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探偵と屋根と少女と出逢い 5-1

向いてから、後悔を覚えた。

見破られた気まずさと正体の分からないモノへのイライラとが混ざったことで、ついついぶっきらぼうになってしまったが、ちょっと乱暴すぎたか。

何となく罪悪感に駆られて、要は少女を横目で見た。

 見て、驚いた。

少女と目が合ったからだ。どうやらそっぽを向かれてからも、要を見つめ続けていたのだ。

図らずも見つめ合う合う形になった訳だ。

無視してやろうか、と要は一瞬考えたが、結局視線の強さに耐えきれなかった。

ゴホンと咳払いをひとつすると、要は少女を正面に捉えるように姿勢を正し、真っ直ぐに見つめながら、訊いた。

「……お前、一体なんなんだ?」

問われた少女は真顔で聞き返してきた。

「何、とは?」

「だからっ……」

思わず怒鳴りそうになった要は、ここが他の客もいるファミレスであることを寸でのところで思い出して、慌てて口を閉じた。

落ち着けと自分に言い聞かせる。この少女は会った時からこんな感じじゃないか、と。

一個ずつだ、一個ずつ訊こう

まずは。

「本当に無いのか?」

「なにがでしょう」

「……名前だよ、名前」

怪訝な顔をしていた少女は、それで合点がいったというように二三度頷くと、答えた

「ありません」

ありません、って。

「……じゃあ、今まで何て呼ばれてたんだ?」

「第二号です」

「は?」

冗談を言っているのか、と要は少女の様子を窺う。

けれどもその顔はやはり無表情。少なくとも、こちらをからかっているような気配はなかった。

しかし、だからといって「そうなんですか」と受け入れる事は到底出来ない。

それに。

――『第二号』って……。

もし、もし本当だとすれば、まるで物扱いだ。

そう要は思った。

すると。

「その通りですが、何か?」

少女から答えが返ってきた。

決して口にはしていないのに。ただ、思っただけなのに。

まるで、心を読んだかのように。

「……は?」

変な声が、口から洩れた。


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