表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/97

探偵と猫と少女と疑惑 6-5

自分で脳裏に浮かべた『警察』という言葉に、何か引っかかるものを感じたのだ。

一体何が引っ掛かっているというのか。一体、何が。

「……‼」

考え始めたその刹那。答えはすぐに見つかった。

昼だ。今日の昼、つい数時間前。葵の話だ。

要の脳裏に、葵が去り際に言い残していった言葉が蘇った。

『今日も実はその通報があったらしくて。何でもその男は野良の動物を』

野良の動物を、どうしていたというのか。その、通報された男は何をしたというのか。

動物に――屍。何をして――血。通報を――猫――ギンちゃん。

「っ!」

浮かんだ瞬間には既に、足が動いていた。女性の事も、ちらりと頭に浮かびはしたが、戻ることはしない。犯人が去ったのなら危ないことはないし、少し行けば繁華街だ。交番もある。

そんなことよりも、重要なのは。

「要様」

背後からユキの声がした、と思う間もなく、その姿が後方から走り出て来て横に並んだ。

「どうかなされましたか?」

見ている暇がないから表情は分らないが、恐らく心底不思議そうな顔をしているのだろう。要は歯を食いしばって走りながら、答える。

「次に狙われる猫は、俺らが探してるヤツだ」

「……何故そうだと?」

「勘だ」

「……」

ユキからの問い掛けは、そこで終わった。尋く価値なしと見たか、正しい判断だ、と要は苦笑いを浮かべた。

二人は来た道を、全力で戻る。全力で戻りながら、路地を覗き込む。怪しい影はいないか。動かない影はないか。赤い色は、無いか。不思議と歩道に人影は見えない。音のない街を、二人は走る。電灯の照らすその下を潜り抜ける。

――その足が止まったのは、走り出してから十分弱が経過してからだった。

「……」

覗き込んだ幾つ目かのその路地裏に影が動くのを見た気がして、要は立ち止った。

荒い呼吸を止められるほどの余裕はない。脇腹もじくじくと痛む。どれだけ走っただろうか。少なくとも十分は全力で、休むことなく走った筈だ。しんと静まり返った中、聞こえるのは要自身の荒い息遣いのみだ。

気づけば、ユキの姿はなかった。どこかで別れたのだろうか。そういえば、二手に分れたほうが探すのにいいと云った覚えがあった。

呼び戻すべき、だろか。

「……」

考え込んだその次の瞬間には、答えは出ていた。否だ。断じて、否だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ