探偵と猫と少女と疑惑 5-2
この場所で捜索を始めて、かれこれ一時間程か。
辺りにはゴミ袋が散乱していて、そこはかとなく臭う。こう云った仕事に慣れている要ですら尻込みするくらいだ。
にも関わらず、ユキは少しも気後れする様子も見せずに、ゴミ袋の山に体を埋めていく。
「……」
手にした群手の甲で汗をぬぐいながら、要は横目でユキの様子を見る。
臭いに汚れ。普通であれば。ユキと同じくらいの少女たちであれば、嫌がるだろう仕事だ。
しかし、ユキは全く動じていない。普段通りの能面のような顔で、淡々と捜している。
本来であれば、感心すべき事柄だ。
ただ。
同時に、その熱心さがなにやら根本的な違いも示している気もして。
「……ちっ」
舌打ちをして、要は、頭に浮かんだそんな考えを追い払う。
――んな事はどうだって良い、あいつはあいつだ。
それに。第一、今はあれこれ考え事をしている時ではない。
「さっさと見つけねえとな、ギンちゃん」
呟いて、再び要は、両手をゴミ袋の山の中に突っ込んだ。
一体何が入っているのやら。柔らかかったり堅かったり、様々な感触があるそれらをミリ矢理にどけて、覗き込む。
が、どれだけその行為を繰り返しても、猫はおろか鼠一匹すら出て来ない。出て来たのは黒光りする体を持つ虫ぐらいのものだ。
「そっちはどうだ?」
背伸びをしながらの要の問いに、
「……」
ユキは無言で首を振った。どうやら同じ状況のようだ。
影も形も見当たらない。
だが、『はいそうですか』と引き下がる訳にはいかない。ここで引き下がったら、また最初からやり直しなのだ。




