のバランスが崩れた。まずいと、思った時には遅い。

体が仰向けに倒れて、視界がゆっくりと流れて。

そして背中に、がん、と衝撃が走った。

「……」

痛くはなかった。落ちたとはいえ所詮四段目から。大した高さではないから、それほどの苦痛がある訳がない。

だが、それでも要は、すぐには起き上がれなかった。

――最近やけに転ぶな、俺。

理由は様々で、別に一貫した意味などないのだろう。幸運不運といった程度で片づけられる問題なのだろう。

けれど要には、このところの転倒の連続が何やら前触れか何かのように思えてならなかった。

仰向けのまま、しばらくそうしていると視界の上の方から、ユキの顔がにゅっと突き出された。

「御無事ですか、要様」

「……無事に見えんのか?」

 答えながら起き上がり、要はぽんぽんと服に付いた埃を払う。

と、その眼前に、ユキが両手を突き出した。

「これのせいですね」

そこには、猫が抱えられていた。黒色と、茶色と、白色の三毛猫だ。おとなしく掴まれている猫は、丸い瞳で要をじいっと見つめて、にゃあ、とひと声鳴いた


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