探偵と猫と少女と疑惑 4-6
「……」
要らぬ不安であったようだ。
視線の先。ユキはせっせと、オムライスを食していた。相変わらずの無表情で、美味しいのかそうでないのかも分からないが、スプーンは絶え間なく動いている。
少なくとも不興を買ってはいないようだ。
なぜかホッとしながら、要は意識をオムライスへと向けた。
十分もかからない内に、皿は空になった。
残るはコーヒーのみ。
白磁の取っ手を持ち、口元に近づけ、傾け、中の液体を味わう。
要は目を見張った。驚くほどに、美味しかった。豆の違いもあるだろうが、手法のちがいもあるだろうが、事務所で淹れたそれとはそもそも同じ飲み物と思えないほどに差があった。
一口、二口、三口。
啜りながら、ふと再び、目の前の少女に目を向けた。
「……」
ユキも同じように、コーヒを飲んでいた。が、その視線はあらぬ方を見ている。
一体どこを見て居るのか、視線を追う。日の差し込んでいる窓の方、否、その向こうだ。
だが、その窓の向こうにあるのは、道路と店、そしてその向こうに工場の煙突が見えるだけだ。
決して面白い景色ではない。しかし、ユキはそちらから目を離そうとしない。
一体何をそんなに見て居るのか。要にはまったく分からなかった。




