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探偵と屋根と少女と出逢い5-5

踏ん張り、堪えて、そこで抵抗は終わり。

首のみで振り向き、自分の背中を確認した少女は、要を一瞥して、そのままぱたりと倒れた。

はぁはぁ、と男が荒い息を漏らす。

その横で、要は動けずにいた。声が出ない、息も出来ない。現状に理解が追い付いていなかった。

そもそも、深い付き合いではない。覚えている限りでは、少女と会ってから一日も経っていない。

出会いも最悪だった。いきなり天井をぶち破られたのだから。

それから事務所を出て、警察署に行って、ここに来て。良い思い出など、何ひとつもない。

だが、それでも、会って話をした奴だ。言葉を交わして、共に歩いた奴だ。少なくとも、今日、誰よりも、近くにいた奴だ。

それが、たった今、殺された。

誰に――それは、隣にいる奴だ。

「う、」

――うがぁああああああああ‼

野獣のような雄叫びが、要の口から洩れた。じわりと血のにじんでいる背中も、厨房にいるかもしれないもう一人の男も、頭の中から消えていた。

あるのは、少女を撃った男に対する感情のみ。

つまり、殺意だ。

男が雄叫びに反応するよりも早く、その後頭部には要の手が伸びていた。

髪を掴むと、それがぶちぶちと音をたてようとも、千切れようとも気に留めることなく。

要は力づくで、男の頭を、目の前のテーブルへと叩きつけた。

一度目、叫び声が聞こえた。二度目、それが呻き声になった。三度目には声が小さくなり、四度目には哀願する調子になり。

五度目からは、もう何も聞こえなかった。

六度目の寸前で、我に返った要は手を放した。男は糸を切られた人形のように、床に崩れ落ちた。

「……ちっ」

舌打ちをひとつ。我を忘れた自分と、そしてギリギリで生き残っていた男に対する物だ。

そう。顔面は血に塗れているが、口中も折れた歯が刺さったことでグチャグチャではあるが、それでも男は生きていた。胸が上下しているのがその証拠だ。

力なくごろんと床に転がった男から、少女へと要は視線を動かす。

背に空いた穴から流れ出た血が、床に赤い水たまりを作っている。


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