探偵と屋根と少女と出逢い5-7
一体、何が――天井を見上げながら、要が考え込んだ、その時。
「無事ですか、要様?」
声が聞こえた。聞きなれた、けれどもう聞けない筈の声が。
ゆっくりと、要は天井から視線を下げる。
聞き間違えじゃないか、空耳じゃないか。そう考えながら。
しかし、下げた視線の先、確かにそれは居た。
二本足で立っていた。黒い瞳が、こちらを見つめていた。
相変わらず能面のような無表情の少女が、すぐ目の前に立っていた。
「……お前」
混乱が胸中に渦を巻く。とっさのことで、言葉が出て来ない。
自分が見た光景が現実ではないとは、要には思えなかった。飛び散る血も、倒れたときのその音もしっかりと覚えている。
見れば、纏っている襤褸切れの胸の辺りに赤い染みがあった。今滲んだばかりであるかのように、光に照っている。
やはり、撃たれていたのだ。銃撃も、出血も、本当にあった事なのだ。
でも、だとしたら、どうして立っていられるのか。
分からなかった。要には何ひとつとして、分からなかった。
今日一日を共に過ごしていた存在が、急に恐ろしくなった。
要は震える声で問う。
「……一体、お前は何者なんだ」
その問いに、少女は小首を傾げ、平然と答えた。
「ですから、先ほども言ったように」
私はサイボーグです、と。




