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探偵と屋根と少女と出逢い6-3

要は、自分が出来るだけ憎たらしく見えるようにと、少女の目の前に右手を突きだし

「いいか、取り敢えず三つだ。大きなのを三つ教えてやる」

まず第一に、人差し指を立て、天井を見ながら

「人んちの天井をぶっ壊すような奴に用は無いから」

第二に、と次は中指を立て、少女の細腕に視線をやって、

「お前みたいなガキんちょに、危険の多い探偵仕事は務まらない」

そして第三に、と最後は薬指。

それに加え、これまでより幾分真剣さを増した目つきと声音で、

「……お前、撃たれた傷はどうした?」

 覆面に撃たれた時の血が、少女の服には未だに付いていた。

が、その色は赤というより黒に近い。

「……」

問いに対する答えは無かったが、沈黙それ自体が答えである。

これで分かったか、と要は腕を組んで少女を見る。

「サイボーグだか何だか知らねえが、正体もはっきりしない奴を傍に置いとく義理はねえ」

 三つの理由の宣言。

それを聞いている間、少女は身じろぎ一つしなかった。ただ黙って、要の言葉を聞いていた。

だから。

要は、少女が自分の言に納得しているのだと思っていた。納得し、すぐにここを去るのだろう、と。

 しかし、事はそう上手くは運ばなかった。

「お言葉を返すようですが」

並べ立てられた理由にひるんだ様子もなく、平然と少女が言った。

どうやら反論するつもりのようだ。

「……」

要はそれを防ごうと口を開きかけたものの、すぐに思いなおした。聞くだけ聞いてやろうということだ。

本題に入る前に、少女はまず、と前置きをして、

「第一の理由ですが、これには反論しようがありません」

――何だそりゃ。

思わず前につんのめりそうになった。どんな理屈を投げて来るやらと身構えていた要にしてみれば、肩透かしを食らった気持ちだった。以外過ぎて、思わず笑ってしまいそうにすらなった。

少女はそんな要に取りあうことなく、ですが、と語を継いで。

「第二の理由には反論できます」

「……何だと?」

一体どういうことだ。要の表情が一変する。

 第二の理由、『お前みたいなガキんちょに、危険の多い探偵仕事は務まらない』

一体どう反論しようというのか。

知らず知らずのうちに鋭くなっている要のその視線を平然と受けながら、少女は言った。

「私がその『危険の多い探偵仕事』とやらに向いているのは、先だっての件で既に証明済みかと」

「……」

 要は反論出来なかった。確かに、先だって覆面をこの少女が倒したのは事実だ。その本人からどちらが荒事に向いているかと問われて、それでも自分と言えるほどの厚かましさを、要は持ち合わせていない。


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