探偵と屋根と少女と出逢い5-6
無意識の内に、要はその傍らに膝をついていた。
流せる程の間柄ではないから、涙は出て来ない。けれど、悼む気持ちは確かにあった。自分の目の前で、この子は死んだのだ。自分が止めれたかもしれないのに、この子は死んでしまったのだ。
頬に飛び散った血が目についた。要は黙って、それをそっと拭ってやる。
と、その時。
「何だよおい‼」
声がした、五人目の声が。
目を向けると、レジの後ろ、厨房へと続く出入り口の所に覆面男が立っていた。それも、こちらに拳銃を向けて。
――あいつが、三人目か。
他人事のように、要は思った。
もう抵抗する気もなかった。男は銃を持っているが自分は丸腰。こちらは近寄らなきゃ倒せないが、男までの距離は十メートルほどあるから、走り寄る間に確実に撃たれる。
何もしなくたって、倒された二人の仲間を見つけ次第、男は引き金を引くだろう。
つまり、八方ふさがりな訳だ。
男が何事かを喚きながら近づいてきているが、要には、もうどうでも良かった。
恐らくこのまま撃たれるだろうが、仕方ない。
そうして、要はいずれ来る一撃を思いながら、男を見つめ――。
しかし、男の靴が血だまりを踏んだ、その瞬間だった。
その体が突然宙に浮かんだ。いや、天井へ向かって飛び上がったというべきか。目にも留まらぬ速さだった。
要に見えたのは、結末だけ。即ち、天井から体をぶらんとぶら下げている男の姿だ。
「……は?」
思わず声が漏れた。
一体何が起こったのか、まったく分からなかった。
ひと時も目を離していないのだから、見落としは無い。分かってはいるが、それでも要は自分の目を疑ってしまう。
近づき見上げれば、確かに男は天井に顔をめり込ませて、力なくぶら下がっている。
だが、どうしてだ。
なぜ、どうしてこうなったのか。本来ならばこの胸に穴が空いているはずだ。




