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探偵と猫と少女と疑惑 3-3
そう。
つまり要は、この行動を『厄介払い』程度にしか感じていなかった。
さっさと教えて、帰らせよう。そのくらいにしか考えていなかった。
だから、まったく思ってもいなかったのだ。
有紗の口から、
「その猫なら、前見たけど?」
なんて言葉が出るとは。
「……は?」
間抜けな声が、漏れた。
信じられなかった。というか、信じられる筈もないだろう。この広い市内に猫など何匹もいるというのに、捜しているその中のたった一匹を、よりにもよって知り合いが目撃していたなんて。
到底、信じられる話ではない。
どうせ見間違いだろう、と要は思った。
思ったが、『それでも』、『もしかしたら』、『万が一』。そんな言葉が次々と浮かぶのを抑えきれなくて。
「……どこで見た?」
その万が一に賭けてみるか、と要は思った。




