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探偵と猫と少女と疑惑 5-5

こうなっては最早誤魔化しようもない。観念した要は、ふてくされたような、どこかバツの悪そうな顔つきで呟いた。

「……ンだよ、何か文句あるのか。てめえには関係ねえだろ」

それを聞いて、男は暫く黙った後、

「……ああ、その通りだな」

頷き、踵を返した。パトカーの方へと歩きつつ、振り返ることなくそのまま背後の葵に言う。

「高坂、そろそろ行くぞ」

「は、はい‼」

電流に撃たれたかのように一瞬びくっと体を硬直させてから、葵は男を追いかけて走り出した。

路地から出て、男の姿が見えなくなった。その直後にドアの開閉する音。パトカーに男が乗り込んだ音だ。

葵もそれに続いて路地から出ようとして――その直前で立ち止まった。踵を返し、要の方へ頭だけで振り向き、告げる。

「気を付けてね、最近不審者の目撃情報や事件が頻発しているから」

「へえ、不審者がねえ」

気の抜けた返事を返す要を気に留めた風もなく、葵は言葉を続ける。

「ええ。今日も実はその通報があったらしくて。何でもその男「は野良の動物を」

が、会話はそこで終了した。

「高坂」

男の声が、葵を呼んだからだ。張った気配のない、けれども不思議とよく通る声だった。呼びかけが何を意味するかは明白である。

「は、はい。すぐ行きます‼」

慌てて返事を返した葵はそのまま急いで路地を走り去ろうとして、しかし、どうしても気にかかったのか。要達の位置から姿が見えなくなるギリギリのところで立ち止まり、

「とにかく、連続殺人事件やらも発生してますから……あまり無理しないようにして下さいね」

背中越しに要にそう告げ、ではこれで云い残して、路地を去って行った。

ややあって、またドアの開閉する音。続いてタイヤの空回りする音が響いたかと思えば、その直後に車の走りだす音がした。

排気音が遠ざかって行き、数秒の後には完全に聞こえなくなった。

二人が居なくなっても、何も聞こえなくなっても、要達はその場に立ち尽くしていた。


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