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探偵と猫と少女と疑惑 3-2

「あんた達何やってんのよ、こんな所で」

要のその背中に、声がかけられた。

 聞きなれた声だった。

要は振り向く。ユキもそちらへ顔を向ける。

「どうしたの? そんなしょぼくれた顔して」

有紗が、そこに立っていた。

学校の帰りだろう。制服に、校章の付いた鞄。顔には黒細フレームの眼鏡をかけて、きょとんとした表情を浮かべている。

「……よお」

湿っぽい吐息と共に、要は言葉を吐き出す。普段であればもう少し気の利いた言葉で喧嘩を売りつけるところだが、今日はもう、そういう力は残っていないの。

異変を何となく感じ取ったのだろう。有紗は怪訝そうな顔で、

「どうかしたの?」

「……何がだよ」

「何がって、いや、何かずいぶん元気無いみたいだけど」

勘の良いことで、と要は内心で顔をしかめる。

有紗は既に、探るような目つきになっている。こうなると面倒だ。事情を聞かせない限り、引くことはないだろう。

けれど、だからといって教える訳にも行かない。部外者に依頼人の情報などを与えるのは、倫理上宜しくない行為である。

だから。

「いや、別に……なあユキ」

どうか察してくれますように。誤魔化してくれますように。そう願いながら、要はユキに話を振った。

 が、駄目だった。残念なことにその願いは通じなかった。

「依頼を受けて猫を捜しているのですが、手掛かりが全く見つからないのです」

「……てめえ」

頬を引き攣らせながらユキを睨む。対してユキは、「私が何かしましたか?」とでも言いたげに首をかしげた。

どうやら意思疎通は失敗のようだ。

ため息をつきながら横目で見ると、有紗は既に興味津々といった様子だった。

――仕方ねえ。

降参、である。

そして要は、有紗に、倫理上問題にならない程度に、依頼内容を明かした。

とはいっても、伝えたのは『猫捜し』、『捜している猫』、『その猫がいなくなった辺りの情報』といった程度の、知られても当たり障りのない情報だ。


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