探偵と猫と少女と疑惑 4-1
有紗から話を聞いた、その翌日の昼過ぎ。
空には雲一つなく、陽が燦々と照っている。
その光の下。要とユキは立っていた。
二人の眼前にあるのは、薄汚れた外見の喫茶店である。裏通りにあるにも拘らず、ある程度の客が入っているようだ。
「ここだな」
ネクタイを少し緩めながら、要は呟いた。
懐から手帳を取り出し、ページを開いて目を落とす。書かれた住所は、確かにこの喫茶店を示していた。
それを懐に仕舞いながら、有紗の言葉を思い返す。数日前友人とここを訪れた際に、見たような気がすると、有紗は言っていた。例えその言葉が正しかったとしても、ここで見つかるとは限らない。無駄足という可能性だってある。というか、その可能性の方が高いだろう。
けれど、これはやっとの思いで見つけた唯一の手掛かりでもあるのだ。賭けてみたって、罰は当たらないだろう。
「……よし。行くぞ、ユキ」
身嗜みを多少整えてから、要は、入り口から出て来た長い髪を背中で一つにまとめた男とすれ違うようにして、喫茶店へと入った。
中は、外見とは違って清潔感にあふれていた。
カウンター、天井、その他もろもろ。隅々にまで掃除が行き届いている。出されたものが一度床に落ちたとしてもそのまま食べても大丈夫ではないかと思えるほどだった。
話す声と、食器の立てる音が幾重にも重なりあっている。
二十組ほどある机と椅子のほぼ半分は客で埋まっていて、そこに出されている料理はどれもこれも美味しそうに見えて。
そんな場所に来たから、だろうか。
ふと、要は自分がまだ昼食を食べていないことに気が付いた。
「……」
腹に触れてみる。心なしか、手ごたえが無いように思えた。おそらく空腹だと思っているからそう感じるのだろうが。




