探偵と屋根と少女と出逢い5-2
目の前の少女の言葉が何を表しているのか、要にはよく分からない。
自分が問うたのは名前で、その質問に少女は、第二号と答えて。
それじゃまるで物だ、と思ったら、その思考に、そうですと答えが返ってきて――。
――待て。ちょっと待て。
それじゃあ何か? お前は。
「……まさか、自分をロボットだとでも言うつもりか?」
繰り返される、正気とは到底思えない言動に、要は頬を引き攣らせながら言葉を口にする。
冗談だろう、と。本気じゃないだろう、と。
しかし。
要の言葉に、少女は大真面目な顔で頷いた上、訂正の言葉まで口にした。
「正確に言えば、サイボーグです。この肉体の大本は、人間のそれですから」
「は、ははは……」
ここに至って、要は確信した。
目の前で呑気に、氷で遊んでいる少女。
――こいつは、イカれてる。
サイボーグだとか、大本は人間だとか、あり得ない。あり得る訳がない。
確かに、それが本当ならば、全てに説明がつく。天井をぶち破っても傷一つないことも、身元が無いことも、説明がつく。
だがそれは、少女の言っていることが事実だとすれば、という前提に則っての話だ。その前提条件自体があり得ない。
そして、要は確信した。
目の前のこの少女は狂っているんだと、。
そう確信したことで心に余裕が生まれた。
確信して、あれこれ考える必要が無くなったことで、冗談を聞いてやろうじゃないかという気持ちになった。
「で、そのサイボーグ様がいったい何の用で俺のところに?」
要はにやにやと笑いながら尋ねて――しかし、その答えを聞くことは出来なかった。
それは、と少女が口を開きかけたその瞬間。
「動くな」
横合いから何かが突き付けられたからだ。




