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探偵と猫と少女と疑惑 4-3

考えた結果、出て来た予想は。

「……腹、減ってたのか?」

メニューを丹念に読んでいる理由としては、それくらいしか思い浮かばなかった。が、案外正解のような気がした。

だから。

それならそうと早く言え、と要は語を継ごうとして――しかしユキに遮られた。

「いえ、そのようなことはありません。」

ぱたんと、ユキは勢いよくメニューを閉じると、やはり平然と言い放った。

「『育つ鋼』に寄生された者には味覚も空腹感もありません。そもそも必要な栄養素は全て『育つ鋼』から供給されるので、食事自体必要ありません」

「……」

要は、言葉を呑んだ。

何も言えなかった。

言われてみれば確かに、一緒に住み始めて数日になるにも関わらず、ユキの食事している所を要は見た覚えがない。いつもいつも「後で食べます」だとか何とかで、有耶無耶になっていた。気付くべきだった。どこかで気づけなかったのか。

ユキが気分を害した気配は無いが、それでも、要は自分の迂闊さを呪った。

が、それにしてもだ。

その『育つ鋼』とやらは、一体どこまで恐ろしい力を持っているのだろうか。

移植されれば、食事の必要は無くなる。移植されれば、化け物染みた筋力と耐久力を手に入れられる。

それは果たして、良いことなのだろうか。

――ちっ。

どれだけ考えたって、答えの出る気配の無い問題だ。要は深く考えるのを止めた。

気を取り直して再び視線を向けると、ユキは、先ほど閉じていたメニューをまた開いていた。

ついさっき、自分で『食べる必要はない』といったばかりなのに。

その姿を見たら、自然と言葉が口から出ていた。

「……で、お前は何にすんだ」

馬鹿な発言だという自覚はあった。

それは向こうも同じの様で、メニューから顔を上げると、ユキは首をかしげながら要に問い掛けた。

「要様、私の言葉を」

「聞いてたよ、その上で訊いてんだ」

質問を途中で遮るようにして、要は答える。

それならばなおさら訳が分からないと、ユキは再び問う。

「味も解らないのに選んでも無駄では?」


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