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探偵と屋根と少女と出逢い4-9

それでも、警察署から出るまでは、やらなければいけないことが積み重なっていたこともあって、そこまで強い空腹感は感じていなかった。

感じ始めたのは、全てを終えて警察署を出てからである。扉を潜って外に出て、数歩歩いたら腹がぐうとなったのだ。

あと一時間もすれば、事務所の近所のラーメン屋で、全てのメニューを一割引の値段で食べる事は分かっていた。天井を直すのにかなりのお金が必要となる現在において、一円の差が大きな意味を持つことも分かっていた。

分かってはいたが、それでも我慢が出来なかった。

という訳で、警察署を出た要は、少女を連れて一直線に、ファミレスに入って早めの夕食をとっていたのだった。

「……」

それにしても、と。

ある程度満たされたことで回るようになった頭で、要は思考する。

――一体こいつは、何者なんだよ。

具であるピーマンやら玉ねぎやらをフォークで刺して口に運びながら、少女の表情を盗み見る。

見られている当の本人は、つつくのに飽きたのか、今は使わなかったガムシロップやミルクを氷にかけて、それが流れるのを見ていた。

黒い目でじっと観察しているその顔を眺めながら、要は考える。

天井をぶち破ったにもかかわらず傷一つ負っていないし、会った覚えは無いのにこちらの名前を知っているし、おまけに身分も不明だ。警察に行けば分るかもと思ったが、結局駄目だった。

本当に、この少女は何者なのだろうか。

と、その時。

「何でしょうか?」

自分に向けられた視線に気づいたのだろう。少女は氷をつつくのを止め、小首を傾げながら要を見た。その動作自体は可愛らしいものだが、無表情でやられると少し怖さを感じる。

「……ふん、別に」

要は言い捨ててそっぽを向いた。


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