表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/97

探偵と猫と少女と疑惑 4-4

もっともな言葉だ。味も解らず、空腹も感じず、栄養を補給する必要もないのならば、食事をわざわざする意味はないだろう。論理的だ。

対して。

「……」

分の悪さをひしひしと感じる要は、顔をそっぽに向けながら答えた。

「……別に、選ぶ条件は味や栄養だけじゃないだろ。色だったり、名前だったり――ともかく、どれでも気になったのを選びゃ良い」

――口から出たのは、一言一句違わず要の思ったことだ。

難しいことは解らない。

どんな原理で『育つ鋼』が様々な効果を人体にもたらしているのかも。その効果が果たして良いことなのかも、解らない。

けれども、要はこう思うのだ。

食事は大事である、と。稚拙な論理であるという自覚はあった。あったが、言い出したからには、引く気はなかった。

尚も訝しげな視線を向けてくるユキに、要はふんと鼻息も荒く、胸の前で腕を組んで決意を態度に示す。

結果。

それが何となく伝わったのだろう。ユキは要とメニューとを何回か交互に見た後、店員を呼んだ。

そして、メニューを指差すと、

「では、ここからここまでを」

「おい待て馬鹿野郎」

慌てて要はユキからメニューを奪い取ると、適当に注文をした。

「コーヒーふたつに、オムライスひとつ」

店員はかしこまりましたと頷くと、踵を返して店の奥へと去っていく。

その背を見送ってから、要は低い声でユキに問う。

「・・・・・・何考えてやがんだ」

「要様がご自身が、『気になったものをどれでも選べばいい』と」

「限度ってものがあるだろうが‼」

真顔でペースを乱してくるユキに、要は頭を抱える。

それから間もなく、料理が運ばれてきた。

花柄の白磁のカップに入った黒いコーヒーが二つに、オムライスがひとつ。

昔ながらの、卵のしっかりしたオムライスだった。上には赤いケチャップがこれでもかとかけられている。

「ほらよ、」

要は目の前に置かれた美味しそうなそれを、そのままユキの方に滑らせた。

が、しかし。

「……」

ユキは手を付けようとしない。自分の目の前のそれをじっと見たままだ。

「どうした、食わねえのか?」

要の問いに、ユキは、顔を上げて問いを返してきた。

「……要樣は、どうなさるのですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ